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◎俳談

◎俳談
【春満月】
春満月は春情につながる。あの一茶ですら
春の月さはらば雫たりぬべし
と詠んでいる。俗に「水も滴るいい女」と言うが本来は「いい男」が正しい。しかし最近では「いい男」だとおかまのようで、水もしたたるは「いい女」でなければならない。春は官能の季節。正木ゆう子は春満月を
オートバイ内股で締め春満月
と詠んだ。これを正木のような知的な美女にささやかれたら、男はボーとなる。春満月の官能的なイメージを太ももの肉感が増幅し、さらに「締め」で挑発されて、とりこになるのだ。この女性による官能俳句の伝統は
橋本多佳子の上品な表現
雪はげし抱かれて息のつまりしこと 
などともつながっている。その根源は与謝野晶子であろう。
やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君
春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ
など、「みだれ髪」は官能表現の宝庫だ。年取ると爺臭い俳句や、婆臭い俳句をもっともらしく詠む向きが多いが、年寄りこそ過去の青春を振り返り、上品な官能の句の世界を浮遊すべきだ。
外(と)にも出よ触るるばかりに春の月 中村汀女
春の月ひとりの鍵を手に鳴らし 有馬籌子
いずれもあふれんばかりの情感がある。
という筆者は
桜の夜布団も敷かず灯も消さず
などと詠んでいるが、想像句だ。

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