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◎安倍はひしめく重要日程で成果を


 ◎安倍はひしめく重要日程で成果を
  任期内解散も視野に入れよ
    改憲は合区、非常事態を突破口に
  自民党総裁選は今は盛りの横綱に小結がかかったようなもので、勝負は初めからついていた。総裁・安倍晋三が石破茂の倍以上553票を獲得し、議員票では82%に達したたことは、今後の政権運営にとって紛れもない安定材料であり、内政・外交に亘る安倍路線に何ら支障は生じない。20日で2461日目を迎えた安倍は2021年9月までの3年の任期中に伊藤博文の2720日、佐藤栄作の2798日、桂太郎の2886日を越え史上最長の政権となる。安倍を支持した政調会長・岸田文男がポスト安倍の最有力候補となり、たてつく石破は今回の254票は限界だろう。岸田が出馬したら安倍支持票の大勢は岸田に向かうからだ。
 総裁選は党員・党友による地方票と合わせて開票された結果、安倍が69%にあたる553票、石破は254票となった。安倍はほとんどの派閥の支持を集め、国会議員票(402票)では8割を超える329票に達した。その一方、地方票(405票)では224票と伸び悩みを見せた。事務総長甘利明が55%と予想していたが、55.3%で辛うじてクリアした。
  安倍の勝因は何と言っても国会議員の大半の支持を得る流れを5年半の政権運営で定着させ、それによって党員票も掘り起こした結果であろう。地方票は従来からポピュリズムに流れる傾向があり、石破の「善戦」は、政治判断力が未熟な地方党員には石破の存在が大きく映った結果であろう。
 常に反安倍傾向の強いテレビ朝日、TBSなど民放番組は、悔し紛れの論評が多かった。コメンテーターが「終わりの決まったリーダーは求心力が弱くなる」としたり顔で述べていたが、相変わらずの素人の淺読みだ。民間会社でも3年もの任期がある社長が軽んじられることはない。経営権と人事権を握っているから社員は従来同様に従うのだ。安倍も毎年改造して引き締め、3年の任期中での解散を断行すべきだろう。勝てば中曽根が党規約改正によって総裁任期を1年延長した例もあり、延長してもおかしいことではあるまい。
   しかし、今後の政治日程を見れば、政局にうつつを抜かしているときは終わった。重要政治日程がひしめいている。まず来週には日米首脳会談があるし内閣改造も想定内だ。安倍は25日には国連総会出席を契機にトランプとの首脳会談を行う方向で日程を調整している。欧州、中国に黒字削減で厳しい要求を繰り返しきたトランプが、安倍と仲が良いからといって日本だけ例外にする可能性は少ない。経済再生担当相茂木敏充が、米通商代表部(USTR)代表ライトハイザーとの21日の閣僚協議でどこまで事前調整できるかがカギだ。安倍は国連総会から帰国後10月にも、内閣改造に着手し、安倍改造内閣を発足させる方向だ。副総理・麻生太郎、幹事長・二階俊博、官房長官・菅義偉は続投となりそうだ。石破派からも人材を閣僚などに起用して党内融和を取り戻すことが必要だろう。小泉進次郎は、安倍批判が目立ちすぎた。そろそろ入閣待機児童だが、閣内不一致を招く危険がある。
 30日には沖縄県知事選がある。安倍としては与党候補を勝利に導き、普天間基地の辺野古への移転を推進したい考えだろう。訪中も重要テーマだ。安倍は12日、訪問先のウラジオストクで、中国国家主席の習近平と会談、10月の訪中に向けて調整することで一致した。10月23日が平和友好条約発効40年となるため、これに合わせて訪中することになろう。安倍は来年6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせた習の来日を想定しているようだ。
 改憲問題も安倍政権の重要テーマだ。10月26日にも招集する臨時国会で論戦の火ぶたが切られる。安倍は「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と、秋の臨時国会への自民党改憲案提出を明言している。今後、改憲論議を加速させる構えだ。しかし、各種世論調査では国民の間に改憲志向が生じていない。共同の調査によると、秋の臨時国会に改憲案を提出したいとする安倍の提案に「反対」が49%で、「賛成」の36.7%を12.3ポイント上回った。日経の調査はもっと厳しく、「反対」が73%で「賛成」の17%を大きく上回っている。国民の間には改憲イコール9条という認識が強く、改憲内容をどうするかによって変わってくる。改憲論議は、もともと安倍が昨年5月、9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)の規定を維持して自衛隊を明記する案を提起したことから始まっている。改憲アレルギーを除去するためには9条を後回しにして、石破の主張するように、参院選での合区の解消や、大規模災害など非常事態の際に政府に権限を集中させ、国民の権利を制限する緊急事態条項などを手始めに考えるのも良いかも知れない。
 
◎俳談
【裏を詠む】
 「裏を読む」と言えば筆者の仕事の政局原稿のようだが、「詠む」と書けば俳句のこととなる。物事の裏には真実が隠されているが、俳句でも表の現象だけにとらわれずに裏を詠むのも一手だ。永井荷風の作といわれる「四畳半襖の下張」という春本は、かつて裁判にもなり有名だが、昔は衾や屏風の下張りに良質の和紙の古文書を張ったものだ。荷風は浅草の歓楽街や玉の井の私娼街を好み、そんな成果が実ったのか、1937年『濹東綺譚』を朝日新聞に連載、好評を得た。人情の裏に目が届く文豪だ。俳句もうまく
葉桜や人に知られぬ昼遊び   
など玉の井を詠んだとみられる句も多い。さて本題の「裏を詠む」だが荷風は
羽子板や裏絵さびしき夜の梅
と詠んだ。羽子板の表の豪華絢爛に比べて裏絵は寂しいと言っているのだが、これは人生にも通ずる。玉の井の女性を詠んだと思えば哀しさも一段と増す。夜の梅が趣を深くする。 
 昔浅草の演芸場の楽屋を見せてもらったことがあった。
楽屋裏女形(おやま)寂しき咳漏らす 産経俳壇入選
寒夕焼はなにか哀しさが伴うが、後ろを見ればもっと哀しい。
ふりむけば東は哀し寒夕焼 産経俳壇入選
 落語に「裏は花色木綿」があるが、江戸っ子は裏地を大事にした。
江戸っ子の裏地に凝れり秋袷(あわせ)  杉の子
袷は夏の季語だが、秋袷は裏地をつけて仕立てる。俳句も裏地が大事なテーマになり得る。

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