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◎俳談

 
【市を詠む】
 句会で「写楽顔」がありふれているとけなされた俳句を、新聞に投句したら入選した。
ぬぬぬぬと写楽顔出るべつたら市 日経俳談入選
である。俳句を作るには、各地で立つ市ほど材料が豊富なものは無い。東京には市が多い。べつたら市、世田谷ぼろ市、年の市、羽子板市などと続く。いずれも季語でもあるし、実際に現場を踏むと材料には事欠かない。俳句は現場ですぐ造る場合と、熟成させて造る場合があるが、私は熟成させるケースの方が圧倒的に多い。
亡き父をべつたら市で見かけしが 産経俳壇入選
は、父親そっくりの年寄りの後ろ姿を見かけて造った。はっとしたものは熟成して後で俳句になるのだ。
 世田谷のぼろ市も面白い。12月と1月の2回開かれる。
ぼろ市や本物らしき物のあり 杉の子
と言った具合だ。有馬朗人は、学者の心境であろうか
世に合わぬ歯車一つ襤褸(ぼろ)市に
と詠んでいる。
12月の半ばから大晦日にかけて各地の社寺で開かれる年の市も風情がある。暮れの寂しさのようなものを詠むと成功する。
年の市街の孤独を拾ひたり 杉の子
新潟の朝市で情景そのままを詠んだ。
釣銭の凍り付きたる朝の市 杉の子

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