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◎俳談

◎俳談
 【即かず離れず】
◆捻子まけば動くヒコーキ沖縄忌 毎日俳談3席
  正規軍より一般人の方が犠牲が多かったという沖縄忌は6月23日。沖縄軍司令官が摩文仁岬で自決した日だ。戦没者20万人。激烈な地上戦であり、俳句では終戦日、開戦日などと並ぶ戦争関連の季語となっている。その難しい季語とどう向き合うかだが、沖縄戦が哀れだとか、凄まじいとか直接的に沖縄忌を形容しない。ひたすら間接的に哀しさを表現する。そしてそこはかとなく連想させる。掲句は昔あったブリキのヒコーキで戦争を連想させる。次の句は棒きれが流れ着くという表現で、海の向こうの沖縄を連想させた。
◆沖縄忌棒きれ一つ流れ着く 朝日俳談入選
 人の忌の句も全く同様な手法をとる。
 ◆浅酌をして大石忌過ごしけり 日経俳談入選
 浅酌という粋な言葉で粋な大石良雄(内蔵助)を詠んだ。

◎安倍は早期改造で局面転換を図れ

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◎安倍は早期改造で局面転換を図れ
 弱り目に祟り目の稲田発言
 こればかりはいかんともしがたい。安倍は早期の内閣改造に踏み切り、悪い流れにストップをかけるしかあるまい。それにつけても何度も書くが、日本の女は政治家には向かない。自民党の女性総理候補は小池百合子、野田聖子、稲田朋美と続いたが 小池はポピュリズム一辺倒で党内的に嫌われて脱落。せいぜい大衆迎合がまかり通る都知事がいいところで、とても都議選の余勢を駆って首相になるような政治情勢にはなるまい。野田はあらぬ時に総裁選に出馬しようとするなど焦りすぎて、党内情勢を見誤り失敗。今度は稲田が失言の山を築いて「死に体」なってしまった。長年政治記者をやっていると政治家を見る目だけは肥えてくるが、稲田は最初から無理だと思っていた。しかし野党も蓮舫が居丈高になって勝ちどきを上げるケースでもあるまい。民進党への“逆風”も自民党に勝るとも劣らない。蓮舫自身も自らの2重国籍問題を巻き起こし、都議選も不調では、選挙後自分の首が危うくなりかねない情勢だ。だから、しめたとばかりに稲田を追及しているが、ブーメラン返しがそこに見えている。日本の女は、知的には極めて優秀で、家事や育児にも秀でているが、政治家としては英国首相メイやドイツ首相メルケル、米大統領候補クリントンなどと比べるとあまりに低レベルである。長い封建社会で植え付けられた男を立てる遺伝子が、まだ取り切れずに作用しているのだろう。
 どうも首相・安倍晋三は昭恵夫人を選ぶのには成功したが、それ以外は女性を見る目がないようだ。前の内閣では女性閣僚が二人も辞めている。そもそも稲田は、安倍の秘蔵っ子だ。安倍が副幹事長の頃稲田のスピーチを聞いて、スカウトして12年前に初当選させた。安倍とともに靖国参拝をしたこともある。14年に政調会長に抜擢、今度は防衛相という重要閣僚にした。安倍はかつて「将来の総理候補として頑張ってもらいたい」と激励したことすらある。しかしとりわけ防衛相になってからがハチャメチャだ。資質を問われる発言が相次いでいる。陸上自衛隊が参加する南スーダンの国連平和維持活動(PKO)では、派遣部隊の日報をめぐる大臣報告が約1カ月もかかり、省内を掌握していない状況が浮き彫りになった。この答弁もちぐはぐで、不必要に野党の攻撃を集中させた。スーダンにおける陸自の日報問題でまるで幼稚園児のような答弁をしている。「憲法9条上の問題になる言葉を使うべきではないから、戦闘という言葉を使わず武力衝突という言葉を使っている」と答弁してしまった。部下が大臣に内々にご進講したとおりの内容を答弁してしまったのだ。
 「森友問題」の訴訟に原告側の代理人として出廷していた問題もコロッと忘れて、「虚偽だ」と答弁。その後事実であることが判明した。一連の稲田発言に対して感ずるのは、答弁が下手なのに加えて、思い違えが激しいことだ。年増の女性に多いど忘れ現象が頻繁なのだ。今回の場合も仮にも防衛相であるならば、発言していいことと悪いことのけじめを付けなければならないが、事もあろうに憲法違反そのものの発言をしてしまった。都議選候補の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたいと思っている」だ。これは公務員の地位を規定した「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」という憲法15条に紛れもなく違反している。そもそも戦後の自衛隊員教育の根幹は、戦前の軍部独走の愚を繰り返さないため「政治的行為を慎め」と徹底して教えてきたのであり、稲田発言は大臣そのものが率先してその禁を破ったことになる。組織としての自衛隊を率いるトップの発言としてあるまじき事は言を待たない。
 まさに安倍にとっては弱り目に祟り目の事態だが、この悪い流れを断ち切るためには、内閣改造による人事刷新しかあるまい。今度ばかりは熟考して、憲法改正という重大テーマに対処し、衆院選挙にも対応できる人事をする必要がある。派閥順送りは無視して、ベテランを起用して重厚な政権に脱皮しなければなるまい。稲田の後任には経験者で手堅い小野寺五典が適役ではないか。官房長官・菅義偉はよく働いたから幹事長に抜擢すべきではないか。今のところよく育っていて国民的人気も出てきた小泉進次郎を起用することもよいかも知れない。奇策となるから絶対によいとは言い切れないが、盟友の前大阪市長橋下徹などを起用する手もあるかもしれない。いずれにしても8月中と言われる改造を7月下旬にも断行する必要があるのではないか。局面転換には早ければ早いほどいいのではないか。まだ安倍本体への打撃は少ない。改造して再出発すれば支持率も回復基調に入る。

◎俳談

 ◎俳談
 【固有名詞の使い方】
 ◆捕虫網立てればスーパーあずさ発つ 東京俳壇入選
  むかし子どもと上高地に行ったときの懐旧句。座席に捕虫網を立てて、蝶々を捕るぞと勇ましく出発だ。固有名詞のスーパーあずさは関東地方では知らない人はいない。日本全域でも結構通用している。だから違和感が感じられないだろうと思って使った。全然通用しない固有名詞を使う句が散見されるが、これは最初から論外だ。普遍性のある言葉が俳句の一番重要ポイントだ。

◎政権、加計問題で反転攻勢を展開

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◎政権、加計問題で反転攻勢を展開
   「抵抗勢力官僚」は獅子身中の虫だ
   論客動員で国民に説明を
 満を持していたのであろう。ようやく反転攻勢が始まった。官房長官・菅義偉が27日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関し、日本獣医師会、農林水産省、文部科学省を名指しして「抵抗勢力」と断定、岩盤規制を突破する方針を改めて鮮明にさせた。首相・安倍晋三も「加計」を突破口に獣医学部の全国展開を進める方針を明言。これまで沈黙していた国家戦略特区での獣医学部新設決定に関わった諮問会議の民間議員らも「加計問題の根底に日本獣医師会の強い抵抗があった結果一校に絞らざるを得なかった」ことを暴露、いかに岩盤を突き崩すことが困難であったかを強調した。まさに事態は政府・与党が「改革派」で、民新・共産両党と朝日、毎日、民放など反政権メディアが「守旧派」となる構図だ。かくなる上は安倍はちゅうちょすることはない。文科、農水など政権の方針に反対する幹部官僚を人事で押さえ込むべきだ。
   堰を切ったように岩盤規制突破の発言が相次いだ。「抵抗勢力」を名指しした管の発言は「そもそも52年間、獣医学部が設置されなかった。日本獣医師会、農林水産省、文部科学省も大反対してきたからではないか。まさに抵抗勢力だ。規制がこれだけ維持されてきたことが問題だ」というものだ。そのうえで菅は「安倍政権とすれば、まず1校認定したわけであり、突破口として全国に広げていくのは獣医学部だけでなくてすべての分野において行っていく方針だ」と述べ、国家戦略特区で認めた規制緩和策の全国展開を目指す考えを強調した。安倍も「今治市に限定する必要はない。全国展開を目指す。意欲あるところはどんどん獣医師学部の新設を認める」と明言した。
 また諮問会議の民間議員を務める大阪大学名誉教授八田達夫は「獣医学部の規制は既得権による岩盤規制の見本のようなものであり、どこかでやらなければいけないと思っていた。『1つやればあとはいくつもできる』というのが特区の原理で、1校目は非常に早くできることが必要だった」と強調。東洋大学教授竹中平蔵は、文部科学省前事務次官前川喜平が先の記者会見で「行政がゆがめられた」などと述べたことについて、「最初から最後まで極めて違和感がある。今回の決定プロセスには1点の曇りもない」と反論した。加えて、竹中は「『行政がゆがめられた』と言っているが、『あなたたちが52年間も獣医学部の設置申請さえも認めず行政をゆがめてきたのでしょう』と言いたい。それを国家戦略特区という枠組みで正したのだ。2016年3月までに結論を出すと約束したのに約束を果たさず、『早くしろ』と申し上げたことを『圧力だ』というのは違う」と切り返した。
 こうした発言が一致して指摘するのは獣医師会のごり押しだ。今治市だけに学部新設を限定しようと躍起になっていた姿が鮮明になっている。確かに獣医師はペットブームで笑いが止まらない状況にあるといわれる。マスコミは伝えていないが法外な治療費を請求される被害が続出しており、社会問題となっている。獣医師会が既得権にしがみつくのは、言うまでもなく“甘い汁”を囲い込み、拡散するのを防ぎたいからにほかならない。岩盤規制の突破はその意味からも必要不可欠であり、政府はこの辺のPRが不足している。
 一部マスコミも政権が改革を推進しようという時に、何でも政局に結びつけようとする姿勢が見られる。朝日は28日付朝刊の社説で安倍が「地域に関係なく2校でも3校でも意欲のあるところはどんどん認めていく」と発言したことにかみついている。「(親友が経営する加計学園を優遇したという)疑惑から目をそらしたい安直な発想といらだちが透けてみえる」と、もっともらしい論旨を展開している。しかし、自民党副総裁・高村正彦ではないがこれこそ「ゲスの勘ぐり」社説だ。岩盤規制の突破という、今の日本に喫緊に必要な問題への視点と大局観がゼロだ。朝日は52年間も岩盤を死守し、天下り先を確保してきた文科官僚を礼賛していいのか。
 管は抵抗勢力として獣医師会、文科省、農水省の名を挙げたが、こうしたマスコミが存在する以上、一部マスコミも含まれるのは当然だろう。最近では米国のトランプ政権も抵抗勢力との戦いを繰り広げている。同政権にとっても抵抗勢力の排除は政権基板確立の基礎であり、人事が遅れているのは、官僚が敵か味方かを見定めている結果であろう。大統領上級顧問スティーブン・バノンが、米主要メディアに対して「メディアは抵抗勢力だ。黙っていろ!」とかみついたのは記憶に新しい。また、小泉純一郎も自らが進める「聖域なき構造改革」に反対する諸勢力を「自民党内の族議員、公務員、郵政関連団体、野党、マスメディア」などに絞って、郵政改革を成し遂げた。
 安倍政権が改革の旗を高く掲げればかかげるほど、風圧に対処する政治手法が必要になっていることは言を待たない。安倍は通常国会中は加計問題に関してどちらかと言えばあいまいな対応をとってきたが、これはテロ準備法成立の必要という喫緊の重要課題の処理を意識したものであろう。その結果、文科省内部からの漏洩事件が頻発、民放テレビを利用して買春疑惑の前次官が我が物顔で政権の足を引っ張るという“弛緩(ちかん)”が生じていた。政権の前途には外交・安保問題、経済対策など重要課題がひしめいており、野党の要求する臨時国会などは当面開催する必要はあるまい。閉会中審査なども無視して当然だ。しかし、左傾化民放の口から生まれたような低級コメンテーターらに言いたい放題の発言を繰り返させておくことはない。管でも高村でも竹中でも論客を繰り出して、テレビで直接岩盤規制の突破を訴える必要があるのではないか。また文科、農水両省などに対して幹部人事も断行して、引き締めを図る必要もあるのは当然だ。世界中の政権は獅子身中の虫を取り除くのが常識なのだ。

◎俳談

◎俳談
 【2物衝撃】
 ◆真夜中の天井裏に青大将 毎日俳談入選
  意外な二物の取り合わせの句を二物衝撃句という。真夜中の天井裏とネズミでは日常的。しかし天井裏と青大将となるとゾクゾクとする恐怖感をもたらす。そしてよく考えてやっと旧家には青大将が住みついていることに考えが至る。
◆露人ワシコフ叫びて石榴(ざくろ)打ち落す 西東三鬼
  妻を亡くした隣人のロシア人が、長いサオを持ち出し叫び声と共に手当り次第にザクロをたたき落していたのを三鬼が描写したものだ。事情を知らない読者はロシア人と石榴の取り合わせの意外感から、様々な空想の世界へといざなわれる。

「木に竹を接ぐ」マスコミの都議選認識

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◎「木に竹を接ぐ」マスコミの都議選認識
 国政選の先行指標などにはならない
 安倍は堂々と街頭に立て
   「一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う」とは、一人がいいかげんな ことを言うと、世間の多くの人はそれを真実のこととして広めてしまうということのたとえだ。近頃の政治記事の風潮はまさにこの様相である。日経、毎日、時事の順で、今回の都議選が1989年や2009年のケースとそっくりで、都議選に敗れれば政局につながると言いはやしている。過去2回の都議選が先行指標になるというのだ。民放などはオウムのようにこの論調を繰り返しているが、本当にそうだろうか。筆者は「木に竹を接ぐ論法」だと思う。当時の状況は24年前はもちろん、8年前もつぶさに覚えているが、全く政治状況が現在と異なっている。まだ編集局内に当時を知る幹部や記者がいるだろうに、「とろい記事」を書かせて黙認しているのはどういうことか。
 最初に書いた日経は23日付で「1989年は消費税導入とリクルート事件の直後で、都議選は改選前から20議席減らし43議席に終わった。続く参院選で自民党は33議席を減らす惨敗。宇野宗佑首相が退陣に追い込まれた。2009年は自民党が都議選で10議席減らし38議席に落ち込み、都議会第1党から転落した。その後の衆院選は改選前から181議席減の119議席となり、民主党に政権交代を許した。」と書いて、安倍の置かれた状況につなげている。毎日は24日、時事は25日に似たり寄ったりの記事を書いて追いかけている。
 まず89年の例と現在の政治状況を比較すれば、似て非なるものであることが分かる。首相の置かれた状況が異なる。竹下登のあとを継いだ宇野宗佑は芸者に「3本指でどうだ」と月30万円で囲う話を持ちかけたスキャンダルが明るみに出て、与野党から総スカン。国民もあきれ果てて支持率は10%まで落ち込んだ。安倍の場合は宇野のような薄汚いスキャンダルはゼロであり、歴代首相と比べても外交・安保や経済上の実績は最高の部類である。
 加計問題なども民新、共産両党と朝日など一部マスコミが大袈裟に騒いでいるだけで、疑獄事件にはほど遠い実態である。都議選は、小池の「都民ファーストの会」などというど素人集団が、都民の民度の低さをバネにして小池の名前だけで一定の数を確保しそうである。自民党が第一党の座を確保出来るかどうかは予断を許さない。しかし小池の支持率も豊洲移転問題の失敗で馬脚が現れ、陰りが生じ始めている。都議選の勢いを駆って国政選挙に多数の候補を擁立する勢いが出るかどうかは疑わしい。都民と違って他府県は民度が高く、小池のタヌキ的な“化かしのポピュリズム”は見抜かれる。一方でこれだけマスコミから叩かれても安倍の支持率は40%台ある。毎日だけが36%だが、これはいかに毎日の調査がいい加減であるかを如実に物語るものだ。
 もう1人支持率10%台で2009年に退陣したのが麻生太郎だ。まず麻生個人の首相としての資質の問題があった。しょせん器ではなかったのである。加えてかつてない早さで悪化する経済情勢、ねじれ国会における野党の審議拒否・審議引き延ばしの結果、迅速な景気対策もとれなかった。日本郵政をめぐる人事問題での総務大臣鳩山邦夫更迭などで支持率は急降下をたどった。この結果総選挙に大敗して民主党との政権交代となり、以来3年にわたる民主党政権の暗黒時代をもたらしたのだ。
 89年も09年も都議選が国政選挙の惨敗につながったが、今度の場合都議選と直結する国政選挙はない。したがって国政で民新、共産が大幅に議席を伸ばす可能性はない。ましてや民進党が政権交代できるほど躍進する気配などゼロだ。その上両党は都議選でも不振である。都議選は「都議会第1党」の維持を目指す自民党と、一過性の「つむじ風」になりそうな都民ファーストによる「一騎打ち」の色彩を濃厚にしている。この結果民進、共産両党が弾き飛ばされる流れが各種世論調査でも生じている。まさに両党埋没の危機である。早くも蓮舫は選挙後に代表辞任せざるを得なくなるとの観測すら生まれているのだ。
 こうした中で首相・安倍晋三が都議選の選挙応援を街頭に立って行うかどうかが注目される。民放テレビでは反安倍のバリバリの慶応大学教授片山善博らが、安倍が都議選公示後街頭に立たなかったことをあげつらい、鬼の首を取ったように勝ち誇った解説をしている。落ち目の蓮舫までが26日、「総理は表に出て堂々と話をすればいいのに、しないのは都合の悪いことがあるからではないか」と、かみついた。加えて「国会では語らず、街頭で演説に立たない。しかし自分のシンパが多い講演では、べらべら話をする。説明もできず、逃げている姿勢は、絶対に許してはならない」と挑発している。こうしたムードを打ち破るには安倍が機を見て堂々と街頭に立つしかあるまい。26日も自民党都議選候補者の演説会に出席し、応援演説をしているが街頭には立っていない。街頭演説も支持率40%以上なら十分過ぎるほどであり、戦える。風林火山ではないが「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」のうち「不動如山」から一挙に「侵掠如火」に転ずるべきだろう。たとえ負けても闘うのが安倍政治の真骨頂であるはずだ。街頭演説も自民党がフル動員して、人種のレベルが高い銀座のど真ん中で盛り上げればよい。選挙戦の常識だ。

『一隅を照らす』 ―― 理性と良識を守る――

『一隅を照らす』 ―― 理性と良識を守る――
安保政策研究会理事長  浅野勝人

ここに「一隅を照らす」 理性と良識を守って――河野謙三 著
“ 浅野大兄 恵友 謙三 ”と筆の署名があります。
参議院議長・河野謙三 書き下ろしの42年前の著書です。

参議院改革を旗印に議長になった河野謙三は、与野党伯仲の困難な国会運営に臨み、「七 三 の構え」を宣言して政府・自民党をけん制しました。

河野謙三は、著書の中で、
「法案審議に野党七、与党三の比重をかけていこうという“七三の構え”の提唱に対して、与党側からそれでは不公平だという声が出ている。“七三の構え”をとる私が第1党を軽視している、との非難である。
政府・与党は寛容と忍耐の精神で議場にのぞみ、野党に法案を質す機会と時間を十分与え、“親切にお答えしましょう”という態度が望ましい。そして、審議の過程で聞くべき意見があれば、思い切って原案の修正に応じる。野党には、ただ絶対反対だけではなくて、具体的、建設的な意見・創意を出す責任がある。そうゆう腹の太さが必要だろう。この平凡なルールが守られるようになったら与野党対決法案は、もっと容易に、しかもよりよい解決の道が見いだせるものと思う。“七三の構え”とはそうゆう意味に過ぎない。
私は議長就任の際、『野党と結託した』とずいぶん非難された。そのとき私はあえて『オレは世論と結託したんだ』と反論した。
このことは今でも変わりはない」

フランスの総選挙でマクロン大統領(39)の新党「共和国前進」が議席を6割獲得して圧勝。既存の二大政党、中道右派(共和党など)と中道左派(社会党など)は惨敗しました。
日本に当てはめてみると、「新党・前進」が2/3近い議席を獲って、自民党と民進党が惨敗して図です。

細かい分析結果は、パリ特派員に任せますが、マクロンの発言は「潔い」(いさぎよい)。アメリカのトランプ大統領に対しても、イギリスのメイ首相に対しても、異なるフランスの立場を自らのことばではっきり主張して引かない。しかも物言いが悪印象を与えない。「野党との対話」を重視して、世論と結託している政治姿勢がすがすがしく映っています。
河野謙三が生きていたら、合格点、しかも高得点の採点をしたに相違ありません。

通常国会が終わって、6月17日、18日に実施された世論調査が一斉に発表されました。厳しい数字を選んでみますと(これが世論の本音とみられますが・・・)
毎日新聞:内閣支持率―36%(5月調査から10ポイント下落)、不支持率―44%(9ポイント上昇)

共同通信:内閣支持率―44・9%(10・5ポイント急落)、不支持率―43・9%(8・8ポイント上昇)

朝日新聞:内閣支持率―41%(6ポイント下落)、不支持率―37%(6ポイント上昇)
特に気になるのは、調査対象全体の半数を占める無党派層の支持率が2割を割って、不支持率が49%に達している点です。支持・不支持がダブルスコア―です。さらに、予想されたこととはいえ、「加計学園」をめぐる安倍首相の説明に「納得できない」66%、内閣不支持層に限ると93%に達していることです。


私は、内閣支持率は一定の目安ではありますが、最重視はしていません。政局を展望するうえで重要な分岐点は、支持率と不支持率が明確に逆転する政治情況を判断のポイントと考えています。その意味では、「1強」のターニングポイントが危険水域にさしかかっているように見受けます。特に、大型選挙の帰趨を左右する無党派層の過半数が不支持というデータは、明らかに危険信号です。この数字は東京都議会議員選挙に「マクロン現象」となって端的に表れると私は予測しています。

但し、国政に関しては、従来と全く見解を異にするのは、「野党不在」の稀有な時代が続いている背景の存在です。だから内閣支持率の急変が自民党の支持率にさして影響していません。

現役の官僚が「役人の命に係わる人事を人質にするシステムをつくって脅すやり方には恐怖で身が縮(ちぢ)む。だからと言ってアレ(民主党政権)に戻るのだけはごめんだ。悩ましいんです!」と本音を語っています。
官邸の主たちが、野党不在に“安住”していると、市井の地盤に溜まっているマグマが破裂しないとも限りません。

9月の閣僚改造人事が立て直しのキィです。
今なら間に合う終列車!
(2017/6月20日 元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【意味不明の季語】
 ◆鷹化して鳩となる日の朝寝かな 杉の子
  俳句で訳の分からない3大季語は「鷹化して鳩と為る」「亀鳴く」「雁(がん)風呂」だろう。いずれも春の季語だ。
◆新鳩よ鷹気を出して憎まれな 一茶
は季語を崩して使ったものだ。一茶らしく人間にも当てはまる風刺に満ちている。亀は鳴かないが、俳人には春になると亀の鳴く声が聞こえるのだ。聞こえなければ俳人とは言えない。拙者にも聞こえた。だから作った。
◆この昼は四天王寺の亀鳴けり 毎日俳談2席
  「雁風呂」の由来はややこしいが哀愁のある話だ。
 青森県では日本に秋に飛来する雁は、木片を口にくわえ、または足でつかんで運んでくると信じられていた。渡りの途中、海上で水面に木片を浮かべ、その上で休息するためであるという。日本の海岸まで来ると海上で休息する必要はなくなるため、不要となった木片はそこで一旦落とされる。そして春になると、再び落としておいた木片をくわえて海を渡って帰っていくのだと考えられていた。旅立ちの季節が終わりもう雁が来なくなっても海岸にまだ残っている木片があると、それは日本で死んだ雁のものであるとして、供養のために、旅人などに流木で焚いた風呂を振る舞ったという。
◆雁風呂や海あるる日はたかぬなり 高浜虚子

◎いったん「鳩化」しても改憲で「鷹」に

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◎いったん「鳩化」しても改憲で「鷹」に
  変幻自在の安倍政治を展望する 
 支持率は数か月で回復基調へ
 俳句の季語に「鷹化して鳩となる」がある。奇妙な季語だが、春の季語で、「殺気ある鷹でも春には温和な鳩に変わる」という中国の伝承を受け継いだものだ。一茶は「新鳩よ鷹気を出して憎まれな」とユーモアたっぷりの句を残している。変わり身が早いさまを変幻自在というが、首相・安倍晋三の記者会見はまさにその「変わり身」を前面に打ち出して「鳩」になったものだ。支持率が軒並みマイナス10ポイント前後の大幅減のなかで、長期政権維持への“危機感”を強く感じた結果の変身術であろう。安倍は、国家戦略特区での獣医学部新設をめぐって、国会答弁で強い口調で反論したみずからの姿勢を反省するとしたうえで、国民の不信を招いたことを認め、加計問題への対処を陳謝した。「『印象操作』のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省している」と述べたのだ。
 過去に1人の首相が自らの発意で、その政治姿勢を大転換した例はまれである。政権を交代して自民党そのものが変身を成し遂げた例はある。そのもっとも顕著な例は安倍の祖父岸信介による60年の安保条約改定の強行とその後の党内抗争が、政権交代に直結した例だ。自民党に対する国民の大きなイメージダウンをもたらし、岸は退陣せざるを得なかった。後を継いだ池田は野党の要求する早期解散には応ぜず、総選挙までの4ヶ月間、「国民所得倍増計画」という新経済政策と「寛容と忍耐」という新たな政治路線を打ち出したのだ。このアイデアは側近大平正芳と宮沢喜一という知恵者が一緒に作ったものだ。回顧録で宮沢は「大平さんが池田さんに、とにかくここは"忍耐"しかないですね、と言ってそんなことから"忍耐"を一つスローガンにする。もうひとつ私が、ジョン・スチュアート・ミルがよく"tolerance"ということを言っていたから"寛容"というのはどうですか、と私が言って、それでスタートした」と延べている。
  安倍の場合の方針大転換は、自らの政治判断においてなされた色彩が濃厚のようだ。それではその転換を早期に国民の間に印象づけることが可能かというと、少なくとも今月23日告示、7月2日投票の都議選に間に合わせることは難しいだろう。あまりに接近しすぎている。しかし、数か月単位での「変身の定着」は可能であろう。定着と共に支持率も回復基調となる可能性が高い。その最大の理由は内閣支持率が急落したものの自民党の支持率は変化がないからだ。NHKの調査でも自民党は37.5 %から 36.4 %に微減しただけであり、民進党も7.3 %から7.9 %への微増にとどまっている。民進党支持率にいたっては時事の調査では、なんと過去3か月で最低の4.2%にとどまっている。これが意味するものは、民新、共産挙げての“加計疑惑”追及が得点につながっていないことを意味する。過去にも安倍政権は10%前後の急落を2回経験している。2013年の特定秘密保護法と2015年の安保法制だ。しかし、政権の基盤である自民党支持率に変化がなく、これが内閣支持率の挽回につながっている。安保法制の際の日経の調査の例を挙げれば成立前の支持率46%が成立後に40%に落ちたが3か月後に48%に回復している。他社も同様の傾向を示している。安倍の支持率回復の軸は外交・安保、経済政策に置かれるだろう。安倍は記者会見で来月7~8日にドイツのハンブルグで開かれるG20サミットについて、「主要国の首脳が集まるこの機会を活用して、積極的な首脳外交を展開したい。挑発をエスカレートさせる北朝鮮問題について、日米韓のがっちりとしたスクラムを確認したい。そして、来たるべき日中韓サミットの開催に向けて、準備を本格化していく」と述べている。これが最初のとっかかりとなるだろう。北朝鮮の存在は常に支持率を上向かせる方向で働く。
 短期的には夏の内閣改造で体制を整えることになる。長期展望では来年9月の総裁選がヤマ場となるが、安倍の唱える憲法9条への自衛隊条項の加憲をめぐって党内論議も活発化するだろう。元幹事長・石破茂が安倍改憲に異を唱え始めているが、党内の大勢は安倍支持の傾向が強い。石破は党内野党化する公算が高いが、国会議員の間では人気が高まる可能性は少ないものの、地方票の集票が得意であり、油断は出来まい。改憲は急げば来年の通常国会末にも、衆参3分の2以上の賛成で発議することとなろう。その後最短60日で国民投票となる。従って国民投票は衆院議員の任期切れが来年末だから、総選挙とのダブル選挙になる公算がある。
 安倍はやがて改憲の“錦の御旗”をかかげて政局をリードすることになるが、今回の柔軟路線への転換は9条改憲が主要テーマとなる以上、保革の対決が再浮上する可能性を帯びている。従っていったん鳩に変身したものの、再び鷹の本性を現さざるを得ないのだろう。

◎俳談

◎俳談
【作句のこつ】
芭蕉は俳句上達の秘訣について「師を頼りとせず、弟子を頼るわけでもなく、自らの器量を当てにしても仕方がない。つまるところ、句を多数作る人で、昨日の自分に飽きてしまった人こそ上手になる」と述べている。要するに多くを作句し、常に前向きに思考する人が成功すると言うのだ。
 これは多作多捨の作句方法であり、芸事全てに通用する普遍の原理だ。ゴルフでも格闘技でもダンスでも場数を多く踏むほど、上達は早い。多くの句を作って、それを捨てる。これを繰り返すことによって、風景や人間の事象を俳句にする回路が脳内に成立するのだ。そうなれば写真を撮るように俳句ができるようになる。筆者は毎朝10句作っている。過去に作った句も発想のよいものは推敲してまた使う。句会の前日になってやっと一句作るようでは、いつまでたっても上達は望めない。
先生の顔見て逃げし軒燕  産経俳壇入選

◎民進党にまたもや疑惑のブーメラン

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◎民進党にまたもや疑惑のブーメラン
  蓮舫加計誘致を推進、江田も親密
 文書追及は空振りに終わるだろう
 民主党代表前原誠司が偽メール事件で代表を辞任したことは記憶に新しいが、「総理の意向」文書を追及する民進党にまたもや疑惑のブーメランが返って来そうである。代表蓮舫自身が行政刷新相だったころに加計学園の獣医学部新設を推進、最高顧問江田五月が学園理事長加計孝太郎と親密であり、民進党議員が地方創生相石破茂に「なんとしてでも誘致を推進せよ」と国会で迫っている。民進党は16日の参院予算委員会集中審議で何の進展もない文科省メモの公表をまるで鬼の首を取ったかのようにあげつらい追及する方針だが、自分の足下が崩れていることを自覚していない。
 そもそも加計学園獣医学部の今治市新設問題は、民主党政権時代に本格化したものだ。それまでは加計学園が長期にわたって申請し続けたが政治が動かなかった。ところがルーピー鳩山政権は、この陳情を取り上げ、一転して推進に流れを変えたのだ。その中心に位置したのが行政刷新相蓮舫であった。蓮舫は2010年6月8日に枝野幸男から刷新相を引き継ぐに当たって、加計学園の獣医学部設置を重要引き継ぎ事項として受け継いで、獣医学部新設へと動いた。それも22年度を目途に加計学園問題を推進することを決めたのだ。従って蓮舫が安倍を加計と友人であるという理由だけで「加計疑惑がある」と追及するなら、蓮舫は推進したのだからやはり疑惑を追及されてもおかしくない。自らの“加計疑惑”へとブーメラン返しを食らうことになる。従って安倍政権の方針を「政治をゆがめている」などと批判しても、「民主党の方針をゆがめでいない」という反論がそのままできることになる。本来なら16日の予算委は蓮舫が追及すべきであろうが、質問者は福山哲郎になっている。どうも逆襲を恐れて逃げた感じが濃厚だ。
 さらに民進党の最高顧問江田五月も加計と親密であることを自らのブログで明らかにしている。2016年10月20日付のブログは加計との親しげな写真を掲載し、「16時から30分ほど、岡山理科大学構内で加計学園の加計孝太郎理事長に議員退任のご挨拶をして懇談しました。長くご支援いただいており、新校舎の最上階からの岡山市内の眺望も、ご案内いただきました。絶景でした」と書いている。この文章から見る限り何らかの援助を受けていた可能性が強い。普通政治家が「長くご支援いただいており」と書けば、政治献金を意味する。江田が加計から見返りに今治市への獣医学部誘致で陳情を受けたかどうかは定かではないが、可能性としてはあり得ることだろう。
 加えて民進党衆院議員の高井たかしの場合はもっと“確信犯”的だ。ホームページで「地方創生特別委員会にて、国家戦略特区について、石破大臣に質問しました。愛媛県今治市に50年ぶりの新設をめざす獣医学部について。四国4県の大学には獣医学部が一つも無く、獣医師の偏在が問題になっています。地元の岡山理科大学が力を入れており、『これは何としても実現して欲しい』と強くお願いしました。石破大臣もかつて鳥取県に誘致を試みた経験があるそうで、前向きな答弁を引き出すことができました。」と書いている。地元の加計から少なくとも陳情されている証拠だ。
 こうした党内の一連の動きをまずいと判断したか幹事長野田佳彦は、記者会見でお得意の三百代言的な言い訳をしている。野田は「当時の、民主党政権下における特区というのは構造改革特区です。いわゆるボトムアップで(地方から)上がってきたものについて、検討を加えていくというもの。一方で、2013年12月から制度がスタートしている安倍政権になってからの国家戦略特区はトップダウン型。したがって、総理の意向とか、誰かへの忖度(そんたく)とか、トップダウン型とボトムアップ型とは全く違うので、同じ前提であったかのように議論をすりかえるのはまさに国民に誤解を与えるものである」だそうだ。この幼稚園児もびっくりするようなこじつけ論理は、ハチャメチャだ。たとえボトムアップであろうが、地元への忖度がなければ政治家は動かない。口から出任せの目くらましを駆け出し記者にしてはいけない。トップダウンだから安倍への忖度が働くといっても、首相の場合、官僚の忖度が犯罪行為かと言えば、そんな話など全く成り立たない。
 そもそも官僚が忖度してどこが悪いかだ。実力派の首相であるほど官僚は首相が何を考えているかをしょっちゅう考えるのだ。それが政治をスムーズに展開させる要諦であり、忖度こそが重要なのだ。トランプの初閣議を見るがよい。閣僚全員が臆面もなく忖度しているではないか。野田も首相当時に野党である自民党の解散の主張を忖度して、民主党政権が自滅した解散を断行しているではないか。獣医学部問題は国家戦略特区諮問会議を経て実現しているのであり、その議論の内容をみれば「安倍の意向」などという言葉は一言も出てこない。官房長官・菅義偉が「特区の指定、規制改革項目の追加、事業者の選定などいずれのプロセスにおいても関係法令に基づく適切な処理がなされており、圧力が働いたりしていない」と発言しているとおりだ。民進党は「加計」と名前が出ればごみ記事でもトップに据えて紙面を作り、「政局」へと結びつけようとする朝日など左傾化マスコミの“トラの威”を借りてパンチを繰り出しても駄目だ。しょせんは空振りに終わると予言しておく。

◎俳談

◎俳談
【老犬】
老犬の盲(め)しひゆくらし冬の山 産経俳壇入選
 どうも飼っているホワイトテリアが目が見えなくなったり、耳が遠くなったりしているらしい。大声で怒鳴るように呼ばないと顔を上げない。しかし、めしをやる食器の音だけは聞き逃さない。ことりと音を立てただけですぐに起きてくる。食い意地だけは張っている。掲句は季語の冬の山と目が見えなくなりつつある老犬を響かせたものだが、一般の人には何で冬の山か分からないだろう。それはこのエッセイを読んでいる内に分かるようになる。俳句の要諦だ。
 食事も亭主は粗食なのに、犬は牛刺しだ。牛刺しをやるようになってから、胆石の痛みも起きなくなったようだ。ドッグフードがいかに駄目かの証明となった。犬の牛刺しを食べたくなって、こっそり冷蔵庫を開けてつまむと、結構いける。ビールのつまみにいい。犬の食事を盗み食いするようになってはおしまいだが、今度女房の留守に盛大にやろう。犬めにはアジの頭しかやらない。
初嵐犬吠えカラス横っ飛び 東京俳壇入選

◎トランプ対マスコミの対立は長丁場に

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◎トランプ対マスコミの対立は長丁場に
  FBIとCIAを敵に回して低空飛行
 一時は特別検察官解任へと動く
 CNNから初閣議を「まるで北朝鮮の閣議だ」と酷評されては、トランプも形無しだ。どうもトランプの打つ手は田舎芝居じみており、稚拙だ。その原因を探れば、政権が素人集団だからだろう。ワシントンで昔から言われている政権維持の要諦は3つある。「連邦捜査局(FBI)を敵に回すな」「敵になりそうなものは抱え込め」「ばれるような隠ぺいはするな」である。1つでも守らないと政権は危機に瀕するといわれ、歴代政権が重視してきたポイントだが、トランプは3つとも破っている。まさにハチャメチャ大統領による五里霧中の低空飛行だ。
 政権発足以来5か月たってやっと23人の閣僚がそろって12日に開いた閣議がなぜ「北朝鮮の閣議」かといえば、見え透いたお追従強要閣議であったからだ。冒頭20分間をテレビに公開したが、まずトランプが「我々は驚異的なチームで、才気にあふれている」と自画自賛。次いで閣僚に発言を求めたが、根回し済みとみえて、ごますり発言が相次いだ。史上初のゴマすり閣議だ。メディアが「賞賛の嵐」と形容したほどだ。CNNが「賞賛度第1位」に挙げたのが副大統領ペンス。何と言ったかというと「大統領を支持するという国民への約束を守る。大統領に奉仕できるのは人生最高の特権です」と大ゴマをすった。そして次から次へと歯の浮くようなお追従を閣僚が繰り返した。まさに世界最強の民主主義国の閣僚が、皇帝トランプにひれ伏すの図であった。
 司法長官セッションズの議会証言もトランプの意向が強く働いたものであった。もともとセッションズとトランプは不仲と言われており、一時は辞任説も流れた。ところが14日の議会証言では打って変わった“忠節”ぶりを示した。どのような忠節ぶりかと言えば、トランプが窮地に落ちいったロシアゲートの全面否定である。ロシアとの共謀を強く否定し、そのような主張は「おぞましく忌まわしい嘘」だと述べたのだ。
 さらにトランプは身内を使ってすぐにばれるような芝居を続けた。親しい友人であるクリストファー・ラディに「大統領は特別検察官の解任を検討している」と発言させたのだ。ニューヨーク・タイムズは13日、トランプが実際にモラー解任に動き、夫人メラニアが止めたと報じている。先月特別検察官に任命されたモラーはワシントンで与野党を問わず信頼を集めている人物だ。ニクソン政権のウォーターゲート事件やエネルギー大手エンロンの粉飾決算事件を扱った経験者らを集め、強力なチームを編成してロシアゲートの捜査任務に着手している。ラディ発言には反発が大きく、ロシア介入疑惑を調べている下院情報特別委員会の民主党メンバーのトップ、シフ議員はツイッターで、「大統領がモラー氏を解任した場合は議会が直ちに独立検察官を設置し、そのポストにモラー氏を任命することになる」と述べたほどだ。慌てて報道官スパイサーに否定させたが、トランプはマッチポンプでモラーとFBIをけん制したつもりなのであろう。
 こうしてトランプは身内を固めようとしているが、最大の問題は敵に回してはいけないFBIを敵に回していることだ。前長官のコミーは8日の証言で「トランプからロシアゲートの捜査中止を求められた」と述べると共に、トランプとの会談のメモを明らかにした。捜査中止命令は大統領による司法妨害であり、ウオーターゲート事件の核心でもあったほどだ。
 FBIだけではない中央情報局(CIA)まで敵に回した。前長官ブレナンは23日に議会で「ロシアが昨年の大統領選挙にあからさまに介入し、非常に強引に米国の選挙に入ってきた」とロシアゲートの実態を明らかにしている。議会証言はFBIとCIAの前長官が疑惑の存在を明らかにして、“忠犬”に戻ったような司法長官セッションズだけが否定するという構図である。誰が見ても信用出来るのはFBIとCIAであって、司法長官ではあるまい。こうした捜査当局の資料を基に特別検察官が捜査するのだから、その結果は火を見るより明らかなものとなろう。
 今後の展開としては①準レームダック化して来年の中間選挙までは続く②弾劾が早期に成立する③副大統領が大統領の執行不能を宣言する④いつかは不明だがモラーが政権直撃の捜査結果を公表してトランプが窮地に陥るーなどが考えられる。①についてはトランプの支持率が38.6、不支持率が56.0であることが物語るように、下院が中間選挙で民主党優位に逆転する可能性が高い。従って過半数で弾劾を発議出来る可能性があるが、上院の3分の2の壁があり、共和党が弾劾に回らなければ困難だ。ニクソンの場合は民主・共和両党の合意で弾劾が可能となり、弾劾を待たずにニクソンは辞任している。そうした事態に発展するかどうかで決まる。従って②の弾劾早期成立は困難だろう。③の副大統領による解任も、トランプが精神的な異常を来すなどよほどのことがないと難しい。アメリカ合衆国憲法修正第25条は副大統領が大統領の執行不能を宣言できるとしているが、まだ発動されたことはない。従ってトランプの低空飛行は継続するが、ホワイトハウスの記者団を中心とするマスコミとトランプの対立は衰えることなく長丁場化して継続する方向だ。

◎俳談

◎俳談
【桜を詠む】
桜を詠むときは、季語のイメージが強すぎるので状況を素直に捉えるにかぎる。あれこれ考えすぎたり、技巧を凝らすと墨絵に油絵の具を塗るようになって、桜の爽やかさが出ない。
芭蕉の
さまざまのこと思ひ出す桜かな
が良い例だ。実際にはこれだけの俳句を詠むには、相当な技巧が必要だが、芭蕉はそれを感じさせない。読む者の気持ちの中にすっと入り込んで、いったん入ると忘れないフレーズとなる。
たましひが先に近づく桜かな 産経俳壇入選
桜へと急ぐ身体より心が先に桜へと到達することを詠んだ。
遙かなる桜吹雪に急ぐかな  東京俳壇入選
桜吹雪がまだ終わらないように祈るような気持ちで急ぐ心境だ。いずれも感じたままを読んだ。技巧はない。
夜桜や学舎の窓の闇深し 毎日俳壇入選
夜桜の明るさに学校の窓の暗さを対比させた。
今生に一睡すれば花吹雪 産経俳壇入選
庭のしだれ桜を前に花見酒に酔い、一眠りしたら花吹雪だった。

◎偏見と誤解に満ちた国連報告など不要だ

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◎偏見と誤解に満ちた国連報告など不要だ
  ケイは人権活動家に見事に操られている
 大詰めを迎えたテロ等準備罪法案をめぐって、国際的な“陰謀”が展開されている。映画で活躍する女性工作員のごとく国連報告者らを意のままに操り、日本政府に打撃を与えるための工作を展開している女性がいるのだ。その手のひらで踊らされるがごとく、ジュネーブの国連人権理事会で特別報告者のデビッド・ケイがテロ法案の参院採決に合わせるかのように想像を絶するほどずさん極まりない左傾化調査結果を報告した。国連報告者とは特定の国における人権状況について調査・監視・報告・勧告を行う専門家であるが、ケイは昨年4月の来日以来、英エセックス大人権センター・フェローと称する人権活動家藤田早苗の誘導のままに報告書を作成しているかのようである。読売も14日付けの社説で「日本の一部の偏った市民運動家らに依拠した見解」と位置づけている。藤田の“手腕”は“凄腕” という形容がぴったりであり、日本の女性としては希有な行動力を持っている。その講演は左翼関係者で満員になるほどの盛況だという。
 そもそもケイの来日を画策したのは藤田と言われ、ジュネーブで暗躍して国連の組織を動かし、政府・与党をおとしめるのがその作戦の目的であるかのようである。まず藤田のネット発言をみれば「とうとう共謀罪法案が審議入りした。英訳して国連その他に提供した。専門家からは懸念の声が出ている」と、自らの国連機関への“貢献”を強調している。そして藤田は日本のメディアを取り巻く状況は悪化してきていると指摘し「権力監視という本来の役目を十分果たしているとはいえない」と分析している。こうした立場からの“洗脳”をうけたのかケイは「日本政府が直接間接にメディアに対して圧力を掛けている」として、まず「政治的に公平であること」などと規定した放送法4条の見直しを23日までには報告書に記載する予定だ。これは電波停止を恐れる左傾化民放が主張してきていることであり、藤田らのレクを受けなければとても米国の学者ごときが知り得ない内情である。
 ケイは日本の一部民放の偏向報道のひどさを知らないまま判断しているとしか思えない。民放の電波停止の可能性に関しては昨年2月には総務相高市早苗が「国論を二分する政治課題で一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当時間にわたり繰り返す番組を放送した場合」などと具体的な例をあげたうえで、「行政指導しても全く改善されず、公共の電波を使って繰り返される場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と言及している。またかつてテレビ朝日報道局長の椿貞良が「なんでもよいから反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないか」と他局に偏向報道を働きかけた事件があった。総務省は1998年のテレビ朝日への再免許の際に、政治的公平性に細心の注意を払うよう条件を付した例がある。しかし実際に停止命令が出された例はない。TBSやテレ朝はまたこうした動きが再発することを恐れており、ケイの報告書に書き込ませたいに違いない。
 さらにケイの報告で偏見に満ちているのが慰安婦問題だ。中学校の教科書から慰安婦の記述がなくなったことを指摘して「政府の介入は市民の知る権利を損なわせる」と日本政府を批判した。これも朝日の慰安婦強制連行の大誤報と、社長以下が陳謝したという事実関係を知らぬまま、吹き込まれたことを未消化で報告しようとしているものだろう。加えて秘密保護法に関しても「表現の自由を犯す」として、見直しを勧告するのだという。
 このように左翼人権活動家の“教育的指導”に踊らされてケイは、実情に疎いまま方向音痴の報告書を作成して、結果的に藤田らの反政府プロパガンダの一翼を担おうとしているわけだ。こうした藤田の動きを朝日は好意的に報道し続けており、構図としては野党ー朝日ー藤田ー左傾民放によるテロ法案阻止の連係プレーが実現していることになる。藤田の狙いは、戦後の教育で国連を理想的組織と印象づけられた国民の意識を最大限に活用して、ケイを利用して政府・与党を追い詰め、野党の力を拡大する事にある。
 しかし、国連報告者などというと、特別に偉い存在であるかのように見えるが、その実は国連には80人もいて、権威などない。国連を代表した者ではさらさらない。事務総長アントニオ・グテーレスも首相・安倍晋三に「国連とは別に個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない」と説明している。そのような人物のレベルの低い、強制力などかけらもない報告書を大々的に報道する日本のマスコミも、いい加減に国際的な常識を身につけるべきだ。策謀女に踊らされる偏狭なる一学者のたわ言を競って大きく報道する癖を直したらどうか。政府も雑魚相手にけんかしても仕方がない。放置すれば国際社会に誤解が広がりかねない。グテーレスに直接働きかけて対応を求めるべきだ。日本はアメリカに次いで世界第2位の国連分担金を払って、国連活動に貢献しているのであり、事務総長はそのような平和国家をおとしめる発言が国連内部から出るのを放置していいのかということになる。

◎俳談

◎俳談
【昼ビール万歳】
落花生両手で砕きビール汲む 杉の子
 藤沢という街は湘南ムードもあって明るくて洒落た街だ。駅前の地下街に日本一うまい中華そば屋がある。「古久屋」という名前だが、なぜ日本一かというと、特に理由はない。他にうまいところを知らんからだ。江ノ島水族館でクラゲの写真を撮ったあとは必ずこの店に寄る。クラゲの撮影を10時45分で切り上げると、ちょうど開店の11時に間に合う。なぜ知ったかというと娘が高校時代しょっちゅう通って「特焼きそばにお酢をどばっとかけるとおいしい」と言っていたからだ。
 この店で気付いたのは湘南というのは昼からビールを飲むことだ。私のような上品な白髪の老人が、一人手酌で焼きそばを前に一杯飲んでいるかと思えば、老夫婦が湯麺を啜りながら一杯飲んでいる。昼ビールのうまさは格別なことを知っているから、一度真似してみたいと思っていたが、気が弱いから一年ばかりちゅうちょ。昨日思い切って決断した。決断だから注文の仕方も並大抵ではない。つい「ちょっと、ビール」とかん高い声を出してしまうのだ。店員は何で興奮しているのか分からないから、怪訝な客だと思っても顔に出さずに「はい」と受け止める。こうして決死の覚悟の昼ビールがのどをごっくんと通過したのだ。現役時代に一所懸命に働いて、今は自由の身。「世間よざまあみろ」と内心思うのだ。そして小粋なる湘南っ子の顔を装って、大和市のイモ爺さんが、またとくとくとくとビールを注ぐのだった。
ひたすらにビールを思ひ庭仕事 杉の子

◎政府・与党はテロ法会期内成立を図れ

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◎政府・与党はテロ法会期内成立を図れ
 支持率微減はメディアの空振りを物語る
 メモ公表も「だからどうした」だ
  「世の中に蚊ほどうるさきものは無し、『モンカだカケだ』と夜も眠れず」。一部新聞、民放は、外交・安保の重要局面や最重要法案をさておいて、あさっての方向に突っ走っているのではないか。あれだけ騒いでも内閣支持率も政党支持率も微減でしかない。俳句の会で論理先行で詩情のない句を冷やかすときに「だからどうしたい」と言うが、「加計学園」の獣医学部新設をめぐる文科省内部文書の再調査問題をめぐる論議も酷似している。文科省がもともとあるメモを見つけ出しても「だからどうしたい」そのものではないか。野党が誰が作ったかも知れぬ無責任なメモを金科玉条とばかりに押し頂いても、事態が急転直下「加計疑獄」になる可能生はゼロだ。前文科事務次官前川喜平が退任させられた意趣返しのごとく発言を続け、これを“活用”してなんとか政局に結びつけようとする野党と朝日、毎日、一部民放の“魂胆”は見え透いている。政府・与党は終盤国会最大の焦点であるテロ等準備罪法案の成立に向け中央突破を断行し、ちゅうちょなく今国会成立を図るべきである。
 NHKの調査では安倍内閣を「支持する」と答えた人は、先月の調査より3ポイント下がって48%で、依然として歴代内閣とは比較にならないほどの高水準を維持している。各党の支持率は、自民党が36.4%でマイナス1.1ポイント減、民進党が7.9%で0.6増、共産党が2.7%で変化なしであり、いずれも誤差の範囲内だ。朝日、毎日、TBS、テレ朝が総力を挙げての反安倍キャンペーンが、いかに上滑りしているかを物語っている。国民の真偽を見極める目は衰えていないのだ。もっとも、NHKは論説では公正なる公共放送にあるまじき反安倍姿勢を示している。NHKは12日の持論公論で解説委員西川龍一が加計学園理事長加計孝太郎と安倍が親密な関係であることに関連して「恣意的な姿勢でなく透明性を確保したから客観的な評価に基づき検討された結果なのだと思える説明が必要」とかみついている。しかし、一言も国家戦略特区諮問会議の「客観的な審議」を経ている事に言及していない。NHKとは思えないずさんかつ不公平な論調であった。
 首相・安倍晋三が、文科相にメモを「徹底的に調査するように指示した」問題について、民放ワイドショーが勝ち誇ったような番組を放映しているが、相変わらず民放は問題の核心を見逃している。というか核心を度外視している。内閣の命運に関わる文書であったら、政権側は何が何でも公表はしまい。いつになるかは不明だが、公表するのは「政局無関係」が確実であるからだ。少なくとも今治市への獣医学部招致は国家戦略特区諮問会議を経て実現へと動いているのであり、そこに安倍の「意向」は働かない。諮問会議の議事録を読めば明白である。前川発言の最大の弱点は、一部マスコミが事細かに報道することに悪乗りしてメモの存在だけに的を絞り、それ以上の疑惑に言及できないことだ。メモが「あるある」といっても、金銭疑惑に直結するような証拠を指摘できないままでは、まさに印象操作にほかならない。印象操作の「あるある詐欺」なのだ。
 おまけに野党の攻撃は口だけ達者だが、重要ポイントで大失策をやらかしている。まず国連の特別報告者であるジョセフ・ケナタッチとやらが、テロ法案について「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と指摘する書簡を、直接、安倍宛てに送付したことを取り上げ、鬼の首を取ったかのように追及しているが、大誤算だ。特別報告者など国連には80人もいて、ワン・オブ・ゼムの主張であり、権威などない。国連を代表したものではさらさらない。おまけに野党がどこかのルートを通じて入れ知恵したと言う説がある。マルタの大学教授のレベルが知れる。国連のしかるべき担当部署は国連薬物犯罪事務所であり、フェドートフ事務局長は法案の衆院通過に際して「条約の締結に向けての動きを歓迎する」と公式に発言している。民進、共産両党は国連にもピンからキリまでいろいろあることが分かっていない。愚者のごとく知らないで藪をつつくから蛇が出るのだ。
 一方で、反安倍姿勢が著しい民放も、言論報道の自由を自ら規制するような重大な発言を池上彰にさせている。12日のテレビ朝日では前川の記者会見で、読売の記者が「在職中に得た情報を明らかにするというのは守秘義務違反に当たるのではないかという指摘がある」と質したことを録画を基に生々しく取り上げた。そして池上は「読売の記者は自分で自分の首を絞めている。この記者は前川さんをけん制している。ということは全国の公務員は読売が取材に来たら守秘義務ですからと言って、拒否していいのかということになりかねない。驚くべき事だ」とこじつけも著しい発言をした。まさにあさってを向いた発言だ。ここで問題なのは、読売の記者の質問ではない。質問自体は前川の国家公務員の守秘義務に関わる発言を問題視して、「業務上知り得た秘密は退職後もこれはもらしてはならない」とする国家公務員法違反の疑いがある点を指摘したのであり、全く適切だ。問題は池上の発言がこうした質問をテレビという公共放送を“活用”して、抑圧しようとしていることだ。マスコミ人と称するものにあるまじき振る舞いだ。記者クラブで問題にしない方がおかしい。昔ならテレ朝は除名ものだ。
 池上は、おこがましくも前川に対するお追従質問はいいが、前川の利益にならない質問は封殺しようというのだろうか。だいいち記者が質問の相手をけん制するわけがない。この場合も真実を知るための質問であって、けん制している様にはどう見ても見えない。記者側にけん制して何の利益があるのか。加えて前川には売春防止法違反の疑いもある。その部分にもっと突っ込んだら池上は、「驚くべき事だ」というのだろうか。少なくともメディアで飯を食わせてもらっている人間が、メディアを封殺するような発言をすべきではない。池上は口八丁で一見理路整然としているように見えるが、その実はあらぬ事を早口でしゃべってごまかしているとしか思えない。理路整然と間違うタイプだ。こうしてメディアはとんちんかんを絵に描いたような傾向に陥っている。もう異論に耳を傾ける時期は過ぎた。政府・与党は、ちゅうちょなくテロ法案成立へと動くべきだ。

◎俳談

 ◎俳談
【鳰(にお)の浮巣】
鳰の消え浮き名の一つ残りけり 杉の子
鳰(カイツブリ)が水中に消えて本当は水輪が残るのだが、それにかけて浮き名とした。 鳰は冬の季語。どこの公園にでもいるあの可愛いやつである。鳩よりやや小さく、水中に巧みに潜って魚を獲(と)る。水中の写真が撮れたが、水面ではずんぐりしているのに、水中ではまるで矢だ。細長く体を伸ばして一直線に進む。フィリリリなどと鳴く声は美しい。
芭蕉は
五月雨に鳰の浮巣を見にゆかん
と詠んだが、「見に行かん」と言ってもこの場合江戸にいて、琵琶湖の浮巣を見に行くというのだから風流も極まれりだ。もっともこの時は別に用事があってのことで、まあ「さて近江にいくか」くらいのきもちであろう。
 そのかわいらしい鳰が、ある朝泉の森に行くと張ってある網に引っかかって、がんじがらめになり、断末魔の表情でもがいていた。余りのむごさに公園の係員に言って外させたが、一晩中もがいていたと見えてぐったりとなっていた。網は魚類調査のものだというが、池は鳰がしょっちゅう潜っている。そこに思いが行かなかった管理者は無能としか言いようがない。

◎強まる「改憲・衆院ダブル投票」の公算

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◎強まる「改憲・衆院ダブル投票」の公算
  自衛隊の根拠規定を問う 
 相乗効果で与党に有利か
 長年にわたって神学論争を繰り返してきた国会の憲法審査会に、改憲問題を政局にすべきでないとする議論があるが、どうだろうか。筆者は改憲問題は政局そのものだと思う。長年の政党の主張がぶつかり合う戦後最大の政局マターだ。従って改憲の国民投票と総選挙を同日に実施して「改憲・衆院ダブル投票」を断行、国民の信を問うことは全く正しい。9条への自衛隊根拠規定の追加など自衛隊を肯定する政府・与党と、否定する共産党との対決が最大の見物だが、流れは共産党の惨敗とみる。そして国民投票の実施時期が日程的に衆院議員の任期切れと接近するのであれば来年の同日投票は一段と現実味を帯びるのだ。
 自民党の憲法改正推進本部の会合が6日開かれ、いよいよ本格的な改憲論議がスタートした。安倍の提示した「9条の平和主義の理念は未来に向けて堅持し、9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」構想の是非が課題となる。冒頭から予想通り、自民党が2012年に世に問うた9条1項、2項も改正して「国防軍」保持を明記する憲法改正草案を取り下げるのかどうかについて激突した。総裁選出馬を意識していいる元幹事長石破茂が「どうするのか」とクレームを付けたのだ。しかし副総裁高村正彦は「12年草案をどうするかを決めないと新しい議論に入れないということはない。改正案を作ってから草案と比較すればいい」とぴしゃりと反論。結局大勢は草案にこだわらず、首相案について議論を進める方向が確認された。
 まさに「党内政局化」が抑えられた瞬間であった。石破の主張は党内でも一定の理解はあるが、今回の改憲構想は従来の草案が開けられなかった改憲の岩盤をダイナマイトで崩そうとする政治的な意図がある。仏壇の奥からちりの付いた「歴史的文書」のような草案を持ち出しても政治的に動かせるものではない。石破はそこに気付いていないのだ。
 もう一つ異論がある。「行政府の長である安倍が改憲を提示するのはおかしい」とする議論である。毎日も社説で「憲法改正案の発議権を持つ国会の頭越しで具体的な改憲方針を明示するのは異例だ」と安倍にかみついた。さらにその憲法発言で大局観のなさを露呈している衆院憲法審査会理事の自民党幹事船田元も「行政府の長や内閣に籍を置く者は改憲に抑制的であるべきだ」と苦言を呈している。
 しかし、6月1日の衆院憲法審査会参考人として出席した東大教授の宍戸常寿と慶応大教授の小山剛は国会の発議権を安倍が害していることはないとの見解を表明した。宍戸は「議院内閣制では政党党首が同時に首相を務めることが想定されている。首相であるところの与党党首が、改憲をしかるべき場で、しかるべきやり方で発言することは、一般的に憲法尊重擁護義務に反しないと考えている」と発言、小山も同調した。どうも憲法調査会は、15年に集団的自衛権の行使を限定容認する安全保障法制を巡り大学教授らに「違憲」を言わせて、安倍の足を引っ張った“快感”が忘れられないとみえて、二度目の「参考人ショック」を狙ったようだ。しかし、柳の下にドジョウは2匹おらず、「逆ショック」を受けたのは審査会であった。
 こうして反対論は勢いを得ない状況にあるが、まだ山あり谷ありとみなければなるまい。大きな流れは筆者が5月11日にあらゆるメディアに先だって「総選挙と国民投票のダブル選挙の可能性がある」と推測した方向に向いている。朝日も7日「改憲発議現有勢力で狙う」と、与党が3分の2を維持している現体制での改憲を目指す方向を記事にしている。安倍も先月インタビューで憲法改正の是非を問う国民投票を国政選挙と同時に実施することの是非に関して「衆院選と参院選を国民投票と別途やるのが合理的かどうかということもある」と述べた。国政選挙との同時実施の可能性に言及した形だ。自身が憲法9条改正を提起した意図についても、「自衛隊論争に終止符を打つ」と強調した。
 衆院議員の任期は残り約1年6か月で、安倍は国民投票で解散権を縛られないことを意図したものともみられる。官房長官・菅義偉も国民投票の実施が解散権を制約するかどうかについて「首相の衆院解散権への制約はないと思っている」と明言している。こうして改憲の日程は衆院議員の任期切れを意識して進展する方向が強まった。筆者は過去に2度実施された衆参ダブル選挙の場合、自民党が圧勝した原因は相乗効果にあると判断している。衆院で自民党に投票した有権者は参院でも自民党に投票する傾向があるのだ。これは憲法改正とも共通する側面があるのではないか。自民党に投票する有権者は9条改憲を是とする傾向を必ず帯びると見る。従って相乗効果で自民党は負けないし、改憲は投票した国民の過半数を得られるだろう。具体的な日程としては、2020年に改正憲法を施行するとなると、早ければ2019年には憲法改正の国民投票に漕ぎ着ける必要が出てくる。急げば来年の通常国会末か遅れても秋の臨時国会で、3分の2以上の賛成で発議することとなろう。その後最短60日で国民投票となる。従って国民投票は衆院議員の任期切れが来年末だから、総選挙とのダブル選挙になる公算がある。経費節約にもなる。参院選挙は2019年夏だが、事は憲法であり、参院ではなく政権の存否が問われる衆院選挙に合わせるべきだろう。

◎俳談

◎俳談
【俳句と笑い】                   
あの子規が
山の花下より見れば花の山 
という句を作っていたかと思うとほほ笑ましい。言葉遊びのように見えるが一度読んだら忘れない句はいい句だ。一茶は笑いとペーソスの俳人だ。まるでチャップリンのようである。
故郷は蠅まで人を刺しにけり
古里の冷たさをばっさりと切っている。筆者も負けてはいない。
湯湯婆(ゆたんぽ)と書けば笑へるなあ婆さん 読売俳壇1席
は、自慢ではないが、俳句史上に残してもらいたいユーモア句だ。
まだある
合格子上がり框で転びけり 産経俳壇入選
「合格したよ」と言ってづっこけた。
遠足やパンパかパーンと弁当開け 読売俳壇1席
パンパカパーンは横山ノックの専売特許ではない。
クソ暑い夏。
これきしはジュラ紀の冬と炎天下 読売俳壇3席
ジュラ紀は知らんが相当暑かったらしい。頑固じじいがブツブツ言いながら炎天下を歩いている。

◎露、北朝鮮の「緩衝国化」を推進

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◎露、北朝鮮の「緩衝国化」を推進
  北方領土も戦略的位置づけ重視
 垣間見せたプーチンの本音
 プーチンがサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムの公開討論の中で語った極東戦略は、北朝鮮を米戦略に対する緩衝国とはっきり位置づけ、核保有を容認したものである。一方北方領土も緩衝地帯としての戦略的価値を鮮明にさせた。一連の発言は日本にとっては極めて利個主義的な国家エゴと受け取れるが、ロシアにとっては将来を見据えた冷徹なる世界観に基づく極東戦略であろう。プーチンの本音を垣間見せたこの発言は北の金正恩を増長させ、極東の緊張を一段と高めることになり、北方領土交渉にも影響を与えることが避けられない。

 プーチンによる2日の発言は、まず北方領土でのロシア軍の軍備増強などについて質問されたのに対し、「北東アジアでは、アメリカが北朝鮮情勢を口実に韓国などでミサイル防衛システムの配備を進めている」と答えた。米国による韓国への戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)配備などを指すものだ。そのうえで、「これはロシアにとって懸念で、対応しなければならない。脅威を抑えるためには、島々が便利だ。島々が日本の主権下に入れば、アメリカ軍が展開する可能性がある。島々に軍事基地やミサイル防衛システムが配備されることはロシアにとって全く受け入れられないことだ」と述べた。北方領土でのロシアの軍備増強は、ミサイル防衛システムの配備によってロシアの核戦力を無力化しようとするアメリカへの対抗措置だと正当化したのだ。この論理は昨年暮れに国家安全保障局長谷内正太郎がロシアの安全保障会議書記パトルシェフに対し、引き渡し後の北方領土に米軍基地を設置する可能性を否定しなかったといわれる情報が流れて以来のプーチンの立場を繰り返したものである。

 さらに北朝鮮に関する発言は、軍事的圧力を強める米国を批判する中で出た。プーチンは「小さな国々は自らの独立や安全と主権を守るためには、核兵器を持つ以外、他の手段がないと思っている」と言明したのだ。加えて「力の論理が幅をきかせ、暴力が支配する間は、北朝鮮で起きているような問題が生じるだろう」とも述べた。プーチンはこれまで北の核保有に関しては「核クラブの拡大につながり反対する」との立場を表明してきたが、今回の発言はこれを大きく転換させる意思があると受け取れるものだろう。金正恩路線の支持でもある。明らかに米国を念頭に置いたもので、そこには米国が北大西洋条約機構(NATO)で西から、日米同盟と米韓同盟で東からロシアに対する圧力を掛けていることへの不満がある。

 事はそう簡単ではない。「核兵器拡散防止条約」(NPT)は、米国、英国、フランス、ロシア、中国の核兵器保有を認め、その他の国々の核兵器保有を禁止する「不平等条約」として1968年に成立した。しかし現在では190ヵ国が加盟しており、核の均衡にとっては欠くことの出来ない条約である。この5か国に加えてインド、パキスタン、北朝鮮が保有。イスラエルも、「核兵器保有を肯定も否定もしない」形で保有している。しかし、核保有9か国のうち8か国と北朝鮮とは決定的な違いがある。8か国は極めて常識的な指導者がおり、冷戦終了後に核でどう喝した話は聞かない。しかし北朝鮮だけは「狂気の独裁者」が存在して、日米韓をどう喝しながら、核実験とミサイル実験を繰り返しているのだ。北の核は「気違いに刃物」の構図だが、他国は概ね「床の間の日本刀」なのだ。

 発言から見る限りプーチンの基本戦略はこの独裁者を“活用”しようとしている魂胆がありありと見える。ロシアからみれば北の核ミサイルのターゲットは日米韓3か国であり、ロシアには向けられていない。これは北が米国の軍事力に対する緩衝国として極めて有用であることを物語っているのだ。毒薬であるべき北の核はプーチンにとって
は「毒薬変じて薬となる」のである。金正恩が日米韓を核の対象にしている限りは、ロシアにとっては、願ってもない「子分」ができたということになる。要するにロシアは北をロシアの対米戦略に組み込もうとしているのだ。万景峰号による定期航路を開通させたのもその戦略の一環であることは言うまでもない。

 朝露関係は、1961年に当時のソ連と北朝鮮との間で「ソ朝友好協力相互援助条約」を結んだ。この条約はどちらか一方の国家が第三国から攻撃を受けた場合に共に軍事行動を行うという軍事同盟の条約であった。しかしソ連の崩壊で条約は破棄、1999年に新たに「ロ朝友好善隣協力条約」を締結したが、軍事同盟の条項は削除された。これでロ朝関係は軍事同盟の関係から、親密な友好国家の関係に切り替わったが、プーチンの姿勢は今後陰に陽に北との軍事的関係を深め、国際社会の制裁に対しても“抜け道”的な役割を果たすことになろう。

 もちろんロシアだけでなく、中国も似たり寄ったりの対応である。北は中国の紛れもない緩衝国であり、習近平にとって金正恩は気にくわないが、北の体制は何が何でも守らなければならないのが基本だ。こうした極東における対峙の構図に日本は否応なしに巻き込まれる。天から平和が降ってくる時代はとっくに終わり、天から降るのは北の核ミサイルであり、国の防衛は根本から見直さなければならない時期に来ているのだろう。

◎俳談

◎俳談
【一茶のリフレイン】
 一茶はリフレインの名手である。ただでさえ短い俳句の中で言葉を繰り返すのだから無駄のように見えるが、当たるとリフレインほど訴求力のある俳句はなくなる。一茶はかなりの確率で当てているのである。まず人口に膾炙(かいしゃ)した句は
やれ打つな蝿が手をする足をする
雀の子そこのけそこのけお馬が通る
の二首であろう。「する」を重ねることでハエの情景がクローズアップで見えてくる。「そこのけ」の繰り返しは、威張っている武士階級を茶化して見事だ。
一つ蚊のだまってしくりしくりかな
もちろん蚊は刺しますと言って刺さない。黙って刺すが、しくりしくりであちこち刺された様子が浮かぶ。
千の蟻一匹頭痛の蟻がいる 東京俳壇入選
庭で蟻を見ていて直感であの蟻は頭痛に違いないと思った。
鳧(けり)の子のけりつと鳴ける日暮かな 東京俳壇入選
本当に鳧は「けりっ」と鳴くのだ。だから鳧という名が付いたに違いない。
ときめきてすぐあきらめて石鹼玉 読売俳壇1席
日の落ちてとっぷり暮れて十三夜 産経俳壇入選
リフレインではないが「て」という助詞を二度利かせることによってリフレイン効果とリズム感を出した。これも一種のリフレインだろう

◎宙に浮く野党の政権追及

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◎宙に浮く野党の政権追及 
 金銭疑惑ゼロの壁で「政局化」は無理
  「黒い霧」と似た“ムード依存”
 「国会が森友問題とか加計学園ばかり。モリだとかカケだとか私も麺類は好きだけど、こればっかりで国民はうんざりです!」と質問者である自民党参院議員山田宏が嘆いたが、全くその通りだ。もっとも5日の衆参決算委員会での質疑は、満を持したのか首相・安倍晋三以下政府側の反論が徹底していて、野党側の第2選級質問者はふんどし担ぎが横綱にかかるような体たらくであった。「総理のご意向」文書も政府側の全面否定で空振り。切り札とばかりに提示した「総理のご意向メール」も、ネットでは「第二の偽メール事件だ」と盛り上がっている。野党と朝日、毎日、民放などが足並みをそろえてありもしない魔女狩りのごとき政権追及も、金銭疑惑に結びつけようがなく宙に浮いた形となった。相変わらずテレビやラジオのコメンテーターらがあることないことしゃべりまくっているが、しゃべればしゃべるほどその中身は良識ある国民ならあきれる「根拠レス」であることが次第に鮮明になっている。もう、この問題での追及は勝負があったのであり、いいかげんにした方がよい。まるで佐藤内閣時代に「黒い霧」と称する追及を野党が展開したが、結局追及が行き詰まり政権側が勝ったのと似ている。佐藤栄作は「黒い霧解散」で沈静化したが、この場面では解散するまでもあるまい。
 5日の質疑を通じて浮かび上がった問題はいかに野党側の追及が「印象操作」に満ちあふれていたかということであろう。まず前文科次官前川喜平が今治市への加計学園獣医学部設置について「首相の意向が働いた」とマスコミに証言し続けている問題については、次官でありながらなぜ首相に面と向かって反対の意向を伝えなかったかが問われた。安倍は「事務次官で私に『お言葉ですが』と持論を展開される方もいる。3回お見えになっているがこの問題については全く話をしなかったことは当惑せざるを得ない」と発言した。さらに前川の「総理の意向発言」についても「国家戦略特区諮問会議できっちりと議論することになっており、私の意向というものは入りようがない。それありきではなく、公募で決めたという経緯がある。そうしたものに一切触れず、延々と議論されるのは極めて不適切で印象操作だ」と反論した。
 一方、前川が出会い系バー通いを繰り返した問題について官房長官菅義偉は「常識的に、青少年の健全育成、教職員の監督に携わる事務方の最高責任者が、売春、援助交際の温床になりかねないと指摘されている店に頻繁に通って、女性を外に引き出してお小遣いまで渡していることに違和感を感じる」と厳しく断定した。さらに菅は、かつて前川について「地位に恋々としている」と発言した経緯に言及、「昨年12月末に官房副長官に天下り問題の説明に来た際に、みずからの進退については示さなかった。さらに、『3月まで定年延長したい、事務次官として続けたい』と打診があった。天下り問題を考え、『そんなことはダメだ』と言った。天下り問題に対する世論が厳しい状況になって初めてみずから辞めた。だから、私は『恋々としている』と申し上げた」と説明した。ここまで前川の人間性が露呈されれば、軍配は政府側に上がらざるを得まい。そもそも前川には売春防止法というれっきとした法律があり、あらゆる法律順守は公務員としての第一の義務であるということが分かっていないように見える。一部マスコミに悪乗りして発言を繰り返し、買春疑惑をそっちのけにしようとしても、「引かれ者の小唄」で無理があることが分かっていない。
 さらにもう一つの焦点は民主党政権が、自ら獣医学部の招致を今治市に決めておきながら、なぜ今になって反対するのかの問題だ。安倍は「鳩山政権は22年度を目途にに加計学園問題を速やかに検討することを決めた」 と指摘し、菅政権も野田政権もこれを受け継いだと強調した。たしかにこれほどつじつまが合わない問題はなく、なんでも「政局」に結びつけようとする意図が先行しているとしか言いようがない。政治に邪心が入るとブーメラン返しを受けるよい例だ。
 国会論議ですら根拠レスだから民放にいたっては、事実誤認どころかねじ曲げもいいところの論評が続いている。5日には反安倍の論調を貫くTBSラジオの「デイ・キャッチ」で、ジャーナリスト青木理が読売の「前川氏が在職中に出会い系バー通いをしていた」という大スクープにいちゃもんをつけた。「何であの時期なのか。朝日、毎日が『総理の意向』を伝えている中での報道だ」と、あさっての方向に疑問を投げかけた。時期もへったくれもない。新聞は確信を得れば記事にするのだ。加えて青木は「杉田副長官は公安警察出身。こんな情報を集められるのは警察以外にない。官僚のプライバシーの情報を集めている」と警察情報であると断定した。くだんの出会い系バーはマスコミでも有名になっており、記者でも通っている連中がいるという。文部次官が足繁く通えば、注目の対象となり、噂は広がりうる。次官専用車の運転日誌はどうだったのだろうか。警察でなくても情報は広がり得たのが実情であった。さらに青木は「政府に異議をとなえた途端にこんなものを出されたら縮こまる。官邸の意向に逆らうとこんな情報が出る」とまるで日本が警察国家であるかのような“危機感”を強調した。悪いことをすれば誰でも縮こまるのだ。この発言の問題は出会い系バーが菅の指定したように売春の温床になっていることへの視点が全く欠けていることだ。売春防止法というれっきとした法律があり、戦後法律が出来た当初は、警察が頻繁に手入れで踏み込み、売春業者や女性、買春の客などを検挙したのだ。当時はニュース映画で何度も報じられたものだ。その法律違反をしておいて「縮こまる」はないだろう。
 このように前川問題は、事の本質をあえて見逃しているメディアと、正すべきは正すマスコミや政治との正邪の戦いのような気がする。一方で、読売は6月4日に社会部長の署名入りで「次官時代の不適切な行動、報道すべき公共の関心事」と題する説明記事を掲載した。この中で①教育行政のトップという公人中の公人の行為として見過ごせない②売春の客となるのは違法行為である③青少年の健全教育に携わる文科省の最高幹部が頻繁に出入りし女性に金銭を渡して連れ出していたことは不適切な行為である④次官在任中の職務に関わる不適切な行為は公共の関心事であり、公益目的にもかなうーと、編集方針を改めて鮮明にさせた。胸のすくようなジャーナリズムのあるべき姿として賞賛を送りたい。

◎俳談

◎俳談
秋ともし木村伊兵衛の写真集
 木村伊兵衛と言えばライカだ。ライカを使って数々の名スナップを撮影している。とりわけ戦争直後の写真によいものが多い。昔はライカ1台で家が買えるほどの値段であった。戦後は安くなったがとても手が出ないと思っていたら特派員でニューヨークに行くことになった。ニューヨークではライカが安く70年代のカネで2、3万円で中古のライカM2などが買えた。新品のM4で10万円くらいだった。M5まで使ったが、使っている内に故障はするわ、レンズが突然はずれて落下するわで仕事には使えないことが分かった。それでも昭和天皇の訪米の写真を撮って、役には立った。
 その後カメラはデジタル化して、一眼全盛期となったがライカはレンジファインダーのまま。値段は高くてボディーだけで100万はする。それでいて写る写真はニコンやキャノンより見劣りがする。撮像素子がソニー製だから、売りはレンズだけだが、それもニコンの58㍉、F1.4などライカを大きく上回る描写力のレンズが出てはいよいよ存在価値が問われる。結局プロがプロの象徴として所有するか、銭が余ってしょうがない趣味人が所有するだけのカメラとなっている。言ってみれば女性のルイビトンのようにブランド性で生き延びようとしているとしか思えない。

◎安倍「次官なら私に直接言うべきだ」

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◎安倍「次官なら私に直接言うべきだ」
  事務次官OBらも前川批判で一致
 マスコミは「異次元の人」を英雄視するな
 前文科事務次官前川喜平が漏らし、朝日新聞が煽り、「盲目民放」が興味本位に追随する虚構の「加計学園疑惑」に対して、ようやく安倍政権は本格的な反論を展開し始めた。首相・安倍晋三自らが説明、閣僚や党幹部も積極的かつ具体的に反論し始めた。前川批判の焦点は何で次官在職中に身を賭して反対しなかったかに集中している。政治家ばかりではない事務次官OBらによる会合がこのほど開かれたが「疑問があるならなぜ在職中に首相と会って反対しなかったのか。後でマスコミに向かって発言することは次官経験者がやることではない」との見解で完全に一致したという。心ある次官経験者らは前川総スカンなのであろう。確かにまっとうな官僚なら筋を通すはずではないか。一部マスコミも次官在職中に売春を斡旋するようなバーに足繁く通い、「女性の貧困」を調査したと言ってはばからない「異次元の人」の発言を、まるで権力に立ち向かう英雄であるごとく報道し続けるのは、心ある国民の新聞離れと、民放蔑視(べっし)につながるばかりであることに気付くべきだ。
 まず安倍は1日、ニッポン放送の番組収録で「私の意向かどうかは確かめようと思えば確かめられる。次官なら大臣と一緒に私のところに来ればよい。そしてその場で反対すべきだった」と前川の姿勢を戒めた。そして「(加計学園の)理事長が友人だから私の国政に影響を与えたというのは、まさに印象操作だ」と厳しく断定した。自民党国対委員長竹下亘も「問題があるのならなぜ現職の時に発言しなかったのか」と批判した。筆者もこの問題の根底には、天下り問題で辞任を迫られた前川の“逆恨み”があると思えて仕方がない。そこにはマスコミの操縦を心得た前川の巧みな世論誘導術がある。文科省のメモの漏洩に始まって、一見新しい疑惑のように見える事柄を毎日のように少しずつ漏らして、安倍内閣を政局に追い込もうとする。「次官の野望」が垣間見えるのだ。しかし、その発言の内容たるや「総理のご意向」メモに始まって、決定的な打撃力に欠ける話ばかりだ。
 「総理のご意向」が犯罪につながるような証拠は一切提示せずに、矛盾にあふれ、まるで「引かれ者の小唄」のような発言ばかりだ。前川は16年9月に首相補佐官に呼ばれて「総理は自分の口からは言えないから」と獣医学部増設を求められたと主張する。しかし、学部新設は15年6月に閣議決定済みであり、閣議で決めた問題を、「自分が言えない」として、首相が人を介して次官の了承を求めることなどあり得ない。さらに言えば加計学園獣医学部新設は民主党政権が推進した問題でもある。今治市は2007年以来、特区指定申請を15回も却下されたていたが、民主党が10年に「対応不可」から「実現に向けて検討」に格上げの閣議決定をしている。従って前川が「行政がゆがめられている」と主張し、民進党がこれに口裏を合わせているのは天に唾するものだ。何をやっても「安倍の疑惑」と指摘するなら、当然民主党の疑惑も指摘され得る事態ではないのか。規制改革担当相の山本幸三が「(文科官僚が)既得権のことばかりを考えて行政をゆがめてきたのを正しただけだ」と反論しているのが正解だ。
 そもそもこの前川対官邸の確執の本質は、規制改革を推進する官邸と既得権にしがみつこうとする文科省、応援議員団、獣医団体などとの戦いなのだ。反対派は50年も続けられてきた獣医学部新設却下が、時代の変遷と共に実情に合致しなくなってきていることを無視しているのだ。鳥インフルエンザや口蹄疫などという新事態は、獣医学部の新設却下と明らかなる矛盾を示している。旧態依然として岩盤を守ろうとする文科官僚は、その新事態に気付いていなかっただけのことだ。その固い岩盤に安倍がダイナマイトを仕掛けなければ事は動かなかったのであって、政治は時に荒療治をしなければ官僚の既得権擁護を突破出来ないのだ。もともと朝日などマスコミの多くは規制改革推進論であったはずだが、なんとしてでも政局に結びつけたいという“邪心” が先行して「報道をゆがめる」結果を招いているのだ

◎俳談

◎俳談
【遊びせんとや】
 遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ。平安時代末期に後白河法皇が編んだ『梁塵秘抄』(りょうじんひしょう)にある有名な歌謡である。後白河法皇は少年のころから、今様と呼ばれる歌謡を好んだ。歌の上手を召して多くの歌謡を知ったが、死後それらが伝わらなくなることを惜しみ、書き留めて本にしたものだ。
 筆者は自慢ではないが生粋の仕事人間だ。しかし仕事をしながら常に「遊び」を考えている。遊びがない人生などあり得ない。その遊びは一貫して写真撮影だ。それもカワセミ撮影が主だ。カワセミとの瞬時の勝負が、たまらない快感を脳にもたらす。アドレナリンで脳がいっぱいになる。カワセミが撮れれば、街のスナップショットの瞬間などはわけなく切り取れる。とりわけ狙っているのはカワセミのホバリングだ。ホバリングの写真が一番難しい。いつどこでやるか分からないし、一秒の勝負だ。
翡翠(かわせみ)の遊びせんとや生まれける 杉の子


◎パリ協定離脱で米欧の亀裂深刻

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◎パリ協定離脱で米欧の亀裂深刻
 「トランプVsメルケル紛争」の現状
 日本は双方の過剰反応を戒めよ
 トランプ対メルケルの対立で、ただでさえ離反が目立った米欧関係に、「米パリ協定から離脱」という報道の追い打ちである。もはや亀裂は決定的なものとなりつつある。「アメリカ第一」を掲げるトランプの唯我独尊姿勢は、イギリスの欧州連合(EU)離脱でメルケルが牽引しているEUとの関係悪化を増幅し、抜き差しならぬ段階にまで至った。幸い対ロシア軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)にひびが入る気配はないが、防衛費分担をめぐってギクシャクし始めたことは否めない。米欧の内輪もめにプーチンが小躍りしている事は確かだろう。日米関係はかってなく良好だが、首相・安倍晋三はサミットでも果たしたように米欧離反への接着剤として、双方の「過剰反応」を戒める必要があろう。
 「トランプVsメルケル紛争」は根が深い。3月の米独首脳会談でもトランプはメルケルに視線も向けず、そっぽを向き握手すらしなかった。トランプの欧州訪問とこれに続くG7サミットでも激しく対立した。とりわけメルケルは、オバマが任期最終年に署名したパリ協定をトランプが受け入れなかったことに腹を立てたようだ。メルケルは「気候変動に関しては、非常に満足のいかないものだった。サミットでもパリ協定支持、不支持は6対1で、EUを加えるなら7対1の状況だった」とトランプへの不満を述べている。
 このメルケルの不満が爆発したのが28日、ミュンヘンで開催されたパーティー形式の選挙集会での演説だ。ビール片手にメルケルは演説のボルテージを上げ、「私はこの数日で、ヨーロッパが他国に完全に頼れる時代はある程度終わったと感じた」と述べ、米国への不満を表明した。そのうえで、メルケルは、アメリカとの友好関係の重要性を指摘しつつも、「ヨーロッパは、自分たちの運命を自分たちで切り開いていくしかない」と述べ、ヨーロッパが地球温暖化対策などを主導していく必要性を訴えた。
 発言について米国のNATO大使であったイボ・ダールダーはニューヨークタイムズ紙に「米国が導き欧州はついてきた時代の終末が来たようだ。米国は主要イシューで欧州と反対方向に向かっていて、メルケルの発言はこうした現実認識から出たもの」と論評した。さらにニューヨークタイムズ紙はG7サミットを論評して「過去ドイツおよび欧州は、自動的に米国に依存してきたが、もはやトランプは信頼すべきパートナーではないと結論づけた」と言い切っている。またワシントンポスト紙は「メルケル首相が米欧関係に新たなページが開かれたことを宣言した」と分析している。
 一方米欧双方にトランプが、トルーマン以来歴代大統領が言及してきたNATO条約第5条への言及がなかったことへの懸念が生じている。5条は「NATO同盟の一つの国への攻撃を同盟全体への攻撃と見なし、集団的に防衛する」とし条約の要である。懸念の発信源はハーバード大学教授のニコラス・バーンズのようだ。バーンズは「歴代の米大統領は全て第5条への支持を表明した。米国は欧州を防衛するということだ。トランプ氏は、NATOでそうしなかった。これは大きな間違いだ」と指摘した。これにメディアが乗った結果大きな問題となった。しかしウオールストリートジャーナル紙は社説で、トランプはNATO本部で開かれた「第5条とベルリンの壁」に関する記念式典で、「この式典は記憶と決意のためにある。われわれは2001年9月11日にテロリストによって残忍な方法で殺害された約3000人の罪なき人々をしのび、追悼する。われわれNATO加盟国は歴史上初めて第5条の集団防衛条項を発動し、迅速かつ断固たる態度で対応した」と述べた点を指摘している。直接的ではないが間接的には5条を支持したというのだ。さすがのトランプもNATOを全面否定すればどうなるか位のことは分かっているものとみられる。
 メルケルは1次、2次世界大戦の敗戦国としてドイツがあえて米国に異論を唱えることのなかった長い間の慣習を打ち破り、米国の“独善”に勇気を持って発言したことになる。国内はこれを歓迎する空気が濃厚だが、ドイツが直ちに欧州の平和にとっての脅威として登場することはあるまい。しかし、長期的にみれば、大きな曲がり角と見るべきだろう。背景には9月の総選挙で4回連続で首相の座を狙うメルケルが、トランプに批判的な国内世論に訴えようとする意図もないとは言えない。ドイツの野党は「メルケルがトランプに寛容すぎる」と批判しており、トランプ批判は国内の政情に対応するメッセージでもあった。
 こうした中で日米関係は安倍が昨年12月にトランプタワーで就任前のトランプといち早く会談したことが効を奏して、極めて良好である。とりわけ北朝鮮の「核・ミサイル亡者」が暴発している現状において、日米同盟の結束は不可欠だ。トランプにとっても欧州との亀裂が極東にまで及んでは米国の完全孤立になり、日米関係の堅持は基本戦略だろう。一方、欧州も安倍がサミットでパリ協定の順守と、保護主義否定に回ったことで一目置いている。安倍は機会を捉えて双方に過剰反応を戒めるべきだろう。トランプも選挙戦のときのような「NATOは時代遅れだ」といった発言は控え、G7の首脳宣言に「保護主義と闘う」との文言を盛り込むことにも同意した。メルケルも基本的には親米的である。トランプが数日以内にパリ協定脱退を宣言すれば、当面の米欧関係はこじれにこじれるだろうが、次回G20サミットが7月7日から8日にかけて、ハンブルグで開催される予定であり、こうした場を活用して米欧双方をなだめることも必要だろう。

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