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◎非核化合意とは「金王朝維持の保証」

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◎非核化合意とは「金王朝維持の保証」
 具体策は米朝会談に棚上げ
 「板門店宣言」はきっかけに過ぎない
  悠久たる歴史の流れからみれば、南北首脳会談は極東平和に紛れもなく貢献するが、多くの疑問も残した。韓国大統領の文在寅と北朝鮮朝鮮労働党委員長金正恩は27日、歴史に残る南北首脳会談を終え、「半島の完全非核化」に向けて合意し、平和協定の締結を目指すことで一致した。しかし、両首脳の談笑とは裏腹に、北朝鮮の核兵器破棄の具体策は1歩も進む気配はなく、金正恩とトランプの米朝首脳会談までに北朝鮮が譲歩する意思があるかは依然不透明だ。逆に経済的な困窮から実利を求める金正恩の姿が目立った。極東情勢の緊張緩和は歓迎すべきだが、散々世界を欺いてきた北朝鮮である。油断は禁物だ。
 紛れもなく歴史に残る「板門店宣言」の中核部分は、韓国と北朝鮮が「朝鮮半島の完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共通目標を確認した」という部分だ。だが、この「完全な非核化」の表現は、北が譲歩したと受け止めるべきではない。あくまで「朝鮮半島の非核化」なのであり、在韓米軍が含まれているのだ。条件付きなのだ。加えて、宣言には非核化のプロセスは一切含まれておらず、抽象的な表現にとどまっており、具体的な措置にも言及していない。宣言では「核」「非核化」への言及は4回しかなかったものの、「平和」という単語が11回使われた。これは南北の緊張緩和と関係改善をプレーアップする性格の会談であったことを物語る。つまり、南北首脳会談では具体的な措置を米朝首脳会談に委ねることになった。南北会談は米朝首脳会談に向けての“橋渡し”にとどまり、焦点は米朝会談に移行したことを意味する。
 核廃棄という大事を進めるためには、具体的には地道な合意の積み重ねが必要となる。まず定期的な首脳会談の継続だが、これは今秋にも文在寅が平壌を訪問することで実現することになろう。金大中政権は対話や経済支援により変化を促す「太陽政策」を推し進めたが、結局は失敗した。どうしても南北2国間だけでは埋められない溝が生じてしまうのだ。ここはやはり、米朝首脳会談で最終的な妥結を目指す必要があるのだ。もともと今回の南北会談は米朝会談への予備的協議の性格を有するものであった。トランプは先に行われたポンペイオと金正恩の会談を見て、南北首脳会談で一定の流れが出たと判断しているようだ。これまでの高圧的な態度を急速に転換させ始めている。トランプは「みんなは『私が核戦争を起こす』と言ったが、核戦争は弱腰の人間が起こす。これまで『小さなロケットマン』とか『私の核のボタンの方が大きい』と発言したが、暴言だった。北はこちらが要求する前に、私が発言する前に諦めた。私はうまくやっているのだ」と述べているが、まだ北が具体策に言及していないうちから“自画自賛”しているのは相変わらず浅薄だ。
 トランプは、極東安保の全てが、自分と金正恩との会談に移されたということを自覚すべきだ。北は開発した核をどうするのか。放棄するのか保有し続けるのか。もちろん廃棄の規模や時期については何ら分かっていない。ただ分かっているのは非核化とは「金王朝体制の保証」なのだ。従って「非核化」の文言に具体性がない限り、トランプは制裁緩和や体制の保証などの対価を与えるべきではない。最終的に核製造施設と核兵器の解体、核物質の海外への移転、国際原子力機構(IAEA)による査察の徹底などを経てこそ対価があり得ることを明確に提示すべきである。首相・安倍晋三が「今回の会談を受け、米朝会談を通じて、北朝鮮が実体的な行動を取る事を期待する」と述べているが、これが正しい。おそらく安倍は先の訪米でトランプに提言すると共に、対処方針で合意に達しているのだろう。
 日朝関係も前向きに進める必要がある。拉致問題もさることながら、極東安保の観点からも、日本も積極的に関与する必要がある。国交正常化の動きは既に首相小泉純一郎が2002年の金正日との会談で平壌宣言をまとめている。内容は「両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した」というものだ。しかし、拉致問題が進展しなくなったことや、2006年に北朝鮮政府がミサイル発射実験や核実験を強行して、有名無実化した状態となっている。こうした例にならって安倍は米国と連携しつつも機を見て積極的行動に出る必要があろう。
 ◎俳談
【歌枕を詠む】
 古歌に読み込まれた諸国の名所を歌枕と言うが、それ故に俳句に地名を読み込むときには注意が必要である。なぜなら、地名の持つ余韻がその俳句に規範として働くからである。
  芭蕉は俳句に歌枕を入れることについて
「名所の句のみ雑の句にもありたし。季を取り合わせ、歌枕を用ゆる、17文字にはいささか志述べがたし」
と述べている。名所の句には無季の句があってよいというのである。季語と歌枕と並列すると詠みきれないというのである。要するに季語を入れたら地名を入れない。地名を入れたら季語を入れないのが原則であるというのだ。俳句の場合はどうしても季語が優先するから、安易に地名を入れてはならぬということになる。俳句では季語と歌枕がバッティングしすぎるのである。
 翻って、朝日俳壇の長谷川櫂の選句を見ると、明らかに芭蕉の教えを意識して守っているところが伺える。
 沖縄や悲しき歌を晴晴と
という句を選句して、コメントを付け「地名が一句にはいるとき、季語不要の場合がある」と述べている。俳聖の教えは今でも通用するから凄い。

[5429] 東北福祉大学講義録 - その④ その③

[5429] 東北福祉大学講義録 - その④ Name:浅野勝人 NEW! Date:2018/04/27(金) 23:02 
 
[5429] 東北福祉大学講義録 - その④ Name:浅野勝人 NEW! Date:2018/04/27(金) 23:02 
 
東北福祉大学講義録 - その④
朝鮮半島非核化と東アジア情勢
東北福祉大学客員教授  シンクタンク安保研理事長  浅野勝人

私は、一昨年の秋、子どもの頃からあこがれていた孫悟空を探しに西域を旅しました。シルクロードといった方がわかりやすいかもしれません。
西安で三蔵法師には たっぷり会えましたが、孫悟空は見つかりませんでした。それで敦煌に足を延ばしました。そして、タクラマカン砂漠東端に連なる広大なクムタグ砂漠を越えて、楡林窟にたどり着き、遂に念願の孫悟空に会うことができました。
第3窟西壁全面を占める「普(ふ)賢(げん)菩薩図」の右端中ごろに、天竺(インド)からの帰途、白馬を連れた三蔵法師と供の孫悟空が五台山の方角に向かって合掌している「玄奘(げんじょう)取経図」が描かれています。
“遂に孫悟空に会えた”という感動が伝わってきました。
西域ひとり旅の帰り、チンギス・ハーンに会うために蘭州に立ち寄りました。モンゴルにはチンギス・ハーンの遺跡はありません。墓探しも禁じられています。ところが、タングート族の侵略から中国を守ったチンギス・ハーンの功績を讃えて、蘭州郊外の興隆山に慰霊のための大雄寶殿が建てられており、大ハーンの大きな座像が祀られています。
登山口山門付近で掃除をしていた70才そこそこと見受ける男の人から、突然、話しかけられました。

「あんた、どこの人だね。中国人ではないみたいだ」
「東京から来ました。日本人です」
「やっぱりそうか。本物の日本人を見るのは初めてだが、こんな
ところまで何しに来たのかね?」
「ここにお祀りしてあるチンギス・ハーンをお参りに来ました」
「私のおじいさんや親の兄弟は、あらかた『9・18』か、『抗日戦争』で日本人に殺された。母親から日本人は鬼より怖い畜生だとさんざん聞かされて育ってきた。あんたを見て、ひょっとしたら日本人ではないかと思ったのだが、普通の人に見たので頭が混乱して、つい確かめたくなって声をかけてしまった」
「よく声をかけてくれました。とてもうれしいです。おっしゃる通り、かつて日本軍が中国を侵略して、多くの人を殺したり、傷つけたりしました。あれは当時の軍隊のやったことで、現在の日本人には関係のない昔の出来事だったとは申せません。日本民族の仕出かした過ちですから、当然、私たちに責任があり、懺悔(ざんげ)しています。
ただ、45年前、毛沢東、周恩来と日本政府代表との間で、これからはお互いに仲良くしていこうと誓い合いました。日本人は、その約束を守ってきたし、今後も守ります。
日本人は、ただ、ただ平和を願っている人ばかりです。二度と戦争はしないと誓っています」
「日本人でも、あんたみたいな“いい人”もいるんだ」

会話はそこで途切れました。
オマエはいい人のようだが、あとの日本人は悪いヤツばかりに違いないという余韻を引きずっていました。
長い間の怨念を払しょくするには、並大抵の努力では足りないと改めて教えられた思いでした。

日本政府と日本人の中国に対する寛容と忍耐の精神は、必ずしも十分と申せませんが、私は日中国交正常化以来、46年間、ひたすら日中間の厚い氷を融かす「融冰之旅」を続けて参りました。私のような日本人は幾らもいます。
皆さんもわたしの後に続いてください。
今日は、歴史的転換期にある極東の動向を見る目を君たちに養ってもらうための講義でした。

☆これで講義を終わりますが、ひと言申し上げたい。
私が東北福祉大学と縁をいただいたのは、前学長の萩野浩基先生とたいへん親しいお付き合いをさせて頂いていたからです。私と同じ経歴で衆参両院の議員を経験した尊敬する友でした。
迷いごとにぶつかると、先生の著書「感性のとき」を繰り返し紐解いています。

知的障碍を持った私の知る山田ミキちゃん(生活年齢30才)のことである。
ベランダでミキちゃんの妹が学校の観察用に育てたトマトが夏になり、やっと赤く色づいてきた。
これを見たミキちゃんはなんと叫んだであろうか。
「トマトが咲いた。トマトが咲いた。」と喜び叫び続けた。
また、ミキちゃんは、湖にボートが浮かんでおり、ボートを若い二人が一生懸命漕いでいるのを見て喜びの声を上げた。
「ほら、あそこに、ボートが泳いでいる、ほらゆっくりボートが泳いでいる。」
何百冊の哲学書を読むよりも、どんな学識のある人の話を聞くよりも、「トマトが咲いた。」「ゆっくりボートが泳いでいる。」が、なぜか感性的に心の底に深く響いてくる。その響きこそ忘れている大切なものに思えてならない。
「この子に世の光をではなく、この子らから世に光を」と
いいたい。
福祉という言葉がしきりに使われているが、福祉とは人間として「幸」(生きること)への素朴な限りない追及と尊厳ある自己実現の歩みである。
福祉の目指すところは生きる喜びに満ちた人間生活の実現である。福祉への歩みとは、健常者も障碍者も人間がよりよく生きるために環境、身体、精神そして社会体系をも再構築し、他と共生共存できるように努力することである。

「感性のとき」は、東北福祉大学のバイブルだとわたしは思っています。東北福祉大学の学生なら、全員持っているかと思ったらそうでもない。喫茶店で飲むコーヒー2杯分です。まだ持っていない人は、校内の本屋さんで購入して、一生手元に置くことを薦めます。(元内閣官房副長官)
[5428] 東北福祉大学講義録 ー その③ Name:浅野勝人 NEW! Date:2018/04/27(金) 17:48 
 
東北福祉大学:講義録ーその③
朝鮮半島非核化と東アジア情勢
東北福祉大学客員教授  シンクタンク安保研理事長 浅野勝人

以上、知り得る情報を分析し、これまで集積してきた安保政策から判断して、国際関係論の地政学的立場を踏まえて持論を述べてきました。私は正論だと思っています。

☆そこで、ちょっと脱線して、歴史上、数えきれないほどあった政治的謀略手段が、今回の事態収拾の手立てとして検討されているか、いないか触れてみます。
「北朝鮮問題を解決するいい方法はありませんか。あなたの解決策を伺いたい」とよく聞かれます。私は遠慮しないではっきり答えることにしています。「ピンポイントで金正恩本人を排除することです。
実現出来たら一挙に問題が解決されて、北朝鮮の人々は幸せになります」と申しています。
これは、問題解決策としては非人道的な悲しい手法のように映りますが、アメリカ議会でも討議、検討の対象になっていますし、情報専門誌には公然と指摘されています。もちろんCIA(中央情報局)や軍が私と同じ考えを持っていないはずはありません。
ただ、説起来容易、做起来很难。言うは易く、行うは難しです。
アメリカが独裁者を狙ってピンポイント爆撃に成功したリビアやイラクのような例はいくらもありますが、いずれもスパイがわんさかいて情報が豊富でした。
北朝鮮の場合は、個人情報は皆無です。せいぜいアメリカのスパイ衛星くらいでは、個人の居場所を的確に掌握するのは無理でしょう。従って、この手立ては北朝鮮の場合は実現困難だと思われます。
その上、金正恩が米朝首脳会談を行い、話し合いで問題を解決したいと提案しましたので、個人排除の模索は影を潜めたとみるべきです。

☆もうひとつ、私は金正恩はパラノイヤではないかと疑っています。
パラノイヤは、病的な疑い深さを伴う内因性精神病の一種で、内心にいつも強烈な妄想を抱いています。ところが、厄介なことに頭脳明晰で、戦略思考に長(た)け、表向きの論理は一貫していて、行動・思想の秩序が保たれています。
北朝鮮ウオッチャーの第一人者で仲良しの寺田輝介元韓国駐在大使によると、これまでに側近が300人以上粛清されているそうです。
世界があっと驚いたのは、ナンバー2の実力者で、自分をサポートしている叔父の張成沢(チャン ソンテク)国防副委員長を突如処刑したことでした(2013/12月)この時、側近の李龍河(リ ヨンハ)行政部第一部長(日本の大臣)と張秀吉(チャン スギル)行政部副部長(日本の副大臣)も一緒に処刑されました。
2016/1月、平壌に開館した「科学技術の殿堂」の屋根の形をムクゲの花に変えるよう指示した折、資材や強度の関係から「変えない方が安全です。」と建築学的見地から正直に工事の変更を断った国家計画委員会副委員長は即刻処刑されました。
どうみてもおかしい。普通じゃない。
ヒットラーとスターリンの研究家が、行きつく先はパラノイヤでした。そうでないと、ヒットラーやスターリンが、当初、国民の熱狂的な支持を得て強行した途方もない虐殺・粛清の説明がつきません。

一方のドナルド・トランプですが、政権発足(2017/1月20日)から1年3ヵ月余りのうちに約半数の政府高官が解任や辞任で去り、交代率 約50%。「少なくとも過去100年はなかった」異常な事態となっています。
政権発足後、まもなく側近のマイケル・フリン大統領補佐官が解任されてビックリしましたが、後任の国家安全保障問題担当補佐官・マクマスター将軍も、解任されたのか、嫌気がさして辞めたのか、ホワイトハウスを去りました。
フリ―パス大統領首席補佐官も更迭され、驚いたのは側近中の側近、大統領選挙を仕切ってトランプ勝利の原動力となったバノン首席戦略官が解任されて喧嘩別れとなりました。
突如、FBI・連邦捜査局のトミー長官をクビにしたのは、大統領本人にまつわるロシア疑惑の捜査を止めないことの腹いせというのが本音と言われています。いま、二人はメデイアを通じてののしり合っています。
もっと驚いたのは、つい先頃、ハト派の色合いの濃いディラーソン国務長官が解任されたことです。国務長官といえば、各国の外務大臣です。解任されたディラーソンは「トランプは愚か者が」と言っています。保険福祉長官(トム・プライス)、金融大臣に当たる国家経済会議委員長(ゲイリー・コーン)、アメリカでは重要ポストの退役軍人長官(デビット・シュルキン)、クビになった閣僚級を数え上げからキリがありません。主要ポストで残っているのは、大統領が勝手に辞めさせられない副大統領とクビを切ったら自分がやられかねない全軍尊敬の的・マティス国防長官くらいですから、日本でいえば大物の防衛大臣を除いて閣僚はあらかたクビを切られたという異様な光景です。こちらもまともじゃないという気がしてなりません。
政府の高官を解任されるのは、形を変えた粛清と同じです。
ホアイトハウスに「大統領はパラノイアではないか」という噂が立っているというアングラ情報を聞いても驚きません。
「ロケット・ボーイ」も「生き馬の目を抜く不動産王」もちょっと似たところがありますから、トランプ・金正恩の米朝首脳会談は、頭のいい変人同士、意外と気が合って、世界をあっと驚かせる結果を出すかもしれないと、妙な期待をしています。
- その④
朝鮮半島非核化と東アジア情勢
東北福祉大学客員教授  シンクタンク安保研理事長  浅野勝人

私は、一昨年の秋、子どもの頃からあこがれていた孫悟空を探しに西域を旅しました。シルクロードといった方がわかりやすいかもしれません。
西安で三蔵法師には たっぷり会えましたが、孫悟空は見つかりませんでした。それで敦煌に足を延ばしました。そして、タクラマカン砂漠東端に連なる広大なクムタグ砂漠を越えて、楡林窟にたどり着き、遂に念願の孫悟空に会うことができました。
第3窟西壁全面を占める「普(ふ)賢(げん)菩薩図」の右端中ごろに、天竺(インド)からの帰途、白馬を連れた三蔵法師と供の孫悟空が五台山の方角に向かって合掌している「玄奘(げんじょう)取経図」が描かれています。
“遂に孫悟空に会えた”という感動が伝わってきました。
西域ひとり旅の帰り、チンギス・ハーンに会うために蘭州に立ち寄りました。モンゴルにはチンギス・ハーンの遺跡はありません。墓探しも禁じられています。ところが、タングート族の侵略から中国を守ったチンギス・ハーンの功績を讃えて、蘭州郊外の興隆山に慰霊のための大雄寶殿が建てられており、大ハーンの大きな座像が祀られています。
登山口山門付近で掃除をしていた70才そこそこと見受ける男の人から、突然、話しかけられました。

「あんた、どこの人だね。中国人ではないみたいだ」
「東京から来ました。日本人です」
「やっぱりそうか。本物の日本人を見るのは初めてだが、こんな
ところまで何しに来たのかね?」
「ここにお祀りしてあるチンギス・ハーンをお参りに来ました」
「私のおじいさんや親の兄弟は、あらかた『9・18』か、『抗日戦争』で日本人に殺された。母親から日本人は鬼より怖い畜生だとさんざん聞かされて育ってきた。あんたを見て、ひょっとしたら日本人ではないかと思ったのだが、普通の人に見たので頭が混乱して、つい確かめたくなって声をかけてしまった」
「よく声をかけてくれました。とてもうれしいです。おっしゃる通り、かつて日本軍が中国を侵略して、多くの人を殺したり、傷つけたりしました。あれは当時の軍隊のやったことで、現在の日本人には関係のない昔の出来事だったとは申せません。日本民族の仕出かした過ちですから、当然、私たちに責任があり、懺悔(ざんげ)しています。
ただ、45年前、毛沢東、周恩来と日本政府代表との間で、これからはお互いに仲良くしていこうと誓い合いました。日本人は、その約束を守ってきたし、今後も守ります。
日本人は、ただ、ただ平和を願っている人ばかりです。二度と戦争はしないと誓っています」
「日本人でも、あんたみたいな“いい人”もいるんだ」

会話はそこで途切れました。
オマエはいい人のようだが、あとの日本人は悪いヤツばかりに違いないという余韻を引きずっていました。
長い間の怨念を払しょくするには、並大抵の努力では足りないと改めて教えられた思いでした。

日本政府と日本人の中国に対する寛容と忍耐の精神は、必ずしも十分と申せませんが、私は日中国交正常化以来、46年間、ひたすら日中間の厚い氷を融かす「融冰之旅」を続けて参りました。私のような日本人は幾らもいます。
皆さんもわたしの後に続いてください。
今日は、歴史的転換期にある極東の動向を見る目を君たちに養ってもらうための講義でした。

☆これで講義を終わりますが、ひと言申し上げたい。
私が東北福祉大学と縁をいただいたのは、前学長の萩野浩基先生とたいへん親しいお付き合いをさせて頂いていたからです。私と同じ経歴で衆参両院の議員を経験した尊敬する友でした。
迷いごとにぶつかると、先生の著書「感性のとき」を繰り返し紐解いています。

知的障碍を持った私の知る山田ミキちゃん(生活年齢30才)のことである。
ベランダでミキちゃんの妹が学校の観察用に育てたトマトが夏になり、やっと赤く色づいてきた。
これを見たミキちゃんはなんと叫んだであろうか。
「トマトが咲いた。トマトが咲いた。」と喜び叫び続けた。
また、ミキちゃんは、湖にボートが浮かんでおり、ボートを若い二人が一生懸命漕いでいるのを見て喜びの声を上げた。
「ほら、あそこに、ボートが泳いでいる、ほらゆっくりボートが泳いでいる。」
何百冊の哲学書を読むよりも、どんな学識のある人の話を聞くよりも、「トマトが咲いた。」「ゆっくりボートが泳いでいる。」が、なぜか感性的に心の底に深く響いてくる。その響きこそ忘れている大切なものに思えてならない。
「この子に世の光をではなく、この子らから世に光を」と
いいたい。
福祉という言葉がしきりに使われているが、福祉とは人間として「幸」(生きること)への素朴な限りない追及と尊厳ある自己実現の歩みである。
福祉の目指すところは生きる喜びに満ちた人間生活の実現である。福祉への歩みとは、健常者も障碍者も人間がよりよく生きるために環境、身体、精神そして社会体系をも再構築し、他と共生共存できるように努力することである。

「感性のとき」は、東北福祉大学のバイブルだとわたしは思っています。東北福祉大学の学生なら、全員持っているかと思ったらそうでもない。喫茶店で飲むコーヒー2杯分です。まだ持っていない人は、校内の本屋さんで購入して、一生手元に置くことを薦めます。(元内閣官房副長官)
[5428] 東北福祉大学講義録 ー その③ Name:浅野勝人 NEW! Date:2018/04/27(金) 17:48 
 
東北福祉大学:講義録ーその③
朝鮮半島非核化と東アジア情勢
東北福祉大学客員教授  シンクタンク安保研理事長 浅野勝人

以上、知り得る情報を分析し、これまで集積してきた安保政策から判断して、国際関係論の地政学的立場を踏まえて持論を述べてきました。私は正論だと思っています。

☆そこで、ちょっと脱線して、歴史上、数えきれないほどあった政治的謀略手段が、今回の事態収拾の手立てとして検討されているか、いないか触れてみます。
「北朝鮮問題を解決するいい方法はありませんか。あなたの解決策を伺いたい」とよく聞かれます。私は遠慮しないではっきり答えることにしています。「ピンポイントで金正恩本人を排除することです。
実現出来たら一挙に問題が解決されて、北朝鮮の人々は幸せになります」と申しています。
これは、問題解決策としては非人道的な悲しい手法のように映りますが、アメリカ議会でも討議、検討の対象になっていますし、情報専門誌には公然と指摘されています。もちろんCIA(中央情報局)や軍が私と同じ考えを持っていないはずはありません。
ただ、説起来容易、做起来很难。言うは易く、行うは難しです。
アメリカが独裁者を狙ってピンポイント爆撃に成功したリビアやイラクのような例はいくらもありますが、いずれもスパイがわんさかいて情報が豊富でした。
北朝鮮の場合は、個人情報は皆無です。せいぜいアメリカのスパイ衛星くらいでは、個人の居場所を的確に掌握するのは無理でしょう。従って、この手立ては北朝鮮の場合は実現困難だと思われます。
その上、金正恩が米朝首脳会談を行い、話し合いで問題を解決したいと提案しましたので、個人排除の模索は影を潜めたとみるべきです。

☆もうひとつ、私は金正恩はパラノイヤではないかと疑っています。
パラノイヤは、病的な疑い深さを伴う内因性精神病の一種で、内心にいつも強烈な妄想を抱いています。ところが、厄介なことに頭脳明晰で、戦略思考に長(た)け、表向きの論理は一貫していて、行動・思想の秩序が保たれています。
北朝鮮ウオッチャーの第一人者で仲良しの寺田輝介元韓国駐在大使によると、これまでに側近が300人以上粛清されているそうです。
世界があっと驚いたのは、ナンバー2の実力者で、自分をサポートしている叔父の張成沢(チャン ソンテク)国防副委員長を突如処刑したことでした(2013/12月)この時、側近の李龍河(リ ヨンハ)行政部第一部長(日本の大臣)と張秀吉(チャン スギル)行政部副部長(日本の副大臣)も一緒に処刑されました。
2016/1月、平壌に開館した「科学技術の殿堂」の屋根の形をムクゲの花に変えるよう指示した折、資材や強度の関係から「変えない方が安全です。」と建築学的見地から正直に工事の変更を断った国家計画委員会副委員長は即刻処刑されました。
どうみてもおかしい。普通じゃない。
ヒットラーとスターリンの研究家が、行きつく先はパラノイヤでした。そうでないと、ヒットラーやスターリンが、当初、国民の熱狂的な支持を得て強行した途方もない虐殺・粛清の説明がつきません。

一方のドナルド・トランプですが、政権発足(2017/1月20日)から1年3ヵ月余りのうちに約半数の政府高官が解任や辞任で去り、交代率 約50%。「少なくとも過去100年はなかった」異常な事態となっています。
政権発足後、まもなく側近のマイケル・フリン大統領補佐官が解任されてビックリしましたが、後任の国家安全保障問題担当補佐官・マクマスター将軍も、解任されたのか、嫌気がさして辞めたのか、ホワイトハウスを去りました。
フリ―パス大統領首席補佐官も更迭され、驚いたのは側近中の側近、大統領選挙を仕切ってトランプ勝利の原動力となったバノン首席戦略官が解任されて喧嘩別れとなりました。
突如、FBI・連邦捜査局のトミー長官をクビにしたのは、大統領本人にまつわるロシア疑惑の捜査を止めないことの腹いせというのが本音と言われています。いま、二人はメデイアを通じてののしり合っています。
もっと驚いたのは、つい先頃、ハト派の色合いの濃いディラーソン国務長官が解任されたことです。国務長官といえば、各国の外務大臣です。解任されたディラーソンは「トランプは愚か者が」と言っています。保険福祉長官(トム・プライス)、金融大臣に当たる国家経済会議委員長(ゲイリー・コーン)、アメリカでは重要ポストの退役軍人長官(デビット・シュルキン)、クビになった閣僚級を数え上げからキリがありません。主要ポストで残っているのは、大統領が勝手に辞めさせられない副大統領とクビを切ったら自分がやられかねない全軍尊敬の的・マティス国防長官くらいですから、日本でいえば大物の防衛大臣を除いて閣僚はあらかたクビを切られたという異様な光景です。こちらもまともじゃないという気がしてなりません。
政府の高官を解任されるのは、形を変えた粛清と同じです。
ホアイトハウスに「大統領はパラノイアではないか」という噂が立っているというアングラ情報を聞いても驚きません。
「ロケット・ボーイ」も「生き馬の目を抜く不動産王」もちょっと似たところがありますから、トランプ・金正恩の米朝首脳会談は、頭のいい変人同士、意外と気が合って、世界をあっと驚かせる結果を出すかもしれないと、妙な期待をしています。

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