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◎俳談

 ◎俳談
【働く姿】
  人間の一番美しい姿は何と言っても働く姿だろう。写真でも女性のポートレートも美しいが、作業服姿のおばさんや漁師が網を引く姿により一層引かれる。これを俳句にしない手はない。新聞俳壇のよいところは、各種各様の職業の人から投句があり、その仕事の様が分かる事であろう。例えば朝日俳壇には山間僻地の人からの
人と水こころかよはせ紙を漉く   
といった俳句が採用される。紙を漉くは冬の季語だ。
 昔、近所の工場で冬は早朝の操業開始前に、ブリキ缶に木っ端を突っ込んで焚火をするのが恒例であった。雑談をしながら焚火に当たって体を温める。そうすると、体全体がやわらかくなり、不慮の事故を起こさないのだという。その焚火からまず工場長が離れるのだ。やがて部下たちも三々五々焚火を離れる。一日の労働の始まりだ。次の句はその場面をとらえて作ったものだ。
焚火より工場長のまず離る 産経俳壇入選
 早朝の新潟行きの羽越本線で魚を大きな缶にいれたおばちゃん軍団と乗り合わせた。これを担いで新潟市内を一日売り回るのだという。重労働だが、元気いっぱいであった。しかし早朝とあって、やはり眠いと見えてやがて皆仮眠を取り始めた。そこで一句。
行商の眠る吹雪の車中かな 東京俳壇入選
冬山に登ったとき、電気工事の架線工が鉄塔に登っているのが見えた。
架線工豆粒になる寒夕焼  杉の子
攻め炊きの窯の脇なる西瓜かな 杉の子
作句のこつは人間の姿を肯定的にとらえ、単なる描写を避け、感情と共感を入れて作ることだ。

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