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◎俳談

 ◎俳談
【雪をんな出でよ】
雪をんなついてくるらしときめけり 産経俳壇入選
  正月早々告白するが、実は愛人がいる。冬になると逢いに行く愛人だ。その名を雪をんなという。雪をんなほど心を引かれる女はいないのだ。もう何句雪をんなで作句したか知れない。雪をんなは「雪女」や「雪おんな」であってはならない。あくまで「雪をんな」なのだ。旧仮名でないと気分が出ないのだ。そして雪をんなは絶世の美女なのだ。山道で追い越されて、振り向かれた瞬間に脳溢血になるほどの超絶美人なのだ。
 なぜ雪をんなが好きかというと自らが侘しい者であるからだ。侘しい者でなければ状況が成り立たないのだ。だいたい雪女の昔話はほとんどが哀れな話であり、子のない老夫婦、山里で独り者の男、そういう人生で侘しい者が、吹雪の夜風が戸を叩く音から、自分が待ち望む者が来たのではと幻想する。そこから伝説が始まったのだ。だから筆者も侘しい者でなければいけないのだ。そして、その待ち望んだものと一緒に暮らす幸せを、春の淡雪のように儚く幻想して俳句を作るのだ。だからどんどん出来るのだ。ただ大事なことが一つある。もし雪をんなが来ても、絶対に風呂に入れてはいけないのだ。消えてしまう。作り方はドラえもんの「どこでもドア」のように「どこでも雪女」なのだ。
 妻がいなければ
雪をんな出よ今宵は妻の留守
 フィギュアスケートを見れば
氷盤の乱舞に一人雪をんな
 チャイムが鳴れば
真夜中のチャイムの響き雪をんな
 終バスを女が降りれば
終バスを降りて山路へ雪をんな
 招き入れれば
四畳半どこに座らす雪をんな
 カーリング美人の目を見れば
雪をんなカーリングの眼で迫り来る
 といった具合だ。今年の冬もじゃんじゃん作らねば。もう病膏肓(こうもう)なのだ。

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