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「相撲協会、横審 有って、力士無し」でいいのか! 浅野勝人

「相撲協会、横審 有って、力士無し」でいいのか!

大相撲九州場所(2017/11月12日~26日)

初日、白鵬上手出し投げで琴奨菊 転倒。

「まったく不安なし。このまま平常心で前進! 前進! 浅野勝人」

「メールありがとうございます。心が落ち着きます。白鵬翔」

場所前の10月25日、夜、巡業先の鳥取市内で行われたモンゴル出身力士の懇親会の席上、横綱・日馬富士が幕内貴ノ岩をビール瓶で殴打して怪我を負わせる事件が起きました。
被害届を受理した鳥取県警が捜査に着手しました。
同席していたモンゴル・グループの「長」の立場にある白鵬の対応はどうであったか、問われます。

「和田さん、警察の捜査で事実が明らかになりますから、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ”という態度がよろしいのではないでしょうか。それ以外、場所中でもあり、白鵬は事件についてしゃべらない方がいいと思います。浅野勝人」(11月16日)

「ビール瓶では殴っていないとマスコミに話したようですが、今後は沈黙を守ると思います。
報道が先行して事態を複雑にしています。事実関係が肝心な点で報道とは異なるようです。
ビール瓶を握ったけれども滑り落としてしまったようです。ビール瓶で殴っていたら、血だらけになって頭蓋骨を骨折しかねない。カラオケのリモコンと平手で何発も殴ったが、馬乗りになったということもないらしい。白鵬は暴行を止めて、日馬富士を別の部屋に連れ出して事態を収めたようです。どうであれ、暴力は許されません。和田友良」(註:和田友良は白鵬の義父、浅野の友人)

白鵬翔に

「各種の取材に対しては、“ 警察から事情を聴きたいという要請があれば、ありのままを話します ” これ以外のことは何も言わない。もっぱら取組、勝負に集中する。この対応がよいのではないでしょうか。浅野勝人」(11月17日)

「正(まさ)しくその通りです。そう思います。白鵬翔」

14日目、40回目の優勝決める。自らを信じていっさい動ぜず。不動の取り口。

「おめでとう!今場所の優勝はことのほか意義が深い。
☆力士としての限界(再起をかけた場所でした)を無限にしました。
☆力士からの“ 物言い ”(嘉風との一戦)の正当性を、優勝することで示しました。浅野勝人」

ところで、日馬富士暴行事件で影が薄くなってしまいましたが、11日目、< 関脇 嘉風 寄り切り 横綱 白鵬 > 奇妙な取り組みがありました。
組んだ直後、嘉風の突きに白鵬が客席のど真ん中まですっ飛ばされました。その直前、土俵上の白鵬は右手で「待った」の合図をして、相撲を取るのを止めていました。嘉風自身「横綱は力を抜いていた」と述べています。そうでなければ、今の白鵬が小柄な嘉風のひと突きで突き飛ばされることはあり得ません。

白鵬は、土俵下で立ち合い不成立を主張して、物言いのしぐさをし、得心のいかない取組を行司と検査役に「相撲が成立していない」とアピ―ルしました。
相撲協会は、物言いを付ける権利の無い力士が自分の勝手な判断で抗議をして、負けを認めない態度は潔くないと審判部から横綱に厳重注意をさせました。

競技選手がゲーム中、審判の判定や相手選手のプレーに誤審ないしは強い不信を抱いて抗議し、プレーの見直しをアピールするのを一切禁止しているスポーツがあるでしょうか。どのスポーツでも、審判が抗議を採択するか、拒否するか、その場で明示して選手の納得を得る努力をしています。ボクシングでも重大な誤審の疑義があれば、再試合を指示しています。

あの場合、白鵬に対して、立ち合いは成立しており、物言いは不成立と検査役の判断を会場で説明すれば済むだけのことです。もし、判定に従わなかったら、退場を命じ、厳しい処分の対象にすればいい。そのくらいの選手(力士)の気持ちに沿う制度改革をしてもよろしいのではないかと思います。力士は命がけで勝負しているのですから「力士重視」は当然の配慮ではないでしょうか。
相撲協会は、何事、旧態依然のままと見受けられます。

優勝力士インタビューで、白鵬が暴力事件に関連して「膿(うみ)を出し切って、日馬富士にも貴ノ岩にも土俵に戻ってきてもらいたい」と胸の内を述べ、合わせて連日の満員御礼の盛況に感謝して、大相撲の一層の発展を願って観客と一緒に万歳をしました。この行為について、横綱審議委員会は力士ごときの出過ぎた言動と決めつけて、理事会に処罰するよう求めました。これでは暴力を振るった日馬富士を厳罰に処するよう諮問したのと同じではないですか。横綱審議委員会は何を考えているのか、横審は大相撲の旧(ふる)き良き伝統を守る一方、時代にそぐわなくなった相撲協会のシステムを改革するのが使命のはずです。これでは「無用の長物」だ。
白鵬の言動は、優勝力士としての個人の思いに過ぎず、警察の捜査や理事会の判断とは異なります。白鵬が何を言おうが、日馬富士は引退したし、それに関係なく警察は厳正な捜査を徹底します。
大相撲を背負っていると内心自負しているアスリートの慈しみの表現を汲んでやるわずかばかりの思いやりが、協会にも横審にもまるでないのは誠に残念なことです。

肝心のマスコミも、
「負けた後に取組をした力士には権利のない“物言い”を付けるしぐさをし、なかなか負けを認めず土俵から下がらなかった。他の力士は横綱の行為をまねるものだ。反省を求める」(朝日新聞)
まったく真意を理解していないコメントです。
勝負に命を懸けている選手が、誤審や納得しがたいプレーについて質すスポーツ選手としての「力士の権利」を主張したかったことがまったくわかっていない。負けたのを認めない潔さに欠ける行為としか理解していない。これでは相撲協会の旧い体質を外から改革するオピニオン・リーダーとしての期待はもてません。

白鵬は、また一人横綱で大相撲を背負い、自分との果てしない戦いの旅を続けることになるのでしょうか。
私一人くらい「心の理解者」がいてもいいでのではないかと淋しく思っています。
(2017/12月1日、元内閣官房副長官)