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◎俳談

◎俳談
【春の人事】
梅咲けば人事の話しちらほらと 産経俳壇入選 
 退職後にないのは人事の話だ。在職中は小生も生意気だったからいつかは飛ばされると覚悟していたが、それでも人事の話は気になった。その人事の話は春先からちらほらと聞こえるようになる。あるとき「福岡に行け」と言われた。「東京から向かって左だから左遷だ」と言いながら赴任した。左遷とは中国で、右を尊び左を卑しむ習慣があったところから、高い官職から低い官職におとすことを意味した。福岡太宰府に飛ばされた菅原道真は
東風(こち)吹かば匂ひをこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ
とその心境を詠んだ。
 しかし福岡は魚はうまいし、人間は明るく開放的だし、我が人生最高の勤務地であった。退職後は人事がないだけ気楽だ。せいぜい女房から「いびきがうるさいから隣の部屋で寝て」と左遷されるくらいだ。しかしやがては人生最大の人事が来る。それは「死」と言う人事だ。これだけは覚悟が必要だ。俳人たる者その生涯を律するような辞世の句を作らなければなるまい。

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