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T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」浅野勝人

T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」
安保政策研究会理事長 浅野勝人

東京都議選で自民党が惨敗した後、お目にかかってお昼に天丼食いながら、「都議選の小池百合子は怖かったが、国政選挙の小池は怖くない」と申し上げた私の見解が当たりそうな気配ですね。

都議選の折、多くのマスコミが世論調査、その他の情勢を分析して、自民党は減っても30議席台と踏んでいたのに、T君ご承知の通り、私が20議席そこそこと予測しました。結果は19議席でみんなびっくり仰天でした。
種明かしをしますと、「都民ファースト」が全員当選すると予測して、民進党も減る。共産党が増える。これを総合して逆算すると自民には20議席位しか残らない。結局、「都民ファースト」で落選したのは1人だけだったので、大当たりしたという仕掛け。

都議選で勝利の女神だった小池百合子が、国政選挙で輝くのは無理と推測した理由(わけ)は、
あの方は、どの選挙も「大統領選挙」と勘違いしているのではないか。だから、小池人気が、全国津々浦々、衆議院小選挙区に行き渡り、特に比例区では圧勝して、都議選の再現となる。総理大臣就任も夢ではないと錯覚してしまう。

自民党内では、外交・安保政策に関して右派の論客だったから、時間の経過とともにその地金が滲(にじ)み出る。そうなると、右派の安倍晋三と同質なことが改めてわかってしまうので、「政権選択選挙」という唯一の訴えが売り物にならない。小池を支える膨大な無党派層が失望して離反する。
その証拠に、党公認に際して民進党リベラル派を除外する表現を「全員公認するつもりはさらさらない」と失言して馬脚を現した。

つまりは、安倍自民党と対峙することによって人気を倍増するつもりが、まるで補完勢力と映って当初の意図がくれてしまいました。
だから、出馬の可能性を匂わしていた姿勢から一転して「不出馬」を明言して逃げました。与党をめざして「希望の党」を立ち上げた政党の代表・党首が選挙には出ない。国会の首班指名には加わらないという事例が憲政史上あったでしょうか。どなたか調べて教えて下さい。

これに比べて、安保法制、憲法9条改正に反対する基本姿勢を堅持して筋を通し、自民党との対決を鮮明にしている「立憲民主党」の候補者と「希望の党」への参加を避けて「無所属」で出馬する候補者が、非自民票の受け皿になる可能性が強まります。

T君、安倍自民党の不人気は、君の想像をはるかに超えています。私の周りでも、まさかと思う方が「今回は自民党には投票しない」と明言して驚かされます。
T君も当初は肝を冷やしていたでしょうが、小池百合子のおかげで、野党が「馬糞の川流れ」(政治勢力がバラバラになって求心力を失う様を金丸信らしい表現で言った)となりました。自民党が、近年、厳しく批判されている傲慢な政治姿勢を反省して、国家、国民の平穏と繁栄に真摯に取り組む姿を示せば、情況は好転します。

二階幹事長は、大軍の将ですから、自信を持ってもっとはっきり発言した方がいい。
T君、君から幹事長にアドバイスしたら?
「世の中のために政治家が要(い)る。政治家のために世の中があるのではない」(思いあがるなの意)と明確な小池批判をする。
「国会で戦争法案反対と言っていた人たちが、政党を変わったら賛成という。我が党は有り難いが、有権者の方々がそれを許すだろうか」とはっきり批判して、野党の中では一番強い「希望の党」の票を離散させる。

私は、来週から中国です。11回目になった北京大学での講義。それに北京外国語大学大学院、首都師範大学へ講義にまいります。選挙前に決まっていた日程ですからまいりますが、投票日前には戻ってまいります。
T君、加油! 加油! (元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【見る・聞く・思ふは使わない】
地下鉄の出口夕立真つ盛り 毎日俳談入選
 例外はあるがまず「見る・聞く・思ふ」は言い回しがくどくなる。初心者はどうしても入れたがるが、間違いだ。例えば掲句を<地下鉄の出口を見れば夕立かな>としたら、確実に入選しない。わざわざ「見る」などという言葉はいれる必要がない。入れなくても意味は通ずるからだ。
 例えば<秋の日の煌(きら)めく如き窓辺見る>は<秋の日の煌めく如き窓辺かな>に。
<荒梅雨や全員無事のニュース聞く>は<荒梅雨や全員無事のニュースかな>に。
<あひ傘のうれしと思ふ梅雨の街>は<あひ傘のうれしや梅雨の交差点>にすべきである。要するに「見る・聞く・思ふ」を使うと回りくどくなるのだ。五七五の短詩の中に無駄な言葉は絶対に入れてはならない。あひ傘とは相合い傘のこと。

◎野党分裂で自民が漁夫の利の兆し

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  小池はまるで“野合選挙”
 立憲が意外と健闘か
 安倍政権が泰然自若としているのに対して、野党は小池新党に逆風が吹き始めており、民進党の分裂が液状化現象を生じさせている。民進系支持労組連合の混乱に波及している。公認決定で浮かび上がった希望の党による選挙戦略は、戦略というより行き当たりばったりの「野合選挙」の実態をあらわにしている。野党で堅調なのは苦し紛れに枝野幸男が結成した立憲民主党のみである。しかし、今のところ擁立候補は50人を上回る程度とみられており、リベラル系が主軸となって政権を左右する可能性は少ない。この結果自公連立が政権を維持できる公算が強まっている。
 安倍は野党の体たらくについて「新しいブームからは何も生まれない。政策こそが未来を切り開く。愚直に政策を訴える」と強調している。これは選挙戦の王道を行く姿勢であり、行き当たりばったりで野合を繰り返そうとしている希望などとの違いを鮮明にさせている。安倍の解散戦略は野党にくさびを打ち込み、そのうろたえぶりからいって成功の部類に入りそうだ。
 しかし、注目すべきは枝野の立憲民主党だ。革新であるはずの民進党の大勢が保守の希望の党へと臆面もなくひざまずくなかで、リベラルを屹立させている。泣きの涙で枝野が結成に結びつけたにもかかわらず、リベラル勢力の“核”となりつつあるからだ。リベラル系の希望への逆襲が立憲を軸に始まろうとしているのだ。社会党から連綿と続く左派勢力が西南戦争の西郷隆盛に集まった行き場のない浪人達のごとく、集まりだしたのだ。ツイッターでのフォロワーの数は2日間で10万人に達しており、12万人の自民党に迫る勢いだ。もっともツイッターのフォロワーは政党支持率ではないからそのままの勢いが出るわけではない。立憲は既に候補者を50人近く確保しており、まだ増える可能性がある。これに左翼総本山の共産党が“すり寄り”はじめており、枝野の選挙区埼玉5区の候補を降ろし、エールを送った。逆に同選挙区には希望が刺客を送るから行ってこいではある。しかし、左翼リベラルの結集といっても容易ではない。民進支持母体であった労組連合が共産党との共闘には反対の路線をとり続けているからだ。その連合は政党支持をどうするかで八つ裂きの刑を受けるかのようであり、特定政党は支持できず、結局、希望、立憲、無所属に票が分散する流れだ。
  一方小池の場当たり選挙は佳境に達しているようである。まるで好き嫌いで公認を決めているかのようだ。例えば、自らの都議会の与党勢力である公明党が立つ9選挙区では候補は立てない。都議会与党を維持したいのであり、ここからも小池自身の立候補はないのだろう。また同期当選で仲のよい自民党の鴨下一郎の地盤東京13区には立てない。民進の野田佳彦、岡田克也、安住淳、江田憲司らの選挙区には立てず、選挙後の連携の可能性を残す。そうかと思うと自民党の下村博文、萩生田光一の選挙区には30代の女性候補をぶつける。落下傘候補による空中戦だ。自民党との象徴的選挙に持ち込む戦略だ。この小池の公認作戦には主義主張に基づく整合性などあらばこそであり、なりふり構わず選挙に勝ちたいという「野望」だけが目立つ。小池の希望は9割くらいが議員バッジ欲しさに「議席」にすがりつく節操のなさをあらわにしている面々だ。小池の言葉も「排除の論理でリベラルは入れない」「民進党の全員受け入れなどさらさらない」と、まるでトランプに絶対勝つ秘策を知っているスペードの女王のように権勢をほしいままにしている。小泉進次郎が「小池さんは出ても出なくても無責任。出たら出たで都政を投げ出して無責任。どっちの無責任を取るかということ」と正論を述べたことがよほど口惜しかったと見えて「キャンキャン言っている」とこき下ろした。
  こうして小池には相当な逆風が吹き始めているのだ。さすがの民放のトーク番組も持ち上げてばかりはいなくなった。小池は都知事選や都議選の夢よもう一度とばかりに衆院選に打って出たのであろうが、衆院選で首班指名に誰に投票するかがあいまいなままというのは、政党政治のイロハを知らない。そこには3度目の夢とはほど遠い状況が展開している。
 こうした中で目立つのは自公の落ち着いた選挙戦だ。野党のようなしっちゃかめっちゃかな対応はなく、雑魚が一匹逃げただけで新党問題で動揺は見られない。5日付けの朝日の調査ですら比例区投票先は自民35%、希望12%で立憲、公明が7%だ。この段階で希望との差が大きく出ているのは、もうこのまま与党側に大失言でもない限り終盤戦に向かうということかも知れない、野党の分裂は自民党に漁夫の利をもたらしているのだ。

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