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◎日本、綱渡りの「国連決議賛成」

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◎日本、綱渡りの「国連決議賛成」
  事前に米国に根回し
 一時的ではあったが国連始まって以来の米国の完全孤立であった。国連総会緊急特別会合でトランプによるエルサレムの地位変更は無効であり撤回されるべきとする決議が可決された。トランプの実情無視、調整なしの短絡路線の失敗である。トランプや国連大使ケリーは国連分担金の削減や賛成した国への財政支援を打ち切ることをほのめかした。この金銭面でのどう喝は、まるでにわか成金のようで、一般社会と同様に国連でもひんしゅくを買った。トルコ外相チャプシオールは「各国の意思や尊厳を金で買うようなやり方は許されない」と反論。シリア代表も「米国は国連を自分の持ち物と考えて、従わないものに罰を与えようとしている」と真っ正面から批判した。国連分担金といってもアメリカは1位だが、日本は2位にもかかわらず、国連外交の非力さが祟って安保理常任理事国にもなれないままだ。日本をのぞく分担金上位6か国は全部理事国だ。ヘイリーの主張が通るなら、日本も常任理事国入りしなければ分担金を削減してもいいことになる。
 決議は日本を含む128か国の賛成多数で採択。反対は米国やイスラエルなど9か国。棄権は35か国。21か国は投票に参加しなかった。こうした動きの背後で日本政府は如何に対応すべきかについて大分苦労したようだ。選択肢としては賛成と棄権があったようだ。反対は当初からなかった。棄権した35か国の中にはカナダやオーストラリアが含まれている。両国は日本と同様に親米である。ただ日本の場合は12月が安保理議長国であり、本会議決議に先立つ安保理決議を米国を除く全参加国が賛成しているのに、議長国が棄権に回るわけにはいかなかった。この流れが本会議へとつながった。また棄権となれば米国と中東諸国の双方から非難されかねないという、あぶはち取らずの雰囲気もあった。
 さらに官房長官・菅義偉が22日の記者会見で「日本は2国家解決を支持している。エルサレムの最終的地位の問題も含めて当事者間の交渉で解決すべきだ」と発言している。イスラエル・パレスチナ双方の間では、難民、入植地、エルサレム、国境画定など個々の問題の解決を図って、イスラエルとともに共存共栄するパレスチナ国家を建設することが大目標とされている。イスラエルとパレスチナの双方が共存する「2国家解決」の実現を目指しているのだ。欧州連合(EU)も取り組む方針が2国家解決であることを改めて確認する総括文書をまとめている。これが世界的な潮流であり、その立場を取る以上一方の肩を持つ対応は不可能であった。
 とりわけ米国とカナダをのぞくヨーロッパの先進七か国(G7)が賛成に回るとの情報が、日本を賛成に踏み切らせる大きな動機となった。こうした情勢を背景に外務省は首相・安倍晋三とも相談の上、腹を決めて取りかかったのだ。とりわけ本会議決議について一部の国から米国を名指しで非難すべきだとの主張があったが、日本はこれに反対して、文章を和らげる役目を果たした。さらに重要な点は事前に米国に「賛成に回る」と通告して、日本の窮状を説明したようだ。米国に賛成の意思を伝達して理解を求めたのだ。トランプにとって日本は数少ない盟友であり、やむを得ないと判断した模様だ。
 一方米国は、自らが主導した対北朝鮮追加決議案を安保理に提出した。安保理は22日午後、北朝鮮による11月末の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けた新たな北朝鮮制裁決議を全会一致で採択した。内容は9月の決議をさらに強め①北朝鮮への石油精製品の9割削減②海外で働く北朝鮮労働者の1年以内の本国送還ーなどとなっている。厳格に履行されれば北朝鮮の経済活動への大きな打撃につながる。従って米国は国連外交で成果を上げたことになり、その孤立は一過性のものとなりそうだ。   

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