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T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」浅野勝人

検証・・・T君への手紙 ― 「奢れるもの久しからず」
ー2017/10月5日、安保研ネット掲載。総選挙公示5日前
安保政策研究会理事長 浅野勝人

T君、総選挙いよいよ10日、公示ですね。
東京都議選で自民党が惨敗した後、お目にかかってお昼に天丼食いながら、「都議選の小池百合子は怖かったが、国政選挙の小池は怖くない」と申し上げた私の見解が当たりそうな気配ですね。

都議選の折、多くのマスコミが世論調査、その他の情勢を分析して、自民党は減っても30議席台と踏んでいたのに、T君ご承知の通り、私は20議席そこそこと予測しました。結果は19議席でみんなびっくり仰天でした。
種明かしをしますと、「都民ファースト」が全員当選すると予測して、民進党も減る。共産党が増える。公明党は現状維持。これを総合して逆算すると自民には20議席位しか残らない。結局、「都民ファースト」で落選したのは1人だけだったので、大当たりしたという仕掛け。

都議選で勝利の女神だった小池百合子が、国政選挙で輝くのは無理と推測した理由(わけ)は、
あの方は、どの選挙も「大統領選挙」と勘違いしている。
だから、小池人気が、全国津々浦々、衆議院小選挙区に行き渡り、特に比例区では圧勝して、都議選の再現となる。総理大臣就任も夢ではないと錯覚してしまう。

自民党内では、外交・安保政策に関して右派の論客だったから、時間の経過とともにその地金が滲(にじ)み出る。そうなると、右派の安倍晋三と同質なことが改めてわかってしまうので、「政権選択選挙」という唯一の訴えが売り物にならない。小池を支える膨大な無党派層が失望して離反する。
その証拠に、党公認に際して民進党リベラル派を除外する表現を「全員公認するつもりはさらさらない」と失言して馬脚を現した。

このひと言は重い。選挙戦を左右する重大なミスショットと予言しておきます。いや、ミスショットではなくて、「本音」を最悪な言葉使いで表現した。有権者は容易に「小池百合子の本音」と見破るから、このひと言で「希望の党」は失速する。非自民の有権者に、「第2自民党」は要らないと映るからです。

つまりは、安倍自民党と対峙することによって人気を倍増するつもりが、まるで補完勢力と映って当初の意図が崩れてしまいました。
だから、出馬の可能性を匂わしていた姿勢から一転して「不出馬」を明言して逃げました。どうやら思惑が外れかねないとみて「私自身は出ないと最初から言っている」と苦し紛れのウソを言わざるを得なくなりました。
与党をめざして「希望の党」を立ち上げた政党の代表・党首が、自身は出馬しない。国会の首班指名を目指さないという人がいたかどうか、憲政史上の事例をどなたか調べて教えて下さい。( 選挙の結果 ― 220人余立てて当選49人。当選率20%。惨敗 )

これに比べて、安保法制、憲法9条改正に反対する基本姿勢を堅持して筋を通し、自民党との対決を鮮明にしている「立憲民主党」の候補者と「希望の党」への参加を避けて「無所属」で出馬する前民進党の候補者が、非自民票の受け皿になる可能性が強まります。( 選挙の結果 ー 80人立てて50人当選。当選率60%。躍進)
選挙後の野党再編は、立憲民主党を立ち上げた枝野幸男を軸に小ぶりな勢力からの再出発になると思われますが、候補者を降ろして立憲民主党に選挙協力をした共産党は無視できない存在になります。
現役時代、議員会館の部屋が隣同士だったから褒めるわけではありませんが、小池晃が書記局長になってからの共産党は柔軟でいい。


T君、安倍自民党の不人気は、君の想像をはるかに超えています。私の周りでも、まさかと思う方が「今回は自民党には投票しない」と明言して驚かされます。
T君も当初は肝を冷やしていたでしょうが、小池百合子のおかげで、野党が「馬糞の川流れ」(政治勢力がバラバラになって求心力を失う様子を金丸信らしい表現で言った)となりました。
自民党が、近年、厳しく批判されている傲慢な政治姿勢を反省して、国家、国民の平穏と繁栄に真摯に取り組む姿を示せば、情況は好転。わずかな減員ですみそうです。( 選挙結果―4人減って280人当選。現状維持 )

二階幹事長は、大軍の将ですから、自信を持ってもっとはっきり発言した方がいい。
「世の中のために政治家が要(い)る。政治家のために世の中があるのではない」(思いあがるな)と明確な小池批判をする。
「国会で戦争法案反対と言っていた人たちが、政党を変わったら賛成という。我が党にとっては有り難いが、有権者の方々がそれを許すだろうか」とはっきり批判して、野党の中では一番強いと予測されている「希望の党」の票を離散させる戦術が重要です。(結果は野党第2党)

私は、来週から中国です。11回目になった北京大学での講義。それに北京外国語大学大学院、首都師範大学へ講義にまいります。選挙前に決まっていた日程ですから出かけますが、投票日前には戻ってまいります。
T君、加油! 加油! (2017/10月5日)

(22日、台風の中で総選挙終了)
T君、お互い予測はドンピシャリでしたが、何のためにやった選挙だったのか私には今でも理解不能です。勝つためにやって、小池百合子のミスショットで勝ったから、安倍晋三は結果オーライだったと理解すれば、それでいいのでしょうか。 

莫大なお金とエネルギーを費やして選挙をやって、世の中のために何がどう変わるのか、変わらないのか、何も無い。立憲民主党の当選者50人の内35人が前職以外の新らしい人だったというだけで、無所属を含めて各党とも、ほぼ全員選挙前の顔ぶれがそっくり再選されただけのことです。政策も顔ぶれも何も変わらない。野党に「馬糞の川流れ」現象が起きて、日本の政治を退化させただけでした。

T君、自民党は、現状維持をして自・公与党で300議席の大台に乗せて事実上の大勝利でした。但し、競争相手の票が二分され、比較多数で有利な情況が造られた敵失による勝利に過ぎないことを忘れないでください。

議会制民主主義、主権在民の根幹を理解していないほどの政治家の劣化。政党助成金をめぐって右往左往するほどの政党政治の劣化を招いたのは「衆議院小選挙区比例代表・落選者救済制度付きシステム」によります。世界に類のない悪法です。選挙は1票でも負けたら負けです。

安倍政権は、ことによったら佐藤栄作政権を越える長期政権になると思われます。
安倍首相のやるべき第1の課題は、もともと選挙制度の改正を強行することでした。衆議院を定員3人の中選挙区、全国100選挙区に改正する。公明党を含めて、賛否が政党によって入り乱れますが、自民党の過半数で押し切ることができる。2/3は要らない。
安定した政権の持続と何よりも有能な新人議員が、選挙ごとに1/4を占めて、もう一度政界に人材が集まります。(2017/10月23日、元内閣官房副長官)

◎俳談

◎俳談
【夏は来ぬ】
山の子の合唱遠く夏は来ぬ     毎日俳談入選
 夏は来ぬは佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲の日本の唱歌である。2007年に日本の歌百選に選出されている。卯の花、ホトトギス、五月雨、早乙女、タチバナ、ホタル、クイナといった季語が満載で、初夏を彩っている。掲句は山の子が唱歌「夏は来ぬ」を歌っているのか、それとも作者が「夏が来た」と言っているのか判然としない。<山の子の合唱遠く/夏は来ぬ>と切れを入れれば作者が言っている方だが、どちらとも受け取れる。筆者はどちらでもいいと思う。
なぜなら誰でも知っている唱歌の風情を一句に活用しようとしたことは確かであるからだ。

◎勝ったからこそ「平衡の感覚」が不可欠

【筆者より=ソネットの障害により掲載が遅延しました。今後は常に障害のないブログhttp://suginoko.progoo.com/bbs/でご覧になることをおすすめします。将来的には

当ブログを廃止しブログを一本化します。早めにお気に入りに追加願います】

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◎勝ったからこそ「平衡の感覚」が不可欠
  明治以来一位の長期政権も視野に
 第一の勝因は極東情勢の激変
 史上最長の「天孫降臨景気」も
  86年に衆参同日選で大勝したとき中曽根康弘は、「自民党は左にウイングを伸ばした」と発言したが、安倍自民党による5回にわたる国政選挙の大勝は自民党が農村型政党から完全に脱皮し、都市型政党としてのポジションを確立したことを意味する。都市化の波は農村部対都市労働者対峙の構図を崩壊させ、自民党の左ウイングを固定させた。歴代まれに見る長期政権が視野に入り、戦前戦後を通じて7年8カ月で2位の佐藤栄作はもちろんのこと、7年11カ月で1位の桂太郎をも抜いて歴代1位の政権まで見通せるようになった。来年9月の自民党総裁選で3選されるということは、これまでの5年間に4年をプラスすることになるからである。今後政治的には首相・安倍晋三は、日本全体を俯瞰しつつsense of  proportion(平衡の感覚)を堅持した政権運営が求められる。
 敵対する論陣を張って選挙を自民党不利に導こうと散々苦闘した朝日は、顔面蒼白紙面であった。一面で「安倍一強の変化を求める変化の兆しが見えた」と書いたが、事前に行った各種の世論調査をよりどころにしても科学的でない。最大でもっとも正確な世論調査は総選挙であるからだ。安倍政権の普段の努力が何よりの支持獲得に結びついたのである。加えて、希望の党代表の小池百合子と民進党代表の前原誠司の“政略至上主義”は、有権者が見事に見破った結果となった。小池は厚化粧の化けの皮をはがされたのだ。立憲の躍進も、あまりの与党の強さに判官びいきがあったからに過ぎない。将来的には社会党系野党は消滅の流れをたどる。
  今回の場合、有権者が左ウイングを強化、固定した第一の理由は激変する極東情勢にある。中国の一国至上主義と北朝鮮の横暴を抱える極東において、如何に国民の生命と財産を守り続けるかという困難極まりない課題は、安倍政権でなければ克服できないと有権者は判断したのだ。北朝鮮の異常な指導者が繰り返す核・ミサイル実験が佳境に達しようとしているなかで、多くの国民が、これに対応できるのは自民党政権しかないと判断したことにどう応えるかである。安倍政権としても北が狙うどう喝による「極東支配」を座視するわけにはいくまい。米国と共に「力による抑止」政策を維持して暴発を防ぐことが最大の責務であろう。
 安倍は間違ってもトランプに戦争に突入させてはならない。なぜなら、たとえ北の政権を壊滅させることが出来ても、1発でもミサイルが東京に落ちれば戦争は「敗北」なのである。米国が練り上げている作戦の1つは北の中枢、国境沿いの通常兵器、核ミサイル基地などを、爆撃や巡航ミサイルで一挙に叩き潰すものだと言われるが、苦し紛れの北のミサイルでソウルと東京が火の海ばかりか毒ガス、細菌汚染まみれになる可能性は否定出来ない。米国に打撃を与える核ミサイルはまだ完成されていないから、何をしようと米本土は安全とトランプが考える危険は計算に入れなければならない。第二次朝鮮戦争の構図ははじめから成り立たないと安倍は見るべきであろう。安倍は来月5日のトランプとの会談で刺すべきクギは刺さなければなるまい。基本戦略は軍事圧力や金正恩暗殺などによって北の政権を崩壊に導くことであり、そのためにも自民党が主張する敵基地攻撃能力も保持すべきであろう。専守防衛の時代は大きく転換させなければならない。その第一歩が敵基地攻撃能力なのである。保持することにより北への圧力は格段に向上する。
 一方、北の暴走に勝るとも劣らないのは5年ぶりの共産党大会で、習近平がその独裁色を一段と強化しようとしていることだ。党大会を見る限り、中国は民主化などという言葉をかなぐり捨てて、ひたすら習近平の下に力を集中、中国を社会主義国家として完成させようとしている。その政治報告で際立つのは①共産党結党から100年の2021年に向けて社会主義の近代化を実現させる②中国建国から100年の2049年までに社会主義近代化強国を作り上げる③同時に軍隊を世界一にするというものだ。
 これらの方針は米国などにあった「半世紀もたてば中国は民主主義国になる」とする予想を覆し、民主主義と対峙する理念の国家へと邁進する方向を強めたことを意味する。驚くべき事は習近平が「中華民国が世界の諸民族の中でそびえ立つ国になる」と言ってのけたことだ。これはかつての中国王朝がそうであったように、世界的な規模での覇権を目指すことを意味する。習近平は南シナ海における軍事拠点建設を誇らしげに成果として強調したが、まさにスターウオーズのアンチヒーローである「ダース・ベイダー」的な存在になろうとしている。その臆面もない覇権主義からみれば、東シナ海への進出も今後激しさを増すとみなければならない。
 このような中国の一国至上の覇権主義は、好むと好まざるとにかかわらず安倍政権時代に顕著なものへと発展し、極東における民主主義大国日本とダースベーダーに率いられる社会主義大国中国の政治的対峙の構図は強まるだろう。もちろん米国もやがてはこの構図に気付き、米ソ対決の冷戦時代に似た構図が東アジアで生ずる可能性も否定出来ない。幸い安倍はトランプと極めて親しい関係を築き上げており、日米で中国の膨張をけん制する流れが生ずるだろう。
 一方、経済面ではアベノミクスが絶頂期に入ろうとしている。安倍政権の12年12月に始まった景気回復は今年9月まで回復していれば、65年11月~70年7月までの57カ月間に及んだ「いざなぎ景気」を抜いているだろう。今後は2000年までオリンピック景気がこれに上乗せされるから、史上空前の「天孫降臨景気」も夢ではない。雇用は史上初めて1人に対して正社員の有効求人倍率が1に達した。希望すれば正規社員になれる時代となった。東京での倍率は2であり、全国的にも1.5と好調だ。しかし、ここに来て経済界に“慢心”とみられる不祥事が出始めた。神戸製鋼所や日産自動車で発生した品質管理をめぐる問題だ。安倍は22日「優れた日本のものづくり、失われた信用を取り戻すべく、政府と産業界一丸で取り組んでいきたい」と述べたが、蟻の一穴から崩れないとも言えない。徹底した行政指導が必要だろう。
 国会運営は「勝って兜の緒を締めよ」であり、「実るほど頭を垂れる稲穂かな 」でもあろう。慢心してはならない。とりわけ不祥事多発であった前二年生議員など若手議員の問題が気になる。昔は派閥が教育の役割を果たしたが、今後は党が議員のイロハからマスコミ対策まで徹底した教育を3か月にわたってし直す必要があるのではないか。改憲問題も、可能になったからこそ、一部でも野党が入る形で広い合意を目指す方がよい。原発問題は5回目の支持獲得であり、安全基準を達成すれば稼働を推進すべきであろう。