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 ◎G7、対北「国際包囲網」へ前進

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 ◎G7、対北「国際包囲網」へ前進
  安倍が「トランプ旋風」抑制、米欧離反へ接着剤  
 中露がほくそ笑むわけにはいかない
 タオルミナ・サミットは焦点の北朝鮮問題や、米欧対立の保護主義とパリ協定の是非をめぐって、首相・安倍晋三が日本の首相としてかつてない存在感を示した。安倍は北のミサイルを「新たな段階の脅威」と位置づけ、その脅威は極東にとどまらず「伝染病のように全世界に広がる」と訴え、共同宣言に「国際社会における最重要課題」と表現させることに成功した。対北宣言でG7が一致したことは、隣接する中国、ロシアに対しても強いけん制効果をもたらす性格のものでもあり、さらなる経済制裁へとつながる効果をもたらす。また安倍は、米国第一主義と保護主義を臆面もなく打ち出そうとするトランプをなだめ、欧州諸国との激突、決裂回避へと動き、宣言に「保護主義と闘う」の文言を挿入させた。安倍が接着剤の役目を果たさなかったら、G7は存亡の危機に立たされたかもしれない。
 G7の記事は新聞各社とも経済部が中心で書くから、北朝鮮問題より経済問題に焦点が向けられ、米欧の亀裂がクローズアップされているが、この編集姿勢には疑問がある。なんといっても米空母の3艦隊が朝鮮半島を取り囲む緊急事態であり、優先順位が違うのではないかと言いたい。ここは安全保障問題の方がトップにふさわしい。安倍の記者会見も日本時間の深夜だから大きく扱われていないが、北朝鮮に関して極めて重要な発言をしている。安倍はサミットで冒頭発言を行い、北朝鮮問題について「20年以上平和的解決を模索したが対話は時間稼ぎに利用された。放置すれば安保上の脅威が伝染病のように世界に広がる」と極めて強い表現で危機感を表明した。次いで「国際的な包囲網を形成して、経済面での北の抜け道を出来る限りなくして、圧力を掛ける必要がある」と強調した。欧州は北との国交がない国はフランスのみで英、独、伊は国交がある。しかし中東に比べて北朝鮮問題への関心は薄く、安倍は欧州の目を極東に向けさせて、国際世論を高めることを狙ったのだ。北の“抜け道”にならないよう暗に要求した意味もある。
 各国からは賛同の声が相次ぎ、宣言は4月の外相サミットの「新たな段階の挑戦」の表現を「新たな段階の脅威」と一段と強めた。世界全体の脅威であるとサミットが確認した事は、国際政治的には大きな意味がある。北への決定的制裁をためらう中国や、臆面もなく万景峰号の定期航路を認めたロシアに対する、G7の意志表示でもあるからだ。次の課題は国連の場などで制裁強化をさらに進めると共に、決め手をもっている中国に対して、石油輸出や鉄鋼輸入の制限、金融取引の封じ込めなどの策を求めてゆく必要があろう。
 一方、トランプと欧州諸国は、パリ協定をめぐって「湯気の立つような激論」(政府筋)を展開、安倍は“留め男”役を演じた。安倍は「環境問題でアメリカは電気自動車の技術をはじめトップランナーであるから、排気ガス問題などリードすべき事は多い。経済大国の役割でもある」とトランプを持ち上げたうえで対応を求めた。安倍は側近に「トランプがうなずくような場面を作ることが肝心だ」と漏らしていたといわれ、一種の“友情ある説得”を試みた。この結果トランプは決定的な亀裂につながるような発言は避け、首脳宣言では「アメリカは、気候変動およびパリ協定に関する政策の見直し過程のため、コンセンサスに参加する立場にない」としたうえで、「アメリカのプロセスを理解し、ほかの首脳は、パリ協定を迅速に実施するとの強固なコミットメント=誓約を再確認する」と、いわば両論併記の表現で収まった。両論併記はサミット史上異例である。トランプは最終決断を先延ばしにした形となった。ツイッターでは「来週決める」と書いている。
 さらに宣言には自由貿易に関して、「不公正な貿易慣行に断固たる立場を取りつつ、開かれた市場を維持するとともに、保護主義と闘うという、われわれの誓約を再確認した」と明記された。これは安倍が事前のトランプとの会談でサミットの存在意義がどこにあるかを諄々(じゅんじゅん)と説明した結果であるという。これまで「保護主義」的政策を打ち出しているトランプ政権は、3月のG20では、昨年のG20の声明で盛り込まれた「あらゆる形態の保護主義に対抗する」との文言を削除するよう強く主張して、結局削除させた経緯がある。今回のサミットでも当然強く要求するものとみられたが、西欧諸国首脳はさすがに譲らず、トランプは孤立して妥協へと動いた。妥協策として「あらゆる形態」という文言の削除で全体の表現を弱めて、トランプが応ずることになったのだという。
 こうしてトランプ旋風はサミットでも荒れ狂った形となったが、空回りに終わり、それほどの威力は発揮できなかった。もともと自らの生命線でもある自由主義経済を翻弄(ほんろう)し、米国で通用する「わがまま」を世界でも通用させようというトランプの世界認識の浅はかさに問題がある。アメリカが何を言っても通用する時代は去りつつあるのだ。世界はトランプの足下の米政局が揺らいでいることを知っている。サミットの亀裂が安全保障面にも及べば、重大な事態だが、北朝鮮への足並みがそろったことで、当面問題はないことが証明された。中国やロシアがほくそ笑むのは時期尚早だ。

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