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◎野党質問は“冷め切ったピザ”だ


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◎野党質問は“冷め切ったピザ”だ
  形骸化した党首討論はもうよい
 イギリス議会における二大政党のクエスチョンタイムをモデルにして、日本でも1999年7月に党首討論が開始された。内閣総理大臣小渕恵三に対して民主党代表鳩山由紀夫が行った質疑が草分けだ。鳩山は「きょう総理は朝何を召し上がったでしょうか。私は、けさはピザを食べてまいりました。」と質問。小渕は「いつものとおり日本食の食事をいたしてまいりました。温かいピザを食べられたということでありますが、アメリカのオルブライト国務長官から以前、冷たいピザもまたおいしいと言われたことがあります」と皮肉った。ニューヨーク・タイムズが取り上げて小渕を「冷めたピザ」と評したことから有名になった。30日の首相安倍晋三と野党の質疑を聞いたが、野党の質問は既に出た話しの繰り返しで「冷め切ったピザだ」やめた方がよい.
 とりわけ立憲民主党代表の枝野幸男の質問は、何ら進展のないモリカケ論争に終始した。従来と同じ質問を繰り返す枝野の姿勢には、「もういいかげんにした方がよい」という茶の間の声が聞こえるようであった。片山虎之助が「もう党首討論のあり方を全面的に見直した方がいい」と述べているがもっともだ。
 枝野は安倍が「贈収賄では全くない」と答弁したのをとらえて、「急に贈収賄に限定したのはひきょうな振る舞いだ」とくってかかったが、贈収賄でなければなぜ追及するのか。安倍も夫人も潔白が証明済みであり、贈収賄でもない事柄を性懲りもなく過去1年半にわたって繰り返し追及する方が、重要な国会論議という資源の無駄遣いをしているのではないか。枝野は「金品の流れがあったかどうか。森友問題の本質とはそういうことだ」と断定したが、大阪地検の捜査からも政界を直撃する問題は、何も出てきそうもないではないか。贈収賄があるがごとく国会で発言する以上、金品の流れの証拠を提示すべきだろう。
 枝野に比較すれば外交問題を取り上げた国民民主党共同代表の玉木雄一郎のほうが聞き応えのある質問をした。安倍からプーチンとの個別会談について「テタテでは平和条約の話ししかしていない」との答弁を引き出したのは1歩前進であった。
 総じて論戦は野党の焦点が定まらないため深まらず、開催意義そのものが問われる結果となった。当初は英国議会の例にならって2大政党の党首による政策論争を想定したが、現状は少数野党の分裂で、質問時間も立憲民主党19分、国民民主党15分、共産党6分、日本維新の会5分と細分化された。野党は自己宣伝が精一杯であり、まともな質問をしにくい傾向を示している。
 枝野は「追及から逃げるひきょうな姿勢」と「ひきょう」という言葉を何度も繰り返すが、こういう質疑の構図が生じたのはひとえに野党の議席減という自ら招いた結果であることを忘れるべきではあるまい。終了後、枝野はただ一ついいことを言った。「党首討論は歴史的意味を終えた」である。確かに与野党党首の真剣勝負の場は形骸化した。野党も分かっているなら開催要求をすべきではない。国会にはちゃんと予算委員会という総合質疑の場があるではないか。あれもこれもと要求しても、あぶはち取らずが関の山だ。
◎俳談
【俳句と政治家】
 政治家の俳人で本物は大野伴睦と藤波孝生だろう。俳号「万木」の大野が保守合同の立役者三木武吉を詠んだ句が
三木武吉涼しく痩せて眉太し  万木
人物描写の句は珍しいが、秀逸である。「涼しく痩せて」はなかなか言えるものではない。
 政治家には運不運がつきものだが、中曽根康弘と死んだ藤波孝生ほど際だつものはない。藤波の俳号は孝堂(こうどう)。
両人とも俳句をやるが性格はその作に如実に現れている。
暮れてなお命の限り蝉時雨 康弘
控えめに生くる幸せ根深汁 孝堂
 中曽根は首相になって藤波は官房長官にとどまったが、ライフスタイルが天と地の開きがあった。
 俳句の通りに中曽根は日がとっぷり暮れたのにもかかわらず、あちこちでうるさく鳴き続けた。まさに「生き強い」人間の典型である。しかし俳句の方は中曽根の創作ではあるまい。芭蕉の
やがて死ぬけしきは見えず蝉の声
のパロディーと言ってよい。プロならその類想性をすぐに看破する。それでも中曽根は
したたかと言われて久し栗をむく
だそうだ。
 一方、藤波はリクルート事件の波をもろにかぶった。一部に総理大臣候補だとされていたと言うが、盟友竹下登のリップサービスが作った虚像の色彩が濃い。本人はその意欲もなく、能力もあったかどうかは疑わしい。控えめに生きて中曽根の補佐をするのが幸せな部類の政治家であった。しかし俳句だけは政界では大野と並ぶ一流だろう。

◎米朝会談へ向け動き急

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◎米朝会談へ向け動き急
 金正恩側近がNYで事前協議
 韓国に「終戦宣言」構想
 6月12日の米朝首脳会談に向けて鼎(かなえ)が煮えたぎってきた。ニューヨーク、板門店、シンガポールの3個所で接触が進展、大詰めの協議が展開されている。焦点は北が「非核化」にどの程度応ずるかにかかっている。米朝ともあきらかに首脳会談前に重要ポイントでの合意を目指しており、一連の会談の焦点は米国で開かれることが予想される労働党副委員長の金英哲と国務長官ポンペオの会談に絞られそうだ。まさに北朝鮮の金正恩は自らの体制維持、しいては国家の命運をかけた、選択を迫られつつある。
 一連の会談を通じて米国は北に対して「核兵器の国外への搬出とともに、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)を完了すれば北の体制を保証する」との立場を伝達するものとみられる。さらに「北朝鮮のすべての核関連施設に対する国際機関による自由な査察を認め、全ての核を廃棄する」ことを要求。これに対して北は「米国が望むレベルの非核化を実現するには、米国の確実で実質的な体制の保証が必要だ」と金正恩体制の継続を要求するもようだ。また北は非核化に合わせた制裁緩和や国交の正常化などを要求しており、対立は解けていない模様だが、一方で融和の流れがあることは無視できない。
 金正恩の外交を補佐してきた金英哲は、おそらくニューヨークで ポンペオと会談することになろう。北朝鮮の高官が米国を訪れ政府要人と会談するのは2000年に国防委員会第1副委員長趙明禄がクリントンと会談して以来のことだ。トランプが金英哲の訪米を明らかにしており、おそらく表敬訪問を受けることになるかもしれない。板門店では駐フィリピン米大使のソン・キムが外務次官崔善姫と会談して、首脳会談の議題を詰めた模様だ。
 こうした中で韓国大統領文在寅は「早期終戦宣言」の構想をトランプに伝えたようだ。同構想は米朝首脳会談後に韓国、北朝鮮、米国の3国で現在「休戦」状態にある現状を「終戦宣言」に持ち込もうと言うものだ。文在寅は「米朝会談が成功すれば南北米3か国首脳の会談を通じて終戦宣言を採択すれば良い。期待している」と言明した。文にしてみれば非核化をめぐって駆け引きが激化している米朝双方を説得するためのカードとして宣言を使いたいのだろう。
 文在寅がこうした軟化姿勢を取る背景には26日に予告なしで行われた南北首脳会談がある。この席で金正恩は「韓半島の完全な非核化の意思を明確ににして、米朝会談を通じて戦争と対立の歴史を清算したい。我が国は平和と繁栄に向けて協力するつもりだ」と述べたという。仲介役の文に対してトランプは「金正恩氏が完全な非核化を決断して実践する場合、米国は敵対関係の終息と経済協力に対する確固たる意思がある」旨伝えているようだ。
 こうして米国は当面北朝鮮に対する制裁強化を見送る方針を固めた。米国はこれまでロシアや中国を含む約30の標的に対して大規模な制裁をする方針を固めていたといわれる。米当局者によれば、ホワイトハウスは当初29日にも北朝鮮に対する追加制裁を発表する予定だったが、首脳会談をめぐる協議が続く間は実施を延期することが前日になり決まった。
 こうした米朝和解ムードの中で米政界では慎重論が台頭している.
前国家情報長官ジェイムズ・クラッパーは「北朝鮮は彼らの典型的な『二歩前進一歩後退』の行動様式を見せている。北朝鮮が考える『非核化』が太平洋での米軍戦略兵器の縮小を意味するということが心配だ」と懸念を表明した。また共和党上院議員のマルコ・ルビオは「金正恩朝鮮労働党委員長は、核兵器に病的に執着してきた。核兵器が正恩氏に今の国際的地位を与えた。これが北朝鮮の非核化を期待できな
い理由だ」と強調。元中央情報局(CIA)長官マイケル、ヘイデンは、「首脳会談の結果で北朝鮮のすべての核兵器をなくすことは不可能だ。トランプ氏は会談で不利益を被ることになるだろう」と見通しを述べている。さらに注目すべきは元在韓米軍司令官バーウェル・ベルは、「在韓米軍の撤収を目的に北朝鮮と平和協定を締結することは、『韓国死刑』文書に署名することと同じだ」と強く警告した。そして、「強大な北朝鮮軍兵力が非武装地帯のすぐ前にいる状況で米軍が去るなら、北朝鮮は直ちに軍事攻撃を通じて韓国を占領するだろう」と予測している。
 韓国大統領府は文在寅の金正恩との会談やトランプとの会談で、極東情勢が大きく前進したと判断し、和解への道筋が立った段階で米朝間の相互不可侵条約と平和条約の締結へと事態を進めたい気持ちのようだ。これが実現すれば極東情勢は大きく緊張緩和へと進展するが、北が狡猾にも世界を欺いてきた歴史は歴然としており、楽観は禁物だ。
◎俳談
【諧謔味】
 大和市にある泉の森公園は野鳥が多く、カメラに超望遠レンズをつけて撮影に行くと必ずなにがしかの収穫がある。過日に野生のハトの群れが飛ぶのを撮影していたら、突然急降下して筆者の頭上すれすれを猛スピードで飛び過ぎた。何事かと思ったら大鷹だった。大鷹が群れの中の一羽を狙って襲いかかったのだ。絶好のチャンスとばかりにレンズを大鷹に向けたが、フォーカスできなかった。ハトは皆無事であった。
 写真には撮れなかったが、網膜写真にはちゃんと写っている。
その刹那鳩大鷹を躱(かわ)しけり 杉の子
野鳥撮影は瞬間だから、反射神経が物を言う。筆者のカワセミ写真には決定的な瞬間をとらえたものが山ほどある。
 俳句で春がそこまで来ていることを「春隣」という。冬の季語だ。「春遠からじ」も同じ意味で冬の季語。この春隣ほど好きな季語はない。春の足音が確実に聞こえだしたようで心が浮き立つ季語である。毎年数知れないほどこの季節に春隣の句を作っている。拙句の場合食べ物との取り合わせで作るケースが多い。
ざつざつとバターを塗りて春隣 杉の子
といった具合だ。ぱんにバターを塗る音に春の近さを感じるのだ。
何にでもマヨネーズかけ春隣 東京俳壇入選
もある。旺盛な食欲と春を響かせた。
さくさくと羅紗切る音や春隣 毎日俳壇3席
三越で背広を作ったときに羅紗バサミで布地を切る音に春を感じだ。諧謔(かいぎゃく)味がある句が
春隣娘の彼の力こぶ   杉の子
娘の彼氏のたくましさに圧倒されて作った。 



復旦大学講義録(2018/5月23日) ーその②浅野勝人

復旦大学講義録(2018/5月23日) ーその②

朝鮮半島非核化と東アジア情勢
安保政策研究会理事長 浅野勝人

もともと国家間で見解が根本的に異なり、折り合いがつかない場合、解決方法は二つしかありません。戦争で結着をつけるか、話し合いで妥協するか。どちらかです。この道理から今回のケースを考察すると、アメリカと北朝鮮が交渉のテーブルに着くのは必然の結果といえます。
ただ、交渉の先行きについては、楽観できる情況にありません。
一方は、核・ミサイルの凍結・廃棄について段階的に小出しにして、その都度、有利な条件を引き出す条件闘争をするものと予測されます。もう一方は、今回こそ一挙に完全廃棄を実現すること以外は認めません。双方の思惑に溝があって、足して2で割ることが難しい困難な交渉になります。

このように東アジア情勢が流動化している重要な時に、中国の李克強首相が8年ぶりに日本を訪れました。そして安倍首相と首脳会談を行い、
☆日本と中国が一致して「板門店宣言」を支持し、朝鮮半島の非核化が実現するよう連携する。
☆中国のインフラ整備に日本企業が協力するプロジェクトを協議するため「日中官民フォーラム」を設立する。
☆また、日中二国間の安全保障体制について、東シナ海における両国の艦艇や航空機による偶発的な軍事衝突を避けるため、「海空連絡メカニズム」の運用を開始することに合意しました。これが実現しますと、日本の海上自衛隊、航空自衛隊と人民解放軍の海軍、空軍との間に専用連絡回線、ホットラインが設置され、両国の安全が確保されます。
☆その上、11年ぶりに中国から“トキのつがい”が贈られることになり、日中平和友好条約締結40周年の節目に、日中両国の関係改善を内外にアピールするふさわしい機会となりました。
日中両国が相互信頼をいっそう深め、協調して、朝鮮半島の非核化に寄与し、アジア・太平洋地域の平和と繁栄に貢献することは、日本と中国に課せられた共通の責任だと思います。

私は、一昨年の秋、子どもの頃からあこがれていた孫悟空を探しに
西域を旅しました。
西安で三蔵法師には たっぷり会えましたが、孫悟空は見つかりませんでした。それで敦煌に足を延ばしました。そして、タクラマカン砂漠東端に連なるクムタグ砂漠を越えて、楡林窟にたどり着き、遂に念願の孫悟空に会うことができました。
第3窟西壁全面を占める「普(ふ)賢(げん)菩薩図」の右端中ごろに、天竺(インド)からの帰り、白馬を連れた三蔵法師と供の孫悟空が五台山の方角に向かって合掌している「玄奘(げんじょう)取経図」が描かれています。
“遂に孫悟空に会えた”という感動が伝わってきました。
西域ひとり旅の帰途、チンギス・ハーンに会うために蘭州に立ち寄りました。モンゴルにはチンギス・ハーンの遺跡はありません。墓探しも禁じられています。ところが、タングート族の侵略から中国を守ったチンギス・ハーンの功績を讃えて、蘭州郊外の興隆山に慰霊の大雄寶殿が建てられており、大ハーンの大きな座像が祀られています。
登山口山門付近で掃除をしていた70才そこそこと見受ける男の人から、突然、話しかけられました。

「あんた、どこの人だね。中国人ではないみたいだ」
「東京から来ました。日本人です」
「やっぱりそうか。本物の日本人を見るのは初めてだが、こんな
ところまで何しに来たのかね?」
「ここにお祀りしてあるチンギス・ハーンをお参りに来ました」
「私のおじいさんや親の兄弟は、あらかた『9・18』か、『抗日戦争』で日本人に殺された。母親から日本人は鬼より怖い畜生だとさんざん聞かされて育ってきた。あんたを見て、ひょっとしたら日本人ではないかと思ったのだが、普通の人に見たので頭が混乱して、つい確かめたくなって声をかけてしまった」
「よく声をかけてくれました。とてもうれしいです。おっしゃる通り、かつて日本軍が中国を侵略して、多くの人を殺したり、傷つけたりしました。あれは当時の軍隊のやったことで、現在の日本人には関係のない昔の出来事だったとは申せません。日本民族の仕出かした過ちですから、当然、私たちに責任があり、懺悔(ざんげ)しています。
ただ、45年前、毛沢東、周恩来と日本政府代表との間で、これからはお互いに仲良くしていこうと誓い合いました。日本人は、その約束を守ってきたし、今後も守ります。
日本人は、ただ、ただ平和を願っている人ばかりです。二度と戦争はしないと誓っています」
「日本人でも、あんたみたいな“いい人”もいるんだ」

会話はそこで途切れました。
オマエはいい人のようだが、あとの日本人は悪いヤツばかりに違いないという余韻を引きずっていました。
長い間の怨念を払しょくするには、並大抵の努力では足りないと改めて教えられました。

中国に対する日本の寛容と忍耐の精神は、必ずしも十分とは申せません。ですが、私は日中国交正常化以来、46年間、ひたすら日中間の厚い氷を融かす「融冰之旅」を続けて参りました。私のような日本人は幾らもいます。
皆さんも、今日の出会いをきっかけに、私のあとに続いて、日中相互理解の深化に目を向けるよう期待いたします。(元内閣官房副長官)

復旦大学 講義録(2018/5月23日)- その ①浅野勝人

復旦大学 講義録(2018/5月23日)- その ①

「朝鮮半島非核化と東アジア情勢」
 安保政策研究会 理事長  浅野勝人

中国の名門3大学(精華大学、北京大学)のひとつ「復旦大学」から特別講義の要請をいただき、先日、上海を訪れました。
演題の「朝鮮半島非核化と東アジア情勢」は、大学側からの要望によります。2回に分けて、以下、皆様に報告いたします。


いま、世界がかたずを呑んで見守っているのは、6月12日、シンガポールで行われる予定のアメリカのトランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談の成りゆきです。
角突き合わせて、一触即発だった米朝関係は、平(ぴょん)昌(ちゃん)の冬のオリンピックをきっかけに一転して雪どけムードになりました。
これをきっかけに、日・中・米・韓・朝 5ヵ国の首脳が、目まぐるしく動きました。
3月26日、北京で行われた習近平・金正恩による中朝首脳会談から始まって、フロリダの日米首脳会談、「板門店宣言」を発表した南北トップ会談、さらに今月9日、東京を訪れた李克強首相を交えた日・中・韓 3か国首脳会談、引き続き行われた安倍晋三・李克強の日中首脳会談を経て、歴史的なトランプ・金正恩米朝首脳会談に収れんされていきます。

ただ、冒頭「行われる予定の米朝首脳会談」と申したのは、トランプ・金正恩両氏の独特のパーソナリティから何が起きるか予測困難だからです。すでに、金正恩は米韓軍事演習に不快感を示して、会談延期をほのめかしています。これを逆手に取りかねないのがトランプです。(案の定、講演後、やるやらないのゴタゴタが起きているのはご承知の通りです)

予定通り米朝首脳会談が行われた場合、この交渉では、先の「板門店宣言」で ☆核実験とICBM(大陸間弾道ミサイル)の試験発射は止める。☆核のない朝鮮半島の実現を目標とする。と表明した北朝鮮の非核化をめぐって、そのための条件と核廃棄へのロードマップの詰めが焦点となります。
北朝鮮は「金正恩体制の国家の安全保証」を核廃棄の前提条件にしています。一方、アメリカは、北朝鮮が核とミサイルの査察を認め、期限を区切って核を廃棄する完全非核化を譲れない条件としています。
特に、日本にとっては、北朝鮮は日本を攻撃目標とする中距離弾道ミサイルを500ないし600弾 所有していますから、従来のようなあいまいな結着は許容できません。金正恩が最高指導者に就任してから、ミサイル実験を86回、核実験をインドと同じ6回実施しています。もう必要のない試験発射をしないことを隠れ蓑にして、核保有国となることは絶対に看過できません。

幸い、中国は北朝鮮を国家として存続させたいと考えていますし、同時に朝鮮半島の非核化にも賛成の立場を明らかにしています。
中国は、まさに米朝双方の条件を満たす仲介役としてうってつけの存在です。中国の動向に世界の期待が集まるのは当然です。

実は、去年から今年にかけて、「米朝軍事衝突の可能性高まる」「米軍、4月に北朝鮮攻撃の観測強まる」と報道するメディアが少なくありませんでした。つい先日、書店の書棚に「米軍、6月に北朝鮮爆撃」というタイトルの新刊書を見つけ、いささか呆れましたが、これほど米朝関係は最近まで緊迫していたという証しだと思います。

ところが、私はこれまで一貫して「アメリカと北朝鮮の軍事衝突・戦闘はない」と早い段階からネットやさまざまな新聞、雑誌に明言してきました。
なぜそう判断したのか、理由を述べたいと存じます。

能力 × 意図 = 戦闘 という方程式で、米朝両国の関係を
分析してみます。
北朝鮮は、いずれアメリカが攻めて来ると思い込んでいるので、ミサイルと核を開発・所持することによって国を守ろうとしています。イラクやリビアは、弾道ミサイルと核兵器を持っていなかったから戦闘に負けて崩壊したと考えています。
つまり、北朝鮮はミサイルと核を装備して、アメリカの攻撃に備えている「専守防衛」の国です。口先では、ICBM(大陸間弾道弾)でアメリカ本土を火の海にすると言っていますが、そんな能力はないことを彼ら自身、分かっています。ですから、アメリカまで行って戦闘をする意図も能力もありません。

一方、アメリカは北朝鮮を殲滅しても、中国、ロシアとの関係を決定的に悪化させるだけで何のメリットはありません。同盟国の韓国、日本への脅威を排除するのが狙いですから、北朝鮮が東アジアの平和を乱す核とミサイルを凍結・廃棄すれば、目的を達したことになります。従って、アメリカも能力はあるけれども、進んで北朝鮮と戦う意図はありません。
以上の分析に従えば、北朝鮮が「国家の安全保障」を首脳会談開催の前提条件にして、アメリカとの交渉を選択したのは理にかなっています。(元内閣官房副長官)

◎米朝会談中止の背景を探る

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◎米朝会談中止の背景を探る
 文在寅の「仲裁外交」失敗
 トランプ、段階的非核化で“呼び水”
 世紀の米朝会談が流れた。トランプが6月12日の会談予定を中止した。その背景には韓国大統領文在寅のトランプへのミスリードがあったようだ。経緯を見れば、まず22日の米韓首脳会談に先立つ米韓調整で急速にトランプと金正恩との会談へのムードが盛り上がった。文が“垂涎の話し”を伝えたからに違いない。ところが北の対米強硬路線は変化の兆しを見せず、トランプは文在寅に対し電話で「なぜ、私に伝えた個人的な確信(assurance)と北朝鮮の公式談話内容は相反するのか」と詰問している。従ってトランプと文の会談は文の言い訳で、相当気まずいものとなったようだ。
  これを裏付けるようにニューヨークタイムズ(NYT)は20日、「トランプ米大統領がかけた電話は文在寅韓国大統領の訪米のわずか3日前だった」とし「これは文大統領がワシントンに来るまで待てないという、トランプ大統領の不満(discomfort)を表しているという解釈が米政府で出ている」と報じた。 要するに、トランプは韓国から伝え聞いた北朝鮮の非核化交渉の意志を信じていたが、違う状況へと展開し、韓国の「仲裁外交」が失敗したと言うことだ。
 トランプは金正恩に送った書簡で6月12日の会談断念の理由について「会談を楽しみにしていたが残念なことに北朝鮮の最近の声明で示されている怒りや敵意を受けて私は現時点で会談を開くことは適切でないと感じた」と述べた。トランプが会談を断念した理由をもう一つ挙げれば、何と言っても水面下の交渉で米国の北に対する非核化要求の内容が極めて厳しかったことが挙げられる。これが北を硬化させたことにあるのだろう。また補佐官ボルトンが北の非核化でカダフィ殺害に至る「リビア方式」に言及したが、金正恩は自分もカダフィと同様の運命をたどりかねないと感じて拒絶反応を示したのだろう。北朝鮮外務省第1次官の金桂冠は16日「我が国は大国に国を丸ごと任せ悲惨な末路を迎えたリビアやイラクではない」として、「リビアモデル」とこれに言及したボルトン補佐官に強い拒否感を示している。
 この発言に対してトランプは、怒りをあらわにして「このまま会談をやってもいいのか」と周辺に漏らすに至った。副大統領ペンスも「トランプ大統領を手玉に取るような行動は大きな過ちとなる。会談で大統領が席を立つ可能生もある」と会談決裂の可能性まで示唆した。しかし北の“挑発”発言は止まらず、外務省で対米交渉を担当する次官崔善姫は公然とペンスを批判「米国問題に携わる者として、ペンス副大統領の口からそのように無知でばかげた発言が飛び出したことに驚きを禁じ得ない」と延べた。加えて「我が国は米国にこれまで経験も想像すらもしたことのない恐ろしい悲劇を味わわせる可能性がある」とすごんだ。「米国は『核対核の対決』で北朝鮮と相まみえることになる」ともまくしたてた。この崔善姫発言は米朝首脳会談の中止を改めて確定的にしたものと言えよう。
 一方、日本政府には早くから会談の実現性に疑問を持つ空気が強かった。外相河野太郎は「条件が整わないなら米朝会談をする意味がない」と述べると共に「会談をすることが目的ではなく、北朝鮮の核、ミサイル、拉致問題の解決が究極の目的」と日本の立場を強調している。官房副長官野上浩太郎は、「トランプ大統領が米朝首脳会談延期の可能性に言及したことは北朝鮮の具体的行動を引き出すためのもの」と分析している。
 こうして6月12日の会談は実現しない方向が定まったが、トランプが完全に断念したかというとそうでもなさそうである。トランプは「今は適切ではない」と述べており、望みを捨てていないのだろう。とりわけトランプの反移民政策やロシアとの不透明な関係への不満から野党・民主党に追い風が吹いている秋の中間選挙をひかえて、北との和解は大きなプラス材料になる。トランプは北への圧力を維持しつつ、秋までに会談実現に向けてのアヒルの水かきが続くのだろう。トランプが北に求める非核化について「直ちに完了してほしいが、段階的に行う必要が少しあるかもしれない。段階的でも迅速に行うべきだ」と述べたのは、北への呼び水の一環であろう。
◎俳談

【ノスタルジア】
 最近は乳幼児を背負う母親が少なくなった。ベビーカーかだっこ型のベビーキャリーが流行っている。銀座通りには最新ファッションの女性がこれまた高級ブランドのベビーカーで闊歩しているが、ノーテンキそうで子育てが大丈夫か心配だ。電車の中ではブレーキをかけないままで、危険極まりない。いざというときはだっこよりおんぶだろうと思うがどうだろうか。大空襲も大震災もおんぶだった。両手が使えるし身動きが自由だ。
ねんねこの中の粉雪払わねば 毎日俳壇入選
 ねんねこは赤ん坊を背負う際に用いた防寒用の子守り半纏(ばんてん)。なぜか夕焼けの中の五木の子守唄を思い出す。ちなみに 「おどま 盆ぎり 盆ぎり」の「おどま」は、自分のこと。「盆ぎり」は「盆限り」と書いて、「ぼんぎり」と読ませるから、お盆までのこと。「お盆が過ぎたら私は、もうここにいない」と歌っているのだ。子守りは嫌だったのだろう。子守り半纏の欠点は赤ん坊のクビがうしろにかっくんとなり、座らないことだが、最近では「クビかっくん防止型」も売られている。
わら草履はける昭和よ冬の星 東京俳壇2席
ノスタルジアは俳句になる。

◎米韓、北への「不可侵」を表明

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◎米韓、北への「不可侵」を表明
  米朝首脳会談前に和解ムード
 トランプ南北統一に言及
 米韓首脳会談は、6月12日に予定される米朝首脳会談に向けて、慎重姿勢のトランプを韓国大統領文在寅が説得する構図が浮かび上がった。結局22日の会談では、トランプと文在寅は「米朝会談が支障なく開かれるよう最善を尽くす」方向で一致した。ワシントンでは曲折をたどっても会談は実現するとの見方が強まっている。しかしそれも「金正恩はノーベル賞を待望するトランプに対して時間がたてば消える程度の非核化の約束をしようとしているかもしれない」とニューヨークタイムズ(NYT)が皮肉っており、水面下のやりとりがどう進むかが焦点だ。
 発表によるとトランプと文は「北が信用出来るような体制保障について意見を交わし、北に対する『不可侵』の約束が必要なことで一致した」という。また南北が板門店での首脳会談で合意した「終戦宣言」を米国、韓国、北朝鮮の3か国で合意に持ち込むことでも一致した。ただトランプは北朝鮮との首脳会談について「会談が開かれればいいが、今回開かれなければ次回に開かれるだろう」となお懐疑的な立場を崩していない。「来週分かる」とも述べた。まだ米朝会談の延期もあり得るという姿勢である。
 トランプは文との会談で、朝鮮半島の将来についての鳥瞰図を描いて見せた。「南北朝鮮はいつかは一緒になり一つの国に戻る。南北がそれを望むなら私もそれで良い」と述べた。トランプは既に机上にある「北の非核化と終戦宣言。その後の経済協力」から大きく歩を進め、南北統一への支援に初めて言及したことになる。
 これに関連して3月末と5月の二度にわたって金正恩と会談した米国務長官ポンペオは23日、下院外交委員会の公聴会で、金正恩との会談で正恩が「体制保証」を求めたことを明らかにしている。さらに金正恩はポンペオに対して「朝鮮戦争を終結させ、平和条約を締結する」意志を表示すると共に「我々の非核化の方針と意思を疑わないでほしい」と伝えたと言われる。ポンペオは公聴会に提出した文書で米朝首脳会談について、「適切な取引が机上になければ、丁重に立ち去ることになる」と述べた。これは水面下で進んでいるとみられる米朝調整に向けて“牽制球”を投げたものだろう。
 一方でNYTはトランプの参謀の懸念として「大統領がノーベル賞を待望している一面があり、これを看破した金正恩が時間がたてば忘れるような約束を準備している可能性がある」と、金が“ノーベル賞”を“まき餌”にしてトランプをおびき寄せようとしている側面を報じている。さらに同紙は、米政府関係者が「金正恩が米朝会談で今後半年以内に核兵器の一切を放棄し、関連施設を閉鎖するタイムテーブルに同意する」と予想したことをとらえて「こうした日程は極めて無理な計画だ」と否定的見解を述べている。
 北朝鮮の後ろ盾の中国は中国外務省報道局長の陸慷が23日、米国と北朝鮮の双方に対し、「問題の政治解決プロセスは得難い歴史的好機を迎えており、米朝双方が好機をつかみ、それぞれの懸念を解決してほしい」と強調した。トランプは中国を強く牽制する発言も繰り返した。「金正恩氏が習近平国家主席と2度目の会談をしてから態度が変わり、落胆した。」と述べた。これは金正恩が習近平に操られている側面に不満を抱いていることを物語る。トランプは習近平を「世界一流のポーカープレーヤー」と皮肉った。国連安保理事会の常任理事国であるにもかかわらず中国は制裁決議の完全なる履行をしているかどうか疑わしい。国境線を越えて北に物資が続々と届いているとの情報もある。
 一見日本の出番がないように見えるが、今後米朝会談が進めば非核化の工程表作りが俎上(そじょう)にのぼる。日本は積極的に核兵器解体と国外への搬出や、専門家による検証に参加する必要がある。安倍が北への見返りについて「先に核の完全放棄、後に補償」方式を強調しているのは当然である。要点は金正恩が新年から打ち出している経済重視路線をいかにして国際社会が定着させるかにあるのだろう。  
◎俳談
【分かりやすさ】
 名句は小学生でも分かるし、感動する。芭蕉の名句はすべて分かりやすい。
古池や蛙飛び込む水の音
を理解できない子供はいない。直感で分かってしまうのだ。専門家の理論づけは子供の直感の域を超えることはない。
分かりやすさでは小林一茶の右に出るものは無いだろう。
一茶の俳諧俳文集「おらが春」にある
我と来て遊べや親のない雀
名月を取ってくれろとなく子哉(かな)
は、分かりやすい句の筆頭だ。本来俳句は難しい用字用語とはなじまない。難しい言葉を武器として生きてきた職場人間が俳句に熟達しようと思ったら、その習癖をかなぐり捨てる必要があるのだ。芭蕉は「俳諧は三尺(さんせき)の童にさせよ」と述べたが、言い得て妙である。ちなみに小学生でも分かる拙句を挙げれば
秋の日に考へているゴリラかな 産経俳壇入選

◎野党の「加計疑獄」狙いは不発に終わる

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◎野党の「加計疑獄」狙いは不発に終わる
 安倍は7対3で3選の方向
「またも負けたか八聯隊(はちれんたい)、それでは勲章九連隊」は、昔大阪出身の陸軍連隊が虚弱であったことを茶化しているが、これは今の野党にもそっくり当てはまる、総力を挙げた加計問題が愛媛県による内部文書の信憑性が問われる事態になってきたからだ。核心部分である15年2月の安倍の加計との面会が完全否定され、文書ねつ造が問われるフォントの混入までが明るみに出ており、野党の追及は限界が見えた。自民党内の空気も「政局化不可能」(党幹部)との見方が支配的となってきており、9月の総裁選で安倍が3選される流れは7対3で強まった。
 朝日だけを購読している人は今にも「政局」かと思うだろうが、ミスリードされてはならない。読売か産経を併読した方がいい。23日もトップで「加計の面会否定の根拠示せず」と大見出しを踊らせているが、野党をけしかけているかのようで、平衡の感覚に欠ける。朝日は、加計問題を1年半も取り上げ続けて、けたたましく騒いでいるが、夢と描く昔の造船疑獄や昭電事件の再来などはあり得ない。なぜなら安倍や自民党幹部をめぐって贈収賄事件に発展する可能性はゼロだからだ。発展するならきな臭さが漂うものだが、まったくない。
 そもそも愛媛県の内部文書はテニオハもままならないレベルの県庁職員が書いたもののようで信憑性のレベルが低い。その核心部分には「2/25に加計理事長が首相と面談(15分程度)。理事長から、獣医師養成系大学空白地帯の四国の今治市に設定予定の獣医学部では国際水準の獣医学教育を目指すことなどを説明。首相からは『そういう新しい獣医学部の考えはいいね。』とのコメントあり。また柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示があったので、早急に資料を調整し、提出する予定。」とある。
 文書は基本的に、明朝体と思われるフォントで構成されている。ところが、「首相からは『そういう新しい獣医学部の考えはいいね。』とのコメント」の部分と「柳瀬首相秘書官から、改めて資料を提出するよう指示」の核心部分だけがゴチックになっている。なぜ肝心の部分だけがゴチック体なのかは、おそらく後から挿入された可能性が強い。この継ぎはぎの字体を見ても慌てて中途半端な改竄が行われたのではないかと疑いたくなる。強調したいのならアンダーラインを引くとか、太文字にするとかが考えられるがそうではない。マスコミは、信憑性のない文書でカラ騒ぎのしすぎだ。
 安倍と加計との会談について、安倍は「指摘の日に加計氏と会ったことはない。加計氏から(学部新設の)話をされたこともないし、私から話をしたこともない」と全面否定。2015年2月25日の官邸の記録でも「加計氏が官邸を訪問した記録は確認できない」と“動かぬ証拠”で反論している。
 これに対して立憲民主党の福山幹事長は記者会見で、「首相が国会で虚偽答弁を繰り返してきた疑いがより強まった。首相の進退が問われる重大な局面を迎えた」と述べ、無理矢理政局化を目指している様子がありありだが、ネズミが猫を狙うようで痛ましい。また自民党では村上誠一郎が1人「今までの行動パターンをみたら、総理が本当のことを言ってると思えない。愛媛県の職員がなぜウソをついてまで書く必要があるのか。ウソは書いてない。柳瀬(元首相秘書官)より信用がおける。ということは、総理の信用は愛媛県の職員より落ちちゃったってことだ。」と太鼓腹を揺すって毒舌を吐いているが、党内議員で同調するものはほとんどいない。
 自民党の安倍支持勢力は依然として安定している。これまでのところ国会議員405人のうち安倍支持御三家の細田派94人、麻生派59人、二階派44人は動かない。細田派は22日の総会で満場一致で早々と連続3選を決めている。トップを切ったのであり、今後各派が態度決定を迫られる。加えて官房長官菅義偉の影響が強い74人の無派閥も、大勢は様子見ながら安倍へと流れる傾向を示している。会期末の6月20日まで1か月を切っており、夏休み入リすれば事態は消え去る。安倍は地方行脚で党員との親密度を高め、緊迫感漂う極東情勢でも活発な外交を展開する。そして、9月に3選を達成して5年間好調であった景気の維持に全力を傾注しつつ、2020年オリンピックを迎えるのが王道だろう。
◎俳談 
【俳句と諧謔味(かいぎゃくみ)】
 簡単に言えば重いテーマを軽く語るというのが芭蕉の言う「軽(かろ)み」であろう。例えば
秋深き隣は何をする人ぞ
秋が深まり、山野が寂しい風情になってくると、隣の物音も気になる。今何しているのだろうかと人恋しい気持ちにもなる。筆者は芭蕉が隣人の職業を気にしているというよりも、親しい隣人が何をしているのだろうかと気遣っているように句意を読み取りたい。平明な用語で全く気取っていない。「俳諧は3尺(さんせき)の童にさせよ」と芭蕉は述べているが、まさにその言葉を地で行っている。この「軽み」をさらに推し進めると「諧謔味」になることが多い。一茶は
春雨や食はれ残りの鴨(かも)が鳴く
と詠んだ。今は鴨が池にあふれているが、昔は見つければ捕って食べていたと考えられる。運良く食べられなかった鴨が春雨の中で鳴いている風景を詠んだが、みそは「食われ残り」。なかなか言える言葉ではない。
筆者もユーモアのある句は好きだ。
玄関開けて「受かったよ」と大声を上げた子供がずっこけた。
合格子(ごうかくし)上がり框(かまち)でずつこける 杉の子
雑草の中で高さ20~30センチくらいのスカンポがニョキニョキと立ち上がっているのが面白いと感じて
すかんぽのぽつぽつぽつの余生かな   杉の子
 

◎米朝会談へ神経戦が最高潮


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 ◎米朝会談へ神経戦が最高潮

米「半年以内の核搬出」要求
 北「体制の保障と平和協定」で瀬踏み
 6月12日に開催予定のトランプと金正恩の米朝首脳会談に向けて、神経戦が展開されはじめた。分析すれば米国が、「完全なる非核化」を要求し、北はこれを拒否した上で体制の保障を求めている構図が浮かび上がる。米国は北に対して核弾頭や大陸間弾道弾を半年以内に国外に搬出するよう要求、その代償としてテロ支援国家指定の解除と金正恩体制の存続をちらつかせているようだ。しかし金正恩が命と守る核兵器を半年以内に搬出する可能性はゼロに近く、米提案は駆け引き材料に過ぎまい。溝が埋まるにはほど遠い。
 北朝鮮は16日、米韓空軍の定例合同訓練を理由に、南北閣僚級会談の中止を一方的に通知し、第1外務次官金桂官が談話を発表した。談話は「大統領補佐官のボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は『先に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器の完全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」と米国の要求を批判。「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本質において大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの運命を尊厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ」と強調した。さらに金桂官は「一方的に核の放棄だけを強要しようとするならば、首脳会談に応じるかどうかも再考せざるを得ない」と首脳会談再考も示唆している。
 これに対しトランプは「われわれは何の知らせも受けていない。様子をみてみよう」と述べ、北朝鮮の今後の出方を見極める考えを強調した。さらにホワイトハウス報道官のサンダースは、米朝首脳会談について、「重要な会談だ」と指摘し、準備を進める考えを示す一方で「トランプ大統領は、困難な交渉には慣れていて、その準備も整っている。ただ、北朝鮮が会いたくないのなら、それでもいい。その時は、最大限の圧力をかけ続けるだけだ」とすごんで見せた。北朝鮮が対話を選ばなければ、圧力を強める考えを示して、けん制したことになる。
  しかし、“口撃”の厳しさは半島民族の“特性” であり、隘路を探していることは間違いない。その一つとして、韓国大統領文在寅を通じてトランプの説得を要求している可能性が高い。米韓首脳会談は22日に予定されており、北朝鮮が米韓合同航空戦闘訓練『マックスサンダー』を理由に南北閣僚級会談を一方的に中止したのは、米韓首脳会談に向けた思惑があるからにほかならない。その意図は韓国を動かして、米国との首脳会談の際の北朝鮮の立場をより正確に説明させようとしているのかもしれない。既に北朝鮮は韓国との閣僚級会談を中止することで、F22などの戦略兵器が朝鮮半島に飛来することを望んでいないという意思を明確に示している。金正恩は北朝鮮の立場をあらかじめ文在寅を通じてトランプに伝達してけん制しているのだろう。
 そもそも北朝鮮の狙いは今年早々から明白だ。正月に金正恩は対話攻勢に転じて、まず米国の同盟国である韓国の取り込みを図ってきた。金正恩と文在寅の会談で準備段階を終え、いよいよトランプとの会談に向けた総仕上げ段階に入っているのだろう。北は体制の保障と平和協定締結を最終目標としている。また一連の言動は米朝会談で主張する予定の重要なメッセージを米側にあらかじめ伝えて、瀬踏みをしているのだろう。これに対して米側も半年以内の核搬出という“高値”をふっかけて、妥協点を模索しているのが現在の図式だろう。
◎俳談
【黄昏レンズ】
三夕(さんせき)の歌とは『新古今和歌集』に並ぶ「秋の夕暮れ」を詠んだ三首の和歌をいう。日本人なら「三夕」と聞いただけで、そこはかとなき哀愁を感ずる名歌だ。寂蓮(じやくれん)の
寂しさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮れ
西行の
心なき身にもあはれは知られけり鴫(しぎ)立つ沢の秋の夕暮れ
藤原定家の
見渡せば花も紅葉(もみぢ)もなかりけり浦の苫屋(とまや)の秋の夕暮れ
の三首。『新古今和歌集』の代表的な名歌である。今年も夕方の俳句に挑戦しようと思う。
鳧(けり)の子のけりつと鳴ける日暮れかな 東京俳壇入選
既に画壇には三夕どころか、「無数の夕刻」を表現した版画家がいた。川瀨巴水(はすい)だ。別名「黄昏(たそがれ)巴水」と呼ばれたほど、郷愁の日本の夕刻を表現し続けた。これを筆者は写真で成し遂げようと、「黄昏レンズ」を入手した。ニコン58mm F1.4だ。フラッシュなど不要の「黄昏専門レンズ」と名付けている。これで黄昏の東京を撮って歩くつもりだ。俳句も黄昏、写真も黄昏。人生の黄昏時にふさわしいテーマの追求だ。
日の落ちてとっぷり暮れて十三夜 産経俳壇入選
  

◎今世紀最大の政治ショー米朝首脳会談

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◎今世紀最大の政治ショー米朝首脳会談
 ポンペイオの“まき餌”に食らいついた金正恩
 日本も拉致問題を棚上げしてまず正常化を
 米大統領ドナルド・トランプと北朝鮮の労働党委員長金正恩による、今世紀最大とも言える政治ショーが展開されようとしている。水面下での懸命の駆け引きから垣間見える焦点は、いちにかかって北の「核廃棄の度合い」と見られる。米国は北の核実験と核・ミサイルの完全なる廃絶を要求しているが、北は安全保障上の脅威を理由に20発と言われる核弾頭を手放す気配はない。さらに6月12日の首脳会談は、トランプが秋の中間選挙を意識して細部を詰めない妥協に走る危険を内包している。日本を狙う中距離核ミサイルなどは二の次三の次に回されかねない。日本は天井桟敷から大芝居を見物していてはならない。会談成功に向けて堂々と発信すべきだ。拉致問題は最大の課題だが、ここは関係正常化が先だ。早期の日朝会談が望ましい。
 歴史に残る米中極秘会談の立役者は大統領補佐官ヘンリー・キッシンジャーであった。1971年にニクソンの「密使」として、当時ソ連との関係悪化が進んでいた中華人民共和国を極秘に2度訪問。周恩来と直接会談を行い、米中和解への道筋をつけた。今回の立役者は国務長官マイク・ポンペイオであった。そのしたたかさはキッシンジャーに勝るとも劣らない。2回にわたる金正恩との会談で、おいしい“まき餌”をちらつかせて金正恩をおびき寄せた。ポンペイオは「北朝鮮が、アメリカの求める、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化に応じれば、制裁は解除され、北朝鮮で不足する電力関係のインフラ整備や農業の振興など、経済発展を支援する。アメリカ企業や投資家からの投資を得ることになる」とバラ色の未来を描いて見せた。さらにポンペイオは「アメリカは、北朝鮮が、韓国を上回る本物の繁栄を手にする条件を整えることができる」と北にとって垂涎の誘いをかけると共に、トランプ政権が、北朝鮮の金正恩体制を保証する考えも伝えた。軍事オプションは当面使わないという姿勢の鮮明化だ。
 これだけのおいしい話しに乗らなければ金正恩は指導者たる素質を問われる。元国務次官補カート・キャンベルも「これにより対話や協議に向けて新たな道が開かれ、少なくとも短期的には核拡散のリスクが低減し、粗暴な軍事オプションは後回しになるだろう。」と展望した。金正恩は「非核化協議に応ずる」と飛びついたが、非核化にもいろいろある。米国が目標に掲げているのは「朝鮮半島の完全なる非核化」なのであるが、金正恩の狙いは現状のままで核開発プログラムを凍結し、その見返りに国際社会からの経済制裁を直ちに緩和させるというものだ。それは、米国が目標に掲げている朝鮮半島の非核化とは似て非なるものである。米国にとって非核化は、北朝鮮の核兵器プログラムと核兵器そのものの完全な破棄を意味するのであり、トランプは正恩との会談では核兵器の解体を速やかに進めるよう求めるだろう。この両者の見解の相違が事態の核心部分であるのだ。
 そもそも父の正日が1998年に核計画に着手して以来、金一族はプルトニウムを「家宝」のように営々として作り上げてきた。GDPが米国の1000分の1しかない国が、国家よりも自分や一族の体制を守る手段として核を開発してきたのだ。米下院軍事委員長マック・ソーンベリーが「これまで北朝鮮は米国を手玉に取ってきた。大統領は過度の期待を慎まなければならない」と看破しているがまさにその通りだ。核イコール金王朝の存続くらいに思わなければなるまい。
 こうした状況下で開催されるトランプ・金会談の焦点はどこにあるのだろうか。まず第一に挙げられるのは金正恩が米国や国際機関による完全な形による検証に応ずるかどうかだ。坑道には水爆実験用に新たに掘ったものもあるといわれる。それを完全に破壊するかどうかが疑わしいといわれている。坑道の入り口だけを破壊して、完全破壊を装う可能性があるからだ。また北が主張する「ミサイル開発計画の放棄」は何の意味もない。現状が固定されるだけに過ぎないからだ。既に保有するミサイルと核爆弾の解体が不可欠なのだが、金正恩が「核大国」と自認する以上、容易に核を手放すことはないだろう。
 こうした核問題と並行して、極東の平和体制を構築するために、米政府内には休戦協定を平和条約に格上げする構想がある。休戦協定は1953年7月27日に署名され、「最終的な平和解決が成立するまで朝鮮における戦争行為とあらゆる武力行使の完全な停止を保証する」と規定した。しかし、「最終的な平和解決」(平和条約)は未だ成立していない。朝鮮戦争の休戦協定は北朝鮮、米国、中国の間で署名されているが、韓国は署名していない。平和条約実現のためには、まず米朝で終戦を宣言し、ついで南北で終戦を宣言する。そして韓国、北朝鮮。米国、中国で平和条約に署名し、これに日本とロシアが加わって最終的には6か国の枠組みで平和条約を確立させる方式が考えられる。
 こうした構想は確かに極東情勢が行き着くべき終着点だが、ことはそう簡単ではあるまい。紆余曲折をたどるに違いない。今後5月22日に米韓首脳会談。5月26日に日露首脳会談。6月8,9日に韓国も参加する可能性があるカナダでのサミット。そして6月12日の米朝首脳会談へと激しい外交の季節が続く。モリだのカケだの政権を直撃することのない話しに1年以上もこだわる野党も、時代を見る眼を問われる。集中審議に応じた自民党執行部の見識のなさも尋常ではない。集中審議なら米朝会談をテーマとすべきではないか。野党も議論に参加すべきである。
 安倍は12日の会談結果を早期にトランプから聞く必要があろう。日朝関係は経済支援を米国が日本に頼る意向を示していることから、日本の対応がクローズアップされる時期が必ず来る。日本は拉致問題を抱えているが、生存すら不明な拉致問題に拘泥していては物事は進まない。ましてや拉致問題の解決をトランプに頼んでも二の次三の次になることは否めない。いったん棚上げして日朝関係を正常軌道に乗せた上で、解決を図るべきだろう。日朝関係を拉致問題調査団を派遣できるような状態にしなければ、未来永劫に拉致の解決はない。
◎俳談
 吉井勇作詞・中山晋平作曲の《 ゴンドラの唄 》は今は亡き名優森繁久弥が哀調があっていい。しかし黒沢明監督の名作「生きる」のなかで、末期がんの市役所の課長・志村喬が公園でブランコに乗って歌った姿も印象的だった。
いのち短し 恋せよ少女(おとめ)
朱(あか)き唇 褪(あ)せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを
今は胃がんくらいでは早期発見すれば滅多に死なないが、戦争直後までは死に至る病だった。だから往年の名画のなかで「明日の月日はないものを」が利いてくる。
 今公園に行くと老夫婦の散歩ばかりが目立つ。皆仲睦まじい感じだ。朝の散歩だから“訳あり”の散歩はまずない。
冬麗の二人ここには誰も来ぬ 産経俳壇入選
という感じの散歩を1度はしてみたいものだ。しかし怖くて出来ない。 

◎「反故(ほご)常習国」北朝鮮は軽々に信用出来ない

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◎「反故(ほご)常習国」北朝鮮は軽々に信用出来ない
  核全廃まで圧力は維持すべきだ
    米WHに「南アフリカ方式」の核廃棄が浮上
  北朝鮮の非核化問題の鼎(かなえ)が煮えたぎり始めた。6月の米朝首脳会談を見据えて北朝鮮は3人の米国人を解放。2年半ぶりの日中韓首脳会談は朝鮮半島の非核化に向けた協力で一致した。完全非核化への道筋は複雑で遠いが1歩前進ではある。極東をめぐる力の構図は緊張緩和の入り口に立ったが、北の後ろ盾としての中国と、日米同盟の対峙の構図は変わらず、融和だけが売り物の韓国文在寅外交は荒波にもまれ続けるだろう。こうした中でまずは北朝鮮の核廃棄方式としてホワイトハウスの内部に急きょ浮上しているのが「南アフリカモデル」だ。
 国務長官として初めて訪朝したポンペイオは3人を連れて帰国したが、米朝首脳会談の開催場所と日程が決まったことを明らかにした。日程公表はまだないが、トランプは6月初旬までに予定される米朝首脳会談の開催地については、南北軍事境界線のある「板門店ではない」と述べた。詳細については「3日以内に発表する」と語るにとどめた。トランプはこれまで、板門店のほか、シンガポールを有力候補地に挙げている。3人の帰国は米朝関係にとって大きな摩擦要因の一つが取り除かれたことになり、1歩前進ではある。しかし核心は「核・ミサイル」であり、ここは、不変のままであり、難関はこれからだ。
 ここに来て金正恩の“弱み”をうかがわせる行動が見られはじめた。それは金正恩の習近平への急接近である。40日に2回の首脳会談はいかにも異常である。そこには中国を後ろ盾に据えないと心配でたまらない姿が浮かび上がる。泣きついているのだ。金正恩は習近平との大連会談で米国への要求について相談を持ちかけた。その内容は二つある。一つは米国が敵視政策をやめることが非核化の条件というもの。他の一つは「米国が段階的かつ同時並行的に非核化の措置を取ること」である。
 泣きつかれて悪い気のしない習近平は8日トランプとの電話会談で「北朝鮮が段階的に非核化を進めた段階で何らかの制裁解除をする必要がある」「米朝が段階的に行動し北朝鮮側の懸念を考慮した解決を望む」などと進言した。これに対し、トランプは「朝鮮半島問題では中国が重要な役割を果たす。今後連携を強化したい」と述べるにとどまった。おいそれとは乗れない提案であるが検討には値するものだろう。
 注目の日中韓首脳会談は、大きな関係改善への動きとなった。しかし、北の核・ミサイルをめぐっては安倍と中韓首脳との間で隔たりが見られた。日本側は「完全かつ検証可能で不可逆的な核・ミサイルの廃棄」を共同宣言に盛り込むことを主張した。しかし、中韓両国は融和ムードの妨げになるとして慎重姿勢であった。習近平は金正恩に対して「中朝両国は運命共同体であり、変わることのない唇歯(しんし)の関係」と述べている。唇歯とは一方が滅べば他方も成り立たなくなるような密接不離の関係を意味する中国のことわざだ。
 こうした中でホワイトハウスではまずは北朝鮮の核廃棄方式だとして「南アフリカモデルが急浮上している」という。韓国中央日報紙は、国家安保会議(NSC)のポッティンジャー・アジア上級部長が文正仁(ムン・ジョンイン)韓国大統領統一外交安保特別補佐官らにこの構想を伝えたという。これまでホワイトハウスではボルトンNSC補佐官が主張したリビア方式が考えられていた。リビア方式は「先に措置、後に見返り」だった。その方式ではなく南アフリカ方式を選択するというのはある意味で現実的路線のようだ。南アは第一段階で、1990年に6つの完成した核装置を解体した。第二段階は、1992年に開始された弾道ミサイル計画の廃棄で、これには18か月を要した。第三段階は、生物・化学戦争計画を廃棄した。ただ、南アフリカ方式は経済的な見返りがないという点が問題となる。同紙は「南アフリカモデルを検討するというのは、北朝鮮の核放棄に対する経済支援は韓国と日本、あるいは国際機関が負担し、米国は体制の安全など安全保障カードだけを出すという考えと解釈できる。」としている。結局お鉢は日本に回ってくることになるが、金額によっては乗れない話しではあるまい。同紙は「北の核は南アフリカと比較して規模が大きく、“見返りを含めた折衝型南アフリカモデル”になる可能性がある」としている。
  一方、安倍は文在寅に対して「核実験場の閉鎖や大陸間ミサイルの発射中止だけで、対価を与えてはならない。北の追加的な具体的行動が必要だ」とクギを刺している。北は過去2回にわたって国際社会の援助を取り付け、その裏をかいて核兵器を開発してきており、まさに裏切りの常習犯だ。政治姿勢が左派の文在寅は、北への甘さが目立つ。圧力はまだまだ維持するべきであろう。北は、日米に取っては「反故常習犯国」なのだ。核兵器の全て廃棄という目標達成まで圧力を継続するのは当然である。
◎俳談
【語彙を蓄える】
 俳句の根幹は言うまでもなく言葉である。言葉の善し悪し、その用い方で一句の良否が決まる。語彙が豊富なほど多様な表現が可能となる。
  語彙を豊富にするにはどうするか。言葉を貯金することである。貯金するためには稼がなければならないが、いかに稼ぐか。丹念にメモすることである。それも俳句モードでメモする。思いついた言葉や、テレビドラマでも詩歌でも歌謡曲でも目に見え耳に聞くものすべてをメモする。そして新しい言葉を発見することである。
  この貯金した言葉を時々見ているといろいろな想像が湧いてくる。
 例えば「四角のビル」という、人間の疎外のような言葉をテレビの哲学講座で蓄えたとする。
爽やかや四角のビルより退職す 東京俳壇1席
という形になる。
「嵌め殺し窓」を貯金したとしよう。おりから梅雨の入りの走り梅雨である。空想をふくらます。そんなときテレビにお寺が映った。
  禅寺の嵌め殺し窓走り梅雨
となる。
 「初夏を吐く」という詩的な言葉を思いついた。大事に熟成して
 初夏を吐く浅蜊蛤海坊主
 「楽剃り」。信仰心からでなく軽い気持ちで剃髪することである。
 楽剃りのご隠居目立つ夏祭り
 と言った具合だ。言葉を大切に貯金して、これをいつか取り出そう。
  ただ言葉の発見は新鮮でないといけない。手垢のついたことばなどいくら貯金しても無駄だ。
 例えば「カンナ燃ゆ」。カンナは常に燃えている。これを詩的と思うようでは俳句を辞めた方がいい。詩の世界ではむしろカンナは凍らせた方が新鮮だ。

◎「小義」では崩せぬ安倍一強体制

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◎「小義」では崩せぬ安倍一強体制
  “四人組”の仕掛けは空振り
 「春雨や食われ残りの鴨が鳴く」は一茶の名句だが、自民党内は小泉純一郎を中心とする“ノーバッジ四人組” が、「グワッ!グワッ!グワッ!」となにやら姦(かしま)しい。どう見ても疝気筋のOBが「安倍降ろし」を始めようとしているかのようだ。そこには国民に通用する「大義」はなく、個人的な恨み辛みを晴らそうとする「小義」しかない。小義で国政の中枢を攻撃しても説得力はない。9月の自民党総裁選で安倍3選という流れを変える力にはなるまい。
 まず四人組の発言を検証する。姦しい筆頭は何と言っても小泉。それも親子で姦しい。親は「3選は難しい。信頼がなくなってきた。何を言っても言い逃れ。言い訳と取られている」だそうだ。この発言から分かる小泉の政治判断は「信頼がなくなってきたから3選は難しい」だが、一体誰の信頼がなくなったのか。国民に聞いたのか。それともTBSやテレビ朝日の情報番組の軽佻(けいちょう)浮薄な報道の請け売りなのか。息子の小泉進次郎も「全ての権力は腐敗する」だそうだ。英国の歴史家ジョン・アクトンの言葉の請け売りだが、アクトンは専制君主の権力はとかく腐敗しがちであるということを言ったのであり、民主主義政権の批判では更々ない。学校で習ったの政治学用語などをそのまま使ってはいけない。現実政治にそぐわない。青いのである。
 政界ラスプーチンのように陰湿な印象を受ける古賀誠も「首相は改憲ありきだ。憲法9条は一字一句変えない決意が必要だ」と安倍の改憲志向を攻撃する。これこそノーバッジが発言すべきことだろうか。口惜しいのならバッジを付けて「改憲反対党」を結成してから言うべきことではないか。それとも民放から“お呼び”がかかるように、アンチ安倍を売り物にしているのだろうか。
 山崎拓の「財務相が辞める以外に責任の取り方はない」は、独断。福田康夫は自身が旗振り役だった公文書管理法に触れ、「いくら法律やルールをつくっても守ってくれなきゃ全く意味がない。政府の信用を失う」と述べ、財務省による公文書改ざんなどを批判した。これも自分の冴えなかった政権を棚に上げた難癖だ。
 口裏を合わせたような安倍政権批判発言の連続だが、その狙いはどこにあるかだが、おそらく“政局化”の瀬踏みであろう。導火線に火を付けて自民党内の反安倍勢力をたきつけようというわけだ。しかし、“仕掛け”はしても肝心の党内は全く呼応しない。導火線は湿って進まないのだ。せいぜい村上誠一郎あたりが反安倍の牙城TBS時事放談で「日本が崩壊しようとしている。政治と行政が崩壊しつつある」と太った腹を叩いて呼応しているが、誇大妄想が極まったような発言にはよほど馬鹿な視聴者しか喜ばない。そこには大義がなくて個人的な憎しみだけをぶつけても共感は沸かない。
 一方で、党執行部も沈黙していては安倍から疑われると考えてか、3選支持論が盛んに出始めた。幹事長・二階俊博は「安倍首相支持は1ミリも変わっていない。外交でこれだけ成果を上げた首相はいない」と持ち上げた。なぜか眼光だけは鋭い副総裁・高村正彦に至っては「日本の平和と安全にとっても、安倍首相は余人を持って代えがたい」と持ち上げられるだけ持ち上げた。
 そもそも安倍支持の構図を見れば、細田、二階、麻生の3大派閥が 支持しており、これだけで人数は197人に達する。これは405人の自民党国会議員の半数に迫っている。シンパを含めれば3分の2は固い。これに対して岸田文男ハムレットは、禅譲路線を走るべきか戦うべきかそれが問題じゃと優柔不断。もっとも戦うにしてもとても過半数はとれる情勢にはなく、戦うことに意義があるオリンピック精神でいくしかない。しかし、この路線が政治の世界では通用するわけがない。無残な敗北は、将来の芽を自ら摘んでしまう。46人では多少は増えてもいかんともしがたいのだ。
 将来もくそもないのは石破茂だ。もっと少なく総勢20人の派閥では総裁選出馬に必要な推薦人20人を自前で確保できない。自分は数えないから19人しか推薦人がいないのだ。1人や2人は集まるだろうが、それではとても安倍には歯が立たない。TBSもテレビ朝日も的確な分析が出来るコメンテーターがゼロで、放送法違反すれすれの反安倍色の強い情報番組をやっているが、昔から民放テレビの無能さは度しがたい。
 加えて安倍政権は安倍の外交指向に近隣諸国の情勢が作用して、外交日程が押せ押せになっている。極東緊張緩和が大きく動こうとしている。9日には東京で日中韓首脳会談とこれに合わせて日中、日韓首脳会談がそれぞれ行われる。約2年半ぶりとなる会談は北朝鮮の完全な非核化に向けた具体策や、米朝首脳会談に向けた連携を確認する。5月下旬には日露首脳会談。6月8日、9日には先進7か国首脳会議がカナダで開催される。同月中旬までには米朝首脳会談が予定され、これに加えて日朝首脳会談も浮上するだろう。マスコミは内閣支持率が30%台に落ち込んだと批判するが、外交で持ち直すだろう。そもそも30%台などは通常の政権だ。佐藤政権などは長期に30%台だった。
 こうした重要な外交日程を前にして野党が国会で、つまらぬ森友だの加計だので安倍の足を引っ張れば朝日や民放がはやし立てても、世論からブーメラン返しに合うだろう。既に昨年の総選挙が証明したとおりだ。野党は追及すべき外交、政策課題は山積しており、モリだのカケだのと無為無策のまま6月20日の会期末を迎えるべきではない。しかし、結果的には安倍は終盤国会を乗り切るだろう。そうすれば、9月の総裁選挙まで3か月。安倍は事実上有利な態勢のまま総裁選に突入する公算が大きい。最近安倍はいい顔になってきた。
◎俳談
  【打座即刻の重視】
  俳句は「その瞬間」を詠む詩である。したがって過去形は極めて少ない。たとえ過去を詠んでも過去形にはならない。
 翡翠の一直線なり一途なり 杉の子
  見たのは以前であっても現在形である。この作詩形式を石田波郷は打座即刻の詩(うた)と形容した。ぽんと膝を打つ瞬間であるというのだ。
白魚の四つ手に跳ねて発光す 東京俳壇入選
四つ手が上がったその瞬間を詠んだ。
  五七五が最短詩に昇華するには、常識と時の流れを切断しなければならない。切断して今現在という、目の前にある間一髪の現象を捉える。芭蕉の言に寄れば「間を入れぬ」判断である。
 古池や蛙飛び込む水の音
にも
閑けさや岩にしみいる蝉の声
にも打座即刻の妙が詠われている。
  「間を入れぬ」判断とは、ひらめきと直感であろう。眼がものを見て、脳に伝え、その瞬間詩情が働く。働かなければ働くように訓練する。これが作句のポイントである。
その刹那初蝶鵯(ひよ)を躱しけり 杉の子
                                

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