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◎TPPが日米首脳会談の「影のテーマ」に

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◎TPPが日米首脳会談の「影のテーマ」に
 米紙トランプ翻意の可能性を指摘
   安倍は対中戦略からトランプ説得を
 5日からの日米首脳会談の「影のテーマ」になりうるのが環太平洋経済連携協定(TPP)だ。会談は対中関係をにらんで「合意」に重点を置かなければならないから、両首脳とも日米間で唯一の食い違い要因がクローズアップすることは避けたいのだろうが、それで済むのだろうか。問題は首相・安倍晋三がトランプを如何にして説得するかだが、公表するしないは別として、筆者は搦手(からめて)戦術がよいと思う。搦手戦術とは首脳会談の基調が日米の対中共同歩調に置かれる流れの中で、TPPの政治的な側面を強調することだ。「中国封じ込めのためのTPP」の側面を強調して、安倍が説得すべき機運が米国内でも生じつつあるように見える。
 選挙公約と自動車業界などのごり押しをうけてトランプは就任早々 の今年1月23日、TPPから「永久に離脱する」と明記した大統領令に署名しした。米国通商代表部はTPP離脱を通知する書簡をTPP事務局を務めるニュージーランドと日本などTPP参加11か国に送付した。普通ならばこれで打開の余地がないように見えるが、11か国の間では米国復帰の可能性に期待をつなぐ空気が残存している。日本が、現在進められている11か国交渉をまとめ上げようとしているのも、その期待が一つの要素となっている。。
 事実、米国のマスコミも依然としてTPPへの復帰論が圧倒的に強い。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は8月2日の社説で「米国の対日輸出をすぐ拡大させる最も確実な方法はTPPへの復帰だろう。そうすれば輸入食品に課される日本の関税は低くなる。貿易協定は安倍首相にとって日本経済を浮揚させる有効な手だてでもあり、景気が良くなれば輸入品の消費が増える」と書いた。同紙は10月6日にも「TPPはトランプ政権が1月に脱退を表明したにもかかわらず、勢いを盛り返している」と指摘した。さらに記事の注目すべき点は「各国指導者はドナルド・トランプ大統領の時代にTPPがなお重要性を増すと認識している。11か国共通の目標は、米国がアジアで影響力を発揮するためにTPPは不可欠であると米国に納得させることだ。残る11か国が米国の復帰を粘り強く求めるならば、トランプ氏が大仰な保護主義論を封印し、理性に基づく米国の利己主義を優先することもあり得るだろう。」とトランプが翻意する可能性に言及している点である。またニューヨークタイムズ紙もかつて「TPPの撤退は中国を勢いづける」と題する社説を掲載。トランプについて「中国を貿易と通貨の問題で非難することや、半世紀にわたる日韓との同盟関係を守る必要性に疑問を投げかけること以外、アジアに少しも興味を示していない」とし、「深刻な間違いだ」と批判。TPPへの参加は経済にとどまらず、アジア諸国と米国の強い結びつきを証明することになると指摘している。
 確かにTPPには政治的な側面が色濃く存在している。米国の離脱は中国がリーダーとして推進するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の政治的な意味合いを強め、中国の国際経済における地位を格段に高める流れを作り出しているからだ。中国は米国のTPP離脱を奇貨として、TPPが空中分解することを期待し続けている。環球時報は「日本が独自にTPPを推進することは困難だ。身の程知らずでもある」と、批判している。果たして身の程知らずであるかといえば、浅薄さが極まった見方としか言えまい。やがて“吠え面をかく”のは同紙であることが分かる。
 というのも30日から浦安で開催されている11か国の会合に大筋合意の光りが見えてきたからだ。価格高騰を招いた外国人によるニュージランドの中古住宅の購入の禁止を要求していたアーダーン新政権が、「再交渉が必要」としてきた見解を改め、問題の国内処理の方向に転換したからだ。これは11か国によるTPPの批准に追い風となる。既に筆者が書いたように、米議会の諮問機関はTPPが発効しないでRCEPが発効した場合には、中国が濡れ手にアワで勝ち取る経済効果は880億ドル(約9兆6千億円)に達するという。逆にTPPが発効してRCEPが発効しなかった場合には中国の経済損失は220億ドルに上る。みすみす鳶に油揚をさらわれるところであったが、どうやら流れはまとまる方向のようだ。日本は11月にベトナムで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に合わせてTPP発効に向けた大筋合意を目指す。ニュージランドも異存が無いと表明した。
 こうした、流れは冒頭指摘したトランプの離脱方針に少なからぬ影響をもたらすのではないかと期待される。問題はトランプが振り上げたこぶしを降ろすかどうかだ。世界の指導者の中で一番親しい安倍が、対中戦略の側面から懇々とさとせば何らかの効果が出るかも知れない。トランプがかたくなに離脱に固執しても、4年の任期までにあと3年だ。38%という低支持率や尾を引くことが確実視されるロシア疑惑が影響して、再選されない可能性もある。TPPの大局から見れば、3年先はそれほど遠くはない。いずれにせよ、TPPが日本のリードで11か国がまとまり、菊池寛ではないが「父帰る」を待つ路線は正しい。

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