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◎北方領土で衆参ダブル選挙は無理

◎北方領土で衆参ダブル選挙は無理
  プーチンに「返還」の力なく、交渉長期化へ
 ロシアの経済的疲弊がポイント
  さすがに怪僧ラスプーチンの国だ。ラスの字はつかないがプーチンも怪僧並みに狡猾だ。4島返還にこだわってきた日本が「2島+アルファ」に舵を切ったと見ると、プーチンはハードルを上げた。首相・安倍晋三はいいように操られている時ではない。立場の違いが際立った以上、ソ連にどさくさ紛れに占領された北方の小さな島々などで焦らない方がよい。またロシアとは親戚づきあいなどできないと肝に銘ずるべきだ。交渉の長期化は避けられない。
 安倍が、責任上あの手この手を考えるのは当然だが、25回も会談しても、会談したことだけに意義があるのではオリンピック精神と同じだ。プーチンは、安倍が「4島返還」から「2島」に変わったとみるや、歴史認識を持ち出した。歴史認識は文在寅のおはこで、もはや文在寅退任まで韓国と正常な対話は無理かと思いたくなるが、これに加えてプーチンまで歴史認識だ。戦後70年もたって、周辺国が歴史認識を取り上げるのは、誠実な日本が反省して痛がるからだ。これでは交渉の体をなしていない。従ってまともに応じる必要はない。安倍はプーチンと6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で再会談するが、ロシア側が平和条約をめぐる溝を埋める動きに転換する可能性はない。覚悟を決めて腰を据えた交渉で対応するしかない。
 ロシアの基本認識は「第二次大戦の結果として北方領土がロシア領になったことを認めよ」(ラブロフ外相)だ。しかし、これは認識上の誤りであり、受け入れることは不可能だ。北方領土は、ずる賢いソ連が戦争直後のどさくさを絶好の機会とみて占領したのだ。日本が1945年8月にポツダム宣言を受諾して、無防備になったのをチャンスととらえて日ソ不可侵条約を無視して日本の領土を不法占拠したのだ。まるでラスプーチンのように陰謀の国なのだ。
 歴史認識を持ち出したことは、日本に交渉の主導権を握られないようにする「先手」でもある。ロシアが交渉の主導権を握るための材料なのだ。一方で領土で譲歩すればプーチンの立場が危うくなる。 ロシア人は広大な領土を持ちながら周辺地域をなんとしてでも入手しようという“欲深い”民族なのである。ロシアによるクリミア・セヴァストポリの編入がそれだ。国際的にウクライナの領土と見なされているクリミア自治共和国のセヴァストポリ特別市をロシア連邦の領土に加えた。1991年のソビエト連邦崩壊・ロシア連邦成立後、ロシアにとって本格的な領土拡大となった。2度目の領土簒奪が北方領土だが、ウクライナと異なり日本という“経済大国” が真っ向から異を唱えている。
 一方で領土で譲歩すればプーチンの国内的な立場は危機的になることを、プーチンは知りすぎるほど知っているのだ。そこに突破口を開くことを安倍は狙わざるをえないのだ。安倍は周辺に「大変なのは、島にロシアの自国民が住んでいることだ。プーチンには『私が決めたことだ』と国内を抑えて、一発でやってもらわないといけない」と戦略を漏らしているが、安倍もお人好しだ。わざわざ手の内を朝日に書かれてしまっている。たしかに唯一可能性があるとすれば領土でプーチンが独断で解決するシナリオだが、厳しいロシア政局で反対勢力を抑えて大統領になったプーチンがそんなに甘いかと言えば、逆だろう。安倍はプーチンとの関係を時々誇示するが、プーチンは個人的な関係と、現実の外交とはきっぱりと分けて考えている。
 従って安倍の訪露は、具体的な解決策を見いだせないまま終わった。領土交渉は一筋縄ではいかない現実を露呈した。沖縄の施政権返還ですら佐藤栄作は対米交渉で散々苦労したが、ましてや主権が伴う領土交渉である。唯一進展の可能性があるのはプーチンが独断で領土問題の解決を目指すケースだが、正直言って、プーチンはそれほど甘くはない。
 プーチンは『日本の要求に簡単には応じられない。平和条約の締結が先だ』と日ソ共同宣言に書いてある」と突っぱねている。日ソ共同宣言は、1956年に日本とソ連がモスクワで署名し、同年12月12日に発効した。内容は「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」とある。たしかに平和条約が「先」なのである。
 安倍はプーチンに足元を見られている気配が濃厚だ。北方領土前進で参院選を戦おうとしていると読まれたのだ。ラブロフに至っては北方領土の呼称にすら、異論を唱えている。しかし、今更北方領土が返ってこないからといって、安倍に不平を言う日本人はいない。ことは外交能力の問題でもない。かつてのロシアの歴史が証明しているように、国内政治が大きくつまずき、領土の切り売りが始まるのを待つしか方途は考えられない。したがって親戚付き合いを目指すような甘い顔は見せないことだ。もちろん2度目の会談をしても、夏の参院選挙を北方領土をテーマにすることなどは無理であり、ましてや北方領土で衆参同日選挙を行うことも、「無条件返還」などよほどのテーマが出ない限り困難だ。ここは成果を急ぐ必要はない。より一層のロシアの経済低迷が、変化を生じさせる時を期待し、粛々と正道を歩むべき時だ。
◎俳談
【象徴俳句】
 鉄の風鈴は何といっても姫路名産の明珍火箸に限る。鉄火箸の繊細な音色は心の奥まで響いてきて、夏の宵に趣を添える。昔高島屋で結構値段が張ったが20数年使っているから元は取れた。
風鈴を読んだ句は何といっても
黒金の秋の風鈴鳴りにけり
だ。飯田蛇笏の代表作であろう。このように達人ともなると物の存在を読んだだけで季節の姿を鮮明に表示できる。誰でもひしひしと秋を感じ、迫り来る冬を予感できる。象徴で季節を表現しているのだ。「風鈴は夏の季語だ」などと野暮なことは言わない。仕舞い忘れられた「秋の風鈴」だからこそ一句がなり立つのだ。
 暮の秋ルオーの顔のごとく行く 朝日俳壇入選
「ルオーの顔」と表現しただけで象徴俳句は完了だ。キリストも道化師も秋の暮れに物想いにふけるのだ。
冬麗の母のごとくにありしかな 産経俳壇入選
冬麗そのものを母の象徴と位置づけた。冬麗とは冬ながら春を思わせるうららかな日を言う。母は冬のうららかさを感ずる人であったと述べているのだ。象徴とは心の奥の思いを具体的な物や事象を通じて表現することだが、こればかりは多作多捨をして、辿り着く俳句の境地でもある。


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