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◎行き詰まった民主マニフェスト路線   

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◎行き詰まった民主マニフェスト路線        杉浦正章
 今日から後半に移行する「仕分けワイドショー」の目くらましにあって、とかく見失われがちな本筋を見逃してはならない。節約で財源を見出すと主張してきた民主党のマニフェスト路線が完全な行き詰まりをみせているのだ。無理に実現させようとすれば公約違反の赤字国債大増発しかない。政権の予算編成はマニフェストの実現か赤字国債の未曽有の増発かという、前門の虎後門の狼の挟撃に遭遇しているのだ。ハンドリングによっては、政権発足以来始まっている「鳩山売り」の株価下落に拍車がかかり、「鳩山不況」へと突入する瀬戸際と言ってもよい。折から24日付朝日新聞によると、鳩山偽装献金も近く政治資金規正法違反で元秘書立件の流れであり、発足2カ月余で政権は正念場を迎えた。
 要するに、民主党が「節約でできる」と主張し、自公両党が「できない」と主張して激突した選挙戦では民主党が勝ったが、予算編成の過程で「できない」が証明されつつあるのだ。財務相・藤井裕久に至っては就任して以降も「民間会社でも社長が替われば1割程度の節約はしている」と強調、愚昧さを露出させてきた。まず首相・鳩山由紀夫と共に最初に説明責任を問われる一人だ。とても7.1兆円の財源を「仕分け」で捻出(ねんしゅつ)することは不可能と判明しつつある。鳩山、藤井は政治主導による予算案の全面組み替えをすべき時なのにそれが分かっていない。
 政権は、まるで前政権の概算要求を削っているように宣伝するが、実際には自らが政権について後、出し直させた概算要求なのであり、自分の予算を自分で削って手柄を立てたようにごまかすのは、国民を欺くものだとまず言っておこう。95兆を上回る概算要求のうち、仕分け人なるものが削れるのはせいぜい2~3兆ということが見えてきた。そうすると92~3兆の規模になる。ところが税収が落ち込んで40兆に達さないのだ。36兆説まで出て来ている。そうなってくると政権が主張する前政権を上回らない44兆以下の赤字国債発行すら不可能となってきているのだ。国債が50兆を超える可能性が現実のものとなりつつあるのだ。皮肉なことにマニフェスト分を削って44兆になるかどうかの瀬戸際だ。
 その中で子供手当など初年度7.1兆円のマニフェストをどうするかだが、「4年間」の公約を盾に後ずさりさせて一つ一つうやむやにするか、国債発行50兆を選ぶかにかかってきているわけだ。50兆を選べば長期金利のさらなる高騰と「日本売り」を招きかねない。先進諸国でただ一国、それも鳩山政権発足以来落ち続けている株価低迷に拍車がかかるのは確実だ。主要国の株価チャートを見れば、鳩山政権になった9月から「米欧が上昇日本が下降」がはっきりとしている。アメリカ発の大不況に当事者の米欧が対応しているのに、影響の最も少なかったはずの日本だけが「一人負け」の状況にある。現政権が正しく対処していないことを市場が嫌気しているのだ。
 したがって政府は、マニフェスト至上主義を転換せざるを得ないのだ。まず藤井が就任後高々と掲げた2.5兆円の暫定税率の廃止が普通なら不可能の判断となるのが常識だ。政権は環境税を新設しようとしているが、タイムラグをどうするのか。廃止すれば直ちに予算にはね返る。地方自治体の予算に8000億の穴が開く。これがまず行き詰まっている。つぎに子供手当だ。いくら何でも所得制限なしはひどい。簡単に言えば貧乏人の血税で富裕層の子供に手当をする構図となる。その上に子供のいない家庭は増税となる。「所得制限なし」の首相の主張にはどうしても無理がある。結局5.5兆の財源は赤字国債しかない。赤字国債を出せば子供手当を将来大人になった子供が払う羽目となる。後世に付けを回すのだ。公立高校の実質無償化、高速無料化も利用者負担の原則を外れる。
 このようにマニフェスト自体の欠陥と、それを支えるはずの財源見通しが立たずに、民主党が大衆を引きつけてきたマニフェスト路線は完全に行き詰まった形だ。鳩山も藤井もどう言い訳をするか知恵を絞っているのが実情であろう。しかし、さまざまな食言を繰り返している政権も、「節約で財源は確保できる」「赤字国債は出さない」の公約にどうつじつまをつけるのだろうか。「消費増税は4年間行わない」も自縄自縛となって降りかかる。50兆もの国債を発行すれば長期金利の高騰を招くのは常識だ。すべてが責任を問われる問題となりつつある。加えて、朝日が踏み切った2億円偽装で元秘書来月にも立件の報道を、さっそくNHKが追いかけた。今後報道各社の報道合戦となるだろう。毎日の世論調査は内閣支持率8ポイントの急落。今後さらに落ちても上がることはないだろう。立件されれば、他人のケースで「秘書の罪は政治家の罪」と断罪してきた首相自身の政治姿勢が問われることになる。逮捕された幹事長・小沢一郎の第1秘書の公判も近く開始される。政権は進退ままならぬところにきているのが実態だ。


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