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◎俳談

◎俳談
 【平易か難解か】
 ◆子を殴(う)ちし長き一瞬天の蝉 秋元不死男
  悪さをした子を叩いた後味の悪さが「胸に刺さってとれない」ことを不死男は詠んだのだという。後悔の気持ちや寂しさ哀しさが入り交じった気持ちであるという。しかし寂しい哀しいのなまの表現は一切無く、その思いを中七から下五にかけての言葉に賭けた。読者に対してお願いだから「長き一瞬」と「天の蝉」で思いを感じ取って欲しいというのであろう。俳句を詠む読者はまずその詩情よりも、言葉を意味でとらえようとする。従って、最初はこの俳句を理解できない。しかし繰り返し読み、理解しようと努力するうちに、作者の思いがじんと伝わってくるのだ。俳句の表現とはそういうものだ。作者の思いが言葉を介して一呼吸置いて伝達されるのだ。
 逆に説明なしで理解出来る句がある。
 ◆擦り傷に唾つけてやる夏野かな 杉の子
どこの句会でも万点近い点を取った。子どものころへのノスタルジアを描き出していて、分かりやすい。一般の作句で真似すべきは後者である。不死男のように難解な句、読者が努力しなければ分からない句は素人が
作るべきではない。作るべき句は、誰もがすぐ分かる句であり、判じ物のような句はやめた方がいい。難しい言葉を使い、読者に判断を委ねるような上っ面だけの句を独善最低句と称する。

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