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◎金の“恐怖心”を揺さぶる米外交

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◎金の“恐怖心”を揺さぶる米外交
  “モラトリアム”で局面打開狙う
 金、就任以来初の“譲歩”
 もともと「小心者の居丈高」と踏んでいたが、今回ばかりは「びびった」ということだろう。北朝鮮の「愚かで哀れな」指導者金正恩が「愚かで哀れなアメリカの行動を少し見守る」のだそうだ。グアム周辺にミサイル4発で包囲射撃をすれば、米国はこれを打ち落として戦争に突入することも辞さないという「本気度」がようやく分かって、「少し見守る」気になったのだ。その発言からは命拾いをした様子すらうかがえる。この金の就任以来初めての“譲歩”のきっかけは米国務長官ティラーソン、国防長官マティスが共同で米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した一文にある。その内容は挑発行動をしなければ交渉を厭わない方針が明記されたものであり、金は振り上げたこぶしをしばし降ろすことになったのだ。
 筆者は、トランプとティラーソンとマティスがそれぞれ独自の発言を繰り返していることについて、かねてから“役割分担”があると書いてきた。これを裏付けるようにWSJは、まずティラーソンとマティスの食い違いを「良い警官(good cop)と悪い警官(bad cop)」になぞらえた。いわば “良い警官・悪い警官戦術”だが、よい警官は犯人に対してなだめ役でカツ丼を食べさせる役。悪い警官は「白状しないと泊まってもらう」と脅す役だ。例えばマティスが潜水艦ケンタッキーの水兵たちへの訓示で「至急何かをしなければならなくなれば、君たちに頼ることになる」と北向けに脅し発言をすれば、ティラーソンは、「米国民は言葉の応酬を心配せずに、安眠していい」と北に猫なで声をする。マティス、ティラーソンはほぼ毎日連絡を取り合い、たいていの場合、両者はコメントを出す前にお互い打ち合わせをするのだそうだ。これに警察署長のトランプが「軍事的解決策は整った」と究極の脅しに入る。
 息を潜めて全ての米首脳らの発言に目を通している金正恩は、何が何だか分からなくなり、恐怖心だけが残る。これが巧妙なる米側の心理作戦であるとは気付かない。こうしたなかでティラーソン・マティスの“統一見解”がWSJに投稿されたのだ。このなかで両者は①わが国が平和的に圧力をかける目的は、朝鮮半島の非核化で、米国は体制転換や朝鮮半島統一の加速には関心がないし、米軍が非武装地帯の北側に駐屯するための口実を求めているわけでもない②長きにわたって苦しんでいる北朝鮮国民は敵対的な政権とは異なる存在であり、彼らに害を与えるつもりもない③北朝鮮の挑発的かつ危険な行動について国際社会の考えが一致しており北朝鮮は止まらなければならない④米国は北朝鮮と交渉する意志があり、外交を通して北朝鮮に方針を改めさせることを優先しているが、その外交は軍事的選択肢に裏打ちされている⑤北朝鮮は平和への新たな道を選ぶかさらなる孤立の道を選ぶか選択を迫られているーなどと強調している。
 要するに金正恩政権を潰さないし、米軍が北に攻め込むこともなく、朝鮮半島統一もしないという大方針を示したのだ。またこれは一種のモラトリアムの提示でもある。モラトリアムには様々な意味があるが、この場合は北が核実験やミサイル実験を「一時停止」か「一定期間の停止」か「凍結」し、米国はそれを見守ることなどを指す。しばらく猶予期間をおいて水面下などで接触を続け、危機回避を考えようというわけだ。このままでは武力衝突に直結しかねないとトランプ以下が考えて、この辺で米国の考え方を統一的に示そうということになったものだ。WSJは発行部数も多く全米で読まれていることから選ばれたのだろう。
 ただこのモラトリアムは小休止の感じが濃厚であり、永続性があるかどうかはまだ未定だ。金正恩は「見守る」と述べているのだから、グアムへのミサイル発射は当分止めるのだろうが、いつまでだろうか。米韓両国は21日から合同演習を開始する。これは金にとっては我慢が出来ないものだろうが、ここでグアムに撃てば、演習がそのまま戦争になだれ込むみかねないことくらいは分かるだろう。現にマティスはグアムへのミサイルに関して「北朝鮮が米国にミサイルを発射すれば一気に戦争へと発展する」と言い切っている。グアム島へ着弾しそうな場合は破壊する方針を初めて明示した。グアムへのミサイルは控えて、従来通り日本海などに撃ち込んで憂さ晴らしをする可能性も否定出来ない。いずれにしてもモラトリアム期間を“活用”して米朝が水面下での接触を強める可能性が強い。ここ数日はまさに正念場となろう。
 こうした表向きの動きに平行して、米国はCIA長官が先に示唆したとおり、金正恩を暗殺する機会をうかがっているようである。米海軍特殊精鋭部隊シールズやピンポイントでの攻撃が出来る無人機「グレーイーグル」を活用した暗殺だ。good copとbad copによる対北揺さぶりが続く。

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