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◎俳談

◎俳談
【嬉い、悲しい、寂しい、美しいは使わない】
夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣
 使わないと言いながらなぜ例句に使った句を掲げたかである。「寂しさ」を使って人生の寂寞感をこれだけ語る句は珍しいからだ。
人生における諦観すら覚える。しかし初心者が感情を表す言葉を使うとそうはいかない。概して下手の見本のような句になる。コツをつかむまではやめた方がいい。嬉しいもそうだ。
雪熔けて雪踏(せった)の音の嬉しさよ 正岡子規
なぜプロが使うと秀句になるかと言えば、寂しさ、嬉しさをくだくだと説明していないからだ。拙句の
淋しさも茶柱と呑む炬燵かな 東京俳壇入選
も許される部類だ。
寂しいという言葉を使わずに現した拙句を挙げれば
ときめきてすぐあきらめて石鹼玉 読売俳壇1席
帰りくる霜夜の妻の肩小さし 東京俳壇入選
といった具合となる。言わなくても寂莫感が十分に伝わると思う。

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