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◎「倒閣の檄文」は小沢の自民党への秋波

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◎「倒閣の檄文」は小沢の自民党への秋波 
 矛盾とは本来の意味に加えて両立しがたい力関係も意味するが、民主党内の対立の構図はまさにその通りだ。首相・菅直人が大震災を「盾」に保身につとめれば、元代表・小沢一郎は、やはり大震災を「矛」にして菅を突く。13日には倒閣の檄文を飛ばした。両者とも震災対策を口実にしているが、根底には「被災者」はなく権力闘争のみがある。いかんともしがたい政権がまさに自家撞着に陥った民主党政権であろう。
 小沢の動きが「大震災政局」の焦点となるとみて注目していたが、先月末ころから不満を口にし始めた。3月30日に「自分なりに情報を集めているが、政府や東電の発表より悪い事態になっているようだ」とまず菅政権の原発事故への取り組みを批判。そして統一地方選惨敗が判明した11日、側近に「このままでは日本は駄目になる」と漏らし、12日には動きを急浮上させた。前首相・鳩山由紀夫に政権批判の檄文を共同で発表しようと持ちかけたのだ。さすがに鳩山は統一地方選の後半戦があることを理由に尻込みした。結局一人で出した檄文の内容は「菅直人首相自身のリーダーシップの見えないままの無責任な内閣の対応は、今後、さらなる災禍を招きかねない状況となっています」と首相を名指しで倒閣を前面に出したものだ。まさに敵の罪悪などを挙げ、自分の信義を述べる檄文そのものだ。しかし同日夜にはアクセルをふかしすぎたと思ったか、「連休前にも菅を倒すべきだ」とする若手議員らに「統一地方選挙後半戦で負けても菅は辞めまい。今は動くべきタイミングではない。やがては政権がおかしいと思う人が広がりを見せてくる」とブレーキを踏むことも忘れなかった。党員資格停止中で刑事被告人の自分が動き始めたことに、野党や世論がどう反応するか見極めているのだ。
 小沢がどのような戦略を描いているかだが、ポイントの一つは自民党が菅を倒すためには「悪魔」とでも手を組むつもりになるかどうかだ。12日夜には筆者と全く同じ見解を若手議員らに示した。「首相を倒すのは内閣不信任案の可決しかない」と述べたのだ。この発言は明らかに野党と手を組むことも選択肢の一つに入れていることを物語る。小沢の行動の軌跡をたどれば、自民党に所属しながら宮沢内閣不信任案に同調、離党したことが物語るように目的の達成のためには手段を選ばない。朝日新聞によると「民主党がダメっちゅうなら憲政の常道として俺は谷垣総理でもいい」と漏らしているという。明らかに檄文は、自民党を意識したものであると同時に“大連立”まで視野に入れていることが分かる。自民党に対する秋波であることは明確だ。しかし自民党は「小沢批判」で、支持層を挽回してきたところがあり、いまさら「政治とかね」の象徴と表だって「組む」わけにも行くまい。もっとも小沢勢力が民主党を割るような場合にはどうなるかだが、政治は弾みがあるから、野党の提出する不信任案に同調することを拒むものでもあるまい。連休明けに向けてこの辺の裏取引が成立するかどうかも見所だ。不信任案が不可能なら野党だけで問責決議を可決させるという手もある。小沢グループは同調するかも知れない。
 こうした中で、震災を「盾」にするはずの菅がとんでもない発言をした。福島第一原子力発電所周辺の避難対象区域について、「当面住めないだろう。10年住めないのか、20年住めないのか。そういう人を住まわせるエコタウンのような都市を考えなければならない」と述べたのだ。さすがに後で気付いて急きょ否定したが、「20年住めない」発言となって列島を駆け巡った。現地の町長からは涙ながらの反発が生じた。広野町の山田基星町長は「首相という立場の人が、いとも簡単に発するべき言葉ではない。事前に自治体に説明もない」と憤まんをぶちまける。
 菅は原発事故直後「東日本が潰れるというようなことも想定しなければならない」と無知をさらけ出す発言をしているが、全く事故への判断を間違い“風評源”になってしまった。首相は三流評論家ではない。「住めない」なら何が何でも「住めるようにする」のだ。危機における首相は、自らがどうするかの明確な“意思”を前面に打ち出さなければならないのだ。「20年発言」は、小沢が檄文で、菅による「さらなる災禍」を予言した直後のことだ。まさに菅にしてさもありなんという発言であり、政界の追及材料に加わった。原発事故での初動の遅れと誤判断、もはや取り返しの付かぬ“風評”を招いた「レベル7宣言」、そして被災地の感情逆なで発言と、菅発の「失政」が止まらない。第1次補正予算案の処理など緊急地震対策が一段落した段階で、連休明けから終盤国会にかけて首相は代えた方がよい。いまや首相自身が「国難」と思いたくなる状況だ。


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