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◎俳談

◎俳談
【日常の中の闇】
葱刻む平穏いまだ続きをり 毎日俳壇1席
 我々は日常の中に非日常がいつ起きるか分からない世に生を得ている。事故とは限らない、人間と人間が接触してどのような摩擦が発生するのか、自然がもたらす災害がいつ来るのか。どのような危機に遭遇するのか。年を取れば取るほど、良くこの人生をすり抜けてこられたと思う毎日である。「葱刻む平穏は」はそのことを指す。そしていまだに続くことを安堵しているのだが、その背景にはきっと何かが起きるという予感が常に存在するのだ。
中村汀女の
あはれ子の夜寒の床の引けば寄る
は、母と子の間にあふれ出る感情の高まりを描写して見事である。秋の夜寒に末っ子の寝る姿に憐憫を感じて布団を思わず引き寄せる。そして布団の軽さ、子の軽さを改めて知りその不憫さは一層募る。平穏の中にあるこの子の人生の起伏を思うと抱きしめたくなる。人間は日常の中に存在する暗黒を常に予感するのだ。