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◎俳談

◎俳談
【昼ビール万歳】
落花生両手で砕きビール汲む 杉の子
 藤沢という街は湘南ムードもあって明るくて洒落た街だ。駅前の地下街に日本一うまい中華そば屋がある。「古久屋」という名前だが、なぜ日本一かというと、特に理由はない。他にうまいところを知らんからだ。江ノ島水族館でクラゲの写真を撮ったあとは必ずこの店に寄る。クラゲの撮影を10時45分で切り上げると、ちょうど開店の11時に間に合う。なぜ知ったかというと娘が高校時代しょっちゅう通って「特焼きそばにお酢をどばっとかけるとおいしい」と言っていたからだ。
 この店で気付いたのは湘南というのは昼からビールを飲むことだ。私のような上品な白髪の老人が、一人手酌で焼きそばを前に一杯飲んでいるかと思えば、老夫婦が湯麺を啜りながら一杯飲んでいる。昼ビールのうまさは格別なことを知っているから、一度真似してみたいと思っていたが、気が弱いから一年ばかりちゅうちょ。昨日思い切って決断した。決断だから注文の仕方も並大抵ではない。つい「ちょっと、ビール」とかん高い声を出してしまうのだ。店員は何で興奮しているのか分からないから、怪訝な客だと思っても顔に出さずに「はい」と受け止める。こうして決死の覚悟の昼ビールがのどをごっくんと通過したのだ。現役時代に一所懸命に働いて、今は自由の身。「世間よざまあみろ」と内心思うのだ。そして小粋なる湘南っ子の顔を装って、大和市のイモ爺さんが、またとくとくとくとビールを注ぐのだった。
ひたすらにビールを思ひ庭仕事 杉の子

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