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本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!浅野勝人

本命の訪朝 ― 緊張緩和の糸口を期待!

安保政策研究会理事長 浅野勝人


世の中に無用の長物ふたつ有り
    国連安保理と教育委員会  詠み人知らず

 北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびに、国連安全保障理事会は緊急会議を招集する。そして、アメリカが「北朝鮮に対する圧力をさらに強化しよう。中ロは石油の全面禁輸に踏み切るべきだ」と主要各国の協調を求め、日本は全面協力と賛成し、中ロは「協力はするが、話し合い路線を放棄すべきでない」とやんわり身をかわす。お題目の繰り返しで、北朝鮮が初めてアメリカ本土に届くICBMの発射実験(11/29)をした折にもアメリカ代表の演説のトーンが一段と高まっただけです。
ちょうど、小学生、中学生がいじめを苦に自殺した事件が発生すると、当該市町村の教育委員会は、当初、「いじめとは無関係」と学校を擁護し、かばい切れなくなると「二度とこのようなことが起きないよう注意を喚起したい」と他人事のようなセリフを繰り返すだけで、まるっきり役に立ちません。

口先だけで役に立たない代名詞と思っていた国連が、北朝鮮へ事務次長(政治局長)を派遣しました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は12月5日~8日まで平壌を訪れ、北朝鮮政府幹部と核・ミサイル開発・発射実験によって緊迫している朝鮮半島情勢について協議しています。

6日には朴明国(パクミョングク)外務次官と会談しました。
会談の冒頭、朴次官は「このようにせっかくお迎えしたので、真摯に話し合おう」と述べ、朝鮮中央通信は「互いが関心を持つ問題について意見交換した」とだけ伝えました。
フェルトマン事務次長と李容浩(リヨンホ)外相との会談は決まっていますが、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との会見が今日、帰国するまでに実現するかどうか、今の時点(8日、午前0時)では不明です。

核・ミサイル開発を禁じる国連安保理の決議を履行するよう求める国連の立場とアメリカを中心とする国連の北朝鮮制裁決議に反発する「北」の主張とは真っ向から対立しています。
従って、緊張緩和のきっかけが簡単につかめる情況ではありませんが、今回のフェルトマン平壌訪問は、今年の9月、北朝鮮から「政策対話」の要請を受けて、国連が派遣して実現した経緯(いきさつ)を重視する必要があると考えます。国連事務総長報道官が「訪問は北朝鮮による以前からの要請に応じたもの」と舞台裏を明かしているのは意味があるとみるべきです。
中国やロシア、もちろんアメリカに対してわずかな弱みも見せられない北朝鮮としては、自らの言い分を主張する相手に国連を選んだと推測すれば、緊張緩和に向けた話し合いの糸口になるのではないかと期待されます。今回の出会いが、国連をいわば仲介役にするきっかけとなれば大成功です。

同時に「米・北」軍事衝突の懸念も無視できない情況にあります。
仮に軍事衝突に至った場合、米軍の軍用機は1万3,700機余り、空母10隻に対し、「北」は1,000機にも満たず、空母は1隻もありません。戦力においては比較になりません。ところが、「北」は韓国、日本をカバーする中距離および準中距離ミサイルを200発余持っており、各地方に分散して地下に隠しています。開戦と同時に1基残らず破壊するのは軍事技術的に困難です。
アメリカの軍事専門家は「北朝鮮は開戦初日に弾道ミサイルに生物・化学兵器を搭載して撃ってくる。それで韓国、日本は大パニックになる」と指摘しています。

ハーバート大学調査チームの分析によると、
平壌の生物技術研究所、定州市、文川市に秘密研究所があって、炭疽菌、赤痢など13種類の生物兵器を製造している。政治犯を使って生物兵器の人体実験を行っている可能性を否定できないといいます。
また、化学兵器は10か所余りの施設で製造されており、総量は2,500トンを超えるとみられています。
今年2月、異母兄・金正男氏を暗殺したのは化学兵器・VXガスで、「いつでも使える」と世界に誇示しました。

極めて危険な北朝鮮の核・ミサイルを警戒して、韓国では核武装を60%の人が支持しています。
日本政府も戦闘機に長距離巡航ミサイルを搭載する方針を固め、準備する手はずを決めました。もちろん朝鮮半島が射程に入ります。撃たれる直前に撃つ適地攻撃も可能です。
確かに専守防衛の基本方針との整合性が問われますが、生物化学兵器の脅威から国民の生命を守るには理屈ばかり言ってもおられません。
北朝鮮は、核・ミサイル軍事強化戦略が東アジアにおける核拡散と「北」包囲網戦力拡充に伴う軍事技術の更新を促し、自らの国家存立の基盤を危うくするブーメランであることに気付くべきです。

国連のグテレス事務総長は、13日に東京を訪れ、14日には安倍首相と北朝鮮対策を協議することになっています。
「北」に対するアメリカ式軍事および経済圧力一辺倒を支持する姿勢だけではなく、東アジアの安定に占める北朝鮮のポテンシャルと合わせて「北」の国民生活向上の方策を模索する国連の対応を真剣にバックアップするのが望ましいと考えます。
(元内閣官房副長官)

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