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◎俳談

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◎俳談
【春の台(うてな)】
 台とは四方を眺めるために建てられた高殿( たかどの)や極楽に往生した者の座る蓮(はす)の花の形をした蓮台(れんだい)などを指すが、「春の台」となると、一句作りたくなる。その春の台が庭で満開だ。(写真)江戸時代に作られた椿で、実に美しく大輪の花を咲かせる。1841年の百科事典「古今要覧稿」に載る古い品種だ。しかし樹勢はやや弱く、二十五年前に植えたものが、いまだに樹高一メーター、樹径一センチだ。
 しかし庭の片隅に咲くと、その存在感はバラの花を圧倒する。この花が咲けばまず春は本番となる。
 椿を詠んだ名句は蕪村の
◆椿落ちてきのふの雨をこぼしけり
がある。椿の花にたまっていた、雨に着目した意外性がある。
 近代では何と言っても河東碧梧桐の
◆赤い椿白い椿と落ちにけり
だろう。解釈は既に白椿も赤椿も落ちている現場を詠んだという説と、赤い椿がぽとりと落ちれば、続いて白椿もぽとりと落ちたという情景を詠んだものという見方がある。筆者は前者では俳句を作る、意味が乏しく、むしろ後者の見方をとる。落花の生々しい感動を時間差で詠んだものであろう。
◆春の台座すれば老の軽きかな    杉の子


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