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◎「小沢強権政治」袋だたきの構図

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◎「小沢強権政治」袋だたきの構図     杉浦正章 
 これだけ一人の政治家が新聞から袋だたきにあっている例は珍しい。しかも社説で社論として叩いているのである。対象は民主党幹事長・小沢一郎だ。13日付社説では天皇会見問題を全国紙すべてが叩き、15日付では小沢主導の外国人参政権、法制局国会答弁の禁止問題での反対社説だ。なぜだろうか。そこには共通して小沢の強権政治に対する危惧がある。「小沢全体主義」ともいえる潮流を読み取って、強くけん制しているのである。小沢自身は天皇改憲問題で激しく反発して宮内庁長官の辞任を要求したが、これは大きくバランスを崩した。状況に火に油を注いで、自ら転倒した構図だ。恐らく総選挙勝利にいまだに酔っているのではないか。民主党内も覚めた目で見始めている。
 強権ぶりは14日の記者会見で露骨に示された。質問の記者に「君は日本国憲法を読んだか。天皇の行為は何と書いてある」と侮辱的な発言をした。小沢特有のはったり発言だが、最近の政治記者はレベルが高い。少なくとも小沢の日大法学研究科中途退学程度の知識は持ち合わせている。逆に小沢の憲法解釈の方が語るに落ちた感が濃厚だ。小沢は「天皇陛下の国事行為は、内閣の助言と承認で行うことだ。何をするにしても天皇陛下は内閣の助言と承認で、と憲法に書いてあるだろう」と憲法第3条の天皇の国事行為に絞って、天皇の政治利用批判を弁明している。これこそ高校生並みの憲法解釈だ。憲法第1条の「象徴天皇」を全く無視している。3条ばかりを強調して特例を認めることが象徴天皇の政治的利用そのものであることを知らない。宮内庁が「1カ月ルール」を決めて、国家の大小にかかわらず対応しているのはまさに「象徴天皇の地位を守る」からに他ならないのだ。
 加えて15日付の朝日新聞が「天皇の意志を代弁、推測交え正当化」と鋭く斬り込んでいる発言がある。小沢は「天皇陛下ご自身に聞いてみたら、『それは手違いで(手続きが)遅れたかもしれないけれども、会いましょう』と、必ずそうおっしゃると思う」と述べたのだ。これも語るに落ちた。天皇陛下の気持ちを忖度(そんたく)、推量してしまっていることの危険性だ。これこそ戦前の軍部が行った常套手段であり、天皇を利用して大東亜戦争に突っ込んだ「政治・軍事利用」の最たるものだ。
 新聞各紙は13日、読売「天皇特例会見、憂慮される安易な政治利用」、朝日「天皇会見問題―悪しき先例にするな」、毎日「天皇の特例会見、誤解招かぬ慎重さを」、産経「天皇と中国副主席、禍根残す強引な会見設定」と一致して小沢主導の「政治利用」を批判している。小沢は追い込まれると強く反発に出る性格があるが、とんちんかんな憲法論では世間を納得させられない。
 更に全国紙が15日付社説で展開する小沢批判は、朝日が「法制局答弁、法で禁ずることか」読売が「外国人参政権、小沢氏の発言は看過できない」である。内閣法制局長官の国会答弁禁止は、これまでも指摘しているように小沢と同法制局との怨念の戦いが背景にある。湾岸戦争の際小沢提唱の「国連平和協力法案」をめぐり、内閣法制局が自衛隊の派遣条件を厳しくとらえる憲法解釈を堅持して反対して以来の戦いだ。小沢は「内閣法制局はいらない」との暴論も吐いている。答弁禁止は憲法21条に定められた言論と表現の自由に抵触する可能性がある。朝日は「なぜ法律で禁止しなければならないのか、その意図は何か」と問いかけている。裏に危険なものを感じ取れるからだ。
 外国人参政権をめぐって小沢は韓国で、「来年の通常国会には現実になるのではないか」と述べているが、国論が割れている問題である。一党の幹事長の独断で決せられるような問題ではない。さらに天皇訪韓というデリケートな問題でも「結構なこと」と発言しているが、これも越権発言に他ならない。天皇訪韓は優れて内閣の高度な政治判断に属する。発言に“実力者”だから何を言っても良いと言う“おごり”が見られるのだ。幹事長室への陳情一元化といい小沢のパワー獲得への執念はすさまじいものがあるが、天皇会見をめぐっては、14日の記者会見で明らかに小沢自身の関与があるという状況証拠を鮮明にさせてしまった。鳩山と一致してすべてを宮内庁長官に責任を押しつけようとしているが、マスコミの見方は甘くない。天皇会見問題を機に、法制局長官を始め外務・防衛官僚なども普天間問題などで積極的に発言をすべきだ。少なくとも官僚のトップクラスは、進退をかけて心情を吐露すべきだ。政治主導などというキャッチフレーズの衣をかぶった傍若無人の小沢政治は、「天皇会見発言」で火に油を注いだ上に転倒したのだ。今後に尾をひく問題となった。宮内庁長官・羽毛田信吾は職務に忠実で勇気ある発言をした。小沢の要求に屈して辞任する必要などさらさらない。


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