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◎俳談

◎俳談
 恋の句は短歌のようにべたべたしない。さりげなく表現して、それと表現する。
人込みに紛れまた見ゆ冬帽子 杉の子
逢引の場所に見慣れた冬帽子がやって来る。わくわくする気持ちを表現した。あくまで好きだの、愛してるだのの表現は避ける。内在する気持ちは表現せずに“それとなく”恋を読むのだ。
 鞦韆は漕ぐべし愛は奪うべし 
 三橋鷹女の句だが、鞦韆(しゅうせん=ぶらんこ)は漕ぐのがあたりまえだ。愛も奪うのが当たり前だ。と言いきって、愛の本質を描き出している。当時評判だった有島武郎の評論「惜しみなく愛は奪う」を我田に引水したものである。
走馬灯息ある限り女追う 杉の子
男の本能を詠んでみるとこうなる。放蕩でも女道楽でもない。走馬灯の馬が追い続けるように男は女を、女は男を死ぬまで追い続けるのだ。
妻二タ夜あらず二タ夜の天の川      
中村草田男の新婚時代の「妻恋」の句だ。二晩も妻がいない。天の川を見ては溜息を漏らす。そんな情感に満ちあふれている。
 

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